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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第5章 陰謀包む『文化祭』
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94GF 降り注ぐ光と狂気の笑み『文化祭』



 少し時は戻り、白夜はアクセルモードを使って街の護衛をしていた。アナイアレーションを使用していない状態のアクセルモードを常時発動していた白夜は、アトミックアニーからの情報が入った瞬間にアナイアレーションを発動し、迅速に対応していた。



 (今日はやけに静かだなぁ……。もしかしたら、裏で何か起こってたりしてるの?)



 白夜はビルの屋上を伝って行動していたため、下しか見ていなかった。



 《警告。警告。上空からロストエネルギーによる攻撃が街を襲います》


 (え?)



 白夜はアトミックアニーからの警告を聞くと、咄嗟にアナイアレーションを使用した。周囲の時間は止まったようにゆっくりとなり、白夜はそんな無音の世界で上を向いた。



 (いやー……、これはやばいね……)



 遥か上に存在する巨大な月。そこから放たれている実体を持った光線は、無差別に観光客ごと仙台を襲おうとしていた。



 (この能力……、昨日風月が言ってたやつ……)



 昨日の話の内容から、この無差別攻撃をしている者が月天だということがわかった。そして、昨日の報告通りなら、月天は遥か上に存在する月の近くにいる。だが、街に落ちる直前の光線を放っておくことはできなかった。



 (どっちにしたらいいんだろう……)



 白夜は焦りながら迷っていた。月天の討伐を優先すればいいのか、それとも街に落ちる直前の光線を優先すればいいのか。



 《アナイアレーションを使用しているのですから、両方することが可能なはずです》


 《あっ……、……忘れてた》



 自分がアナイアレーションを使っていることを、白夜は認識していなかった。咄嗟に使ったことに気づかず、そのまま立ち止まって考えていたのはかなりのポンコツ度合いだが、アトミックアニーが教えてくれたことで察し、両方を実行することにした。



 《優先は街に落ちる直前の光線。それを全部空に跳ね返した後に月天を狙う……》


 《それなら問題なく実行できると思います》



 白夜はロストエネルギーを使った索敵を行った。それは、光線がどこに向かって飛んでいるのかというのを瞬時に確認し、跳ね返すと同時に次の場所に移動するためには必要な事だった。



 《光線の落下地点を予測……、完了しました。最適なコースを視界に表示します》


 《おおぉ、ありがと》



 アトミックアニーは、効率良く光線を跳ね返すために最適なコースを白夜の視界に表示させた。それには白夜も感謝の意を示し、勢いよく走り出した。

 突然現れる黄色い光、そしてすぐに消える。その光はなんなのだろうか。前兆なく現れ、一瞬にして消える。それは太田区中で確認されており、ネットで拡散されていた。また、その光は目で追える速度ではないと言われ、ありえない速度で移動しているらしい。そして、ある者がたまたま写真を撮ろうとした時、写真の中にとあるものが映っていた。それは、体の至る所に機械のようなものが取り付けられており、背中には機械の翼が生え、剣を持って空を飛ぶ女だった。また、飛んでいる時には黄色い光を放っており、それが光の正体なのではと言われている。



 《ネットに、謎の光が空を舞っているという情報が流れています。恐らくはマスターのことだと思われます》


 《それはそのままでいいよ。それよりさ、アトミックアニーって剣に変形できたんだ》


 《アクセルモード状態でないと使えませんが、剣に変形する機能は、改造(アップデート)で可能になった要素です》


 《改造のことアップデートって言ってるんだ……》


 《本質的にはアップデートの方が正しいので》


 《なるほどね》



 5分が経とうとしていた。光線はほぼ全て跳ね返し、残るは30個程。時間を数えていた白夜は、アトミックアニーにとあることを聞いた。



 《ひとついい?》


 《はい、何でしょうか》


 《アナイアレーションを使用しない状態のアクセルモード使用時間が20時間にまで伸びたことと、アクセルモード発動時に銃が剣になるっていうのはあの改造をして変わったことだって分かってるんだよ。じゃあさ、それ以外も教えてよ》


 《ありません》


 《……ん?》



 白夜は、アトミックアニーの言っていることを理解することが全くできなかった。アトミックアニーが妄言を言うわけがなく、マスターである白夜を最優先に考えて行動しているのはよくわかっている。白夜はアトミックアニーのことを信頼している。だが、白夜はアトミックアニーの言っていることを疑った。



 《ありません。つまり、今マスターが心配しているアナイアレーション使用時間は伸びていません。5分のままです》


 《ってことは……》



 白夜は最後の光線を跳ね返し、ビルの屋上に着地すると、アナイアレーションが強制解除された。



 「あっ……」


 《これ以上の使用は危険な為、アナイアレーションを解除します》


 《制限時間くらい言ってよ……》


 《次回からは善処します》


 《まあ……、いいけどさ……》



 白夜はアクセルモードを解除し、一旦状況把握に時間を使うことにした。



 (こんなに攻撃が来てるってことは……、多分向こうは準備が万全……。それほど自信があって攻撃をしてるってことだよね……)



 白夜は無線を使い、雫に状況を聞いた。



 〔どしたの?〕


 〔今、こっちは上から大量に落ちてきてた光線を上空に跳ね返したんだけどさ、そっち側って何か異常でもある?〕


 〔特に異常はないけど、上空にめっちゃでっかい月があるってことは分かるよ〕


 〔そこから光線が飛んできたんだよ〕


 〔なるほど。第2波に備えて準備はしとく。それかアトミックアニーに状況把握してもらって、行けそうだったら元凶を潰すのに方向転換した方がいいかも〕


 〔わかった。ありがとうね〕


 〔まあ、助けてもらった身だからね〕



 無線による通話を終え、白夜はうっすらと笑った。その心理をアトミックアニーは読み取り、助言した。



 《今なら月天の生命活動を停止させることができます。アクセルモードを使わない場合、ギリギリになると思われます。アクセルモード使用可能まで、残り1分》


 《……わかった》



 緊迫した空気の中で、1人笑っていた。高らかと笑う声は観光客達には届かず、孤独に笑っていた。



 (いやぁ……、久しぶりに楽しめそう……)



 白夜は心が躍っていた。



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