9GF 圧勝者
霞は放課後、校長室へ向かっていた。
(何をするんだ?)
そう思った霞は、校長室に入った。すると、そこには慧彼、盾羽、白夜の3人がソファに座っており、校長先生の椅子に雷風が座っていた。
「よし、全員揃ったな」
「それで、何をするんだ?」
霞はそう雷風に問いかけると、雷風は今回呼んだ理由を話した。
「体育祭が近づいてきてるだろ?」
「まあ……、あるね」
「それがどうかしたの?」
慧彼と白夜がそう聞いた。
「それのクラブ対抗リレー。あれって全ての部活が出るらしいんだ」
雷風の言いたいことを知っていた盾羽は、続きを話し始めた。
「ということで私達の持つバトンを作ろうと言うわけです」
「なんで?」
白夜は盾羽にそう聞いた。白夜は1年生であり、先生にもこの事は言われていなかったからだ。それは慧彼も同様であった。
「確かに。なんでバトン作るの?」
「それでは説明しますね」
クラブ対抗リレー。それは雷風達の学校で行われる伝統のプログラムである。各部活はその部活の象徴となるものをバトンとして使い、リレーをする。野球部ならバット、サッカー部ならサッカーボールを蹴って進む、といった具合だ。だがこの帰宅部、まともに活動していない上に象徴となるものがないのだ。
「そのために象徴となるものを作ろうというわけです」
「なるほど。だがこの部活……、特に無くないか?」
霞がそう言うと、白夜が提案した。
「人間の腕とか?」
「却下。それだけはやめとけ」
雷風に即却下された。
「暗殺者、判定者、守護者、覆滅者、滅罪者の5つだよね……」
「まあ、そうだが……」
「……共通点無くない?」
慧彼は気づいてしまった。この5人には共通点が全く無いことを。それを言ったことで全員が頭を抱えてしまった。
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「では旗はどうですか?断罪者の象徴とする旗を作るんですよ」
長考した末、盾羽は旗という結論を出した。そして、そう発言した時、全員の視線が一気に向いた。
「いいと思うけど、なんで旗?」
そう白夜が聞くと、盾羽は理由を説明した。
「旗とは、戦国時代の時によく使われたんです。その時代で、敵と味方を見分けるために使われたのが旗です。つまり、旗は目印の意味を果たしています。これは私達、断罪者全員が、世界の悪と戦っているということになりませんか?」
「おおぉ……、考えたな盾羽」
「ありがとうございます」
だがその時、霞は思った。「誰が作るのか」と。
「それって誰が作るんだ?」
「私が作ります」
盾羽は思い切って言った。それを聞いた慧彼は、盾羽に問いただした。
「え?マジ?」
「マジです。デザインは考えてます」
盾羽の目は自信を持っている目だった。それに気づいた雷風は、それを了承した。
「んじゃそれで決定な。今日は解散」
「帰るところ同じだけどね」
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そして体育祭当日、クラブ対抗リレーの時間が来た。
クラブ対抗リレー。クラブの中から10人選出してリレーをする競技だが、一番大きな特徴は走る長さだ。1人が走る距離は1200m、アンカーは倍の2400mだ。だが、雷風達は5人しかいないため、2回ずつ走るようになっている。
「クオリティ高いな……」
盾羽は、軽くて頑丈な旗を持ってきた。
「すごいな……」
「デカっ……」
「デザインって自分で考えたんだよね?」
「はい」
「すごっ……」
盾羽の作った旗は好評だった。
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結果は圧勝だった。
「慧彼、盾羽。この後仕事だからな」
「ねぇ雷風、有給とかないの?」
「無い」
「断罪者ブラック……」
慧彼はその後、ずっと愚痴を言っていた。