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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第5章 陰謀包む『文化祭』
89/206

89GF 先代断罪者2『過去』



 「マネジメントの組織構成はこうだ」



 1番上に存在する「最高評議会」だ。それには各機関のトップが集って会議を行う。その下には「世界情勢部」、「世界人口調整部」、「世界環境保護部」の3つに大きく分けられている。そして、そのどれにも所属していないのが「断罪者」である。3つの部署で決められたことを最高評議会で審査。それが通れば世界各国のトップへ通達が行き、実行までのプロセスを踏ませる。そして人の始末、世界規模の戦争の武力終結、抗争の鎮圧、テロの阻止、街の護衛などを最高評議会から直接送られて、仕事として行うのが断罪者である。他の部署には国の数の分だけ部署が存在するのだが、断罪者だけは5人だけで全てを運営をする。そのため、スケジュールを合わせるのは最高評議会である。



 「こんな感じだ。だいたいわかったか?」


 「はい、だいたいわかりました」


 「じゃ、清史郎の訓練頑張れよ」



 慧制は雷風に言うと、稜燿と篤臣を連れてその場から走って逃げた。それを不思議に思いながら見ていた雷風は、後ろから物凄い殺気を出している清史郎にあえて触れなかった。



 「どうやら、あの中では俺の訓練は相当キツいらしい。だが、お前なら耐えられるはずだ」


 「やるだけやってみます」


 「その意気だ。なら俺は1ヶ月、全力でお前を鍛え上げる」



 その日から、地獄の訓練が始まった。睡眠時間と休憩時間が合計で9時間、それ以外は全て訓練時間という非常に過酷な訓練だった。訓練内容もかなり大変なものが多く、午前は基礎トレーニング。走り込みや筋トレなどで、午後は実践を踏まえた戦闘訓練であるのだが、常に最高速度で走らなければいけなかったため大変さは午前とは比べ物にならなかった。

 そして1ヶ月、雷風は鬼の所業のような訓練を耐え切り、圧倒的な力の効率的な使い方を学ぶことができた。



 「訓練は終わりだ。よくついてきたな」


 「まあ……、今僕のしたいことをするためには力が必要ですからね」


 「今となったら大抵の事はできそうだがな」


 「そうですかね?」


 「1つ、言い忘れていたことがあった」


 「なんですか?」


 「力は周囲に誇示するものでは無い。世界を裏から動かすための手段の1つだと思え。特に我々のような人種であればそうだ」


 「マネジメントにいる人は全員、そういう思考なんですか?」


 「そうかもしれない。だが違うやつは違う。稜燿は典型例だな。あいつは完全に自分の恋人のために力を使っている」


 「何かあったんですか?」


 「本人に聞け。俺から言えるほど薄い出来事じゃない」


 「わかりました」



 雷風は、1つ疑問に思ったことがあった。



 「清史郎さんたちのコードネームって何なんですか?」


 「コードネームか。そういや言い忘れてたな。稜燿が管理者、慧制は裁定者、篤臣は殲滅者、俺が分断者だな」


 「篤臣さん、物騒なコードネームですね」



 すると、雷風へ無線で仕事が入った。



 「合同か。雷風、とりあえず行くぞ」


 「はい」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 場所は夜の京都府京都市、嵐山。観光地である嵐山に大量の不審者がいると通報が入ったため、警察と合同で取り抑えるというものだった。これには断罪者全員が動員された。



 「初仕事がこれはちょっとしんどいな。お前」



 稜燿は雷風に向けて言った。



 「これ、ワンチャン大量殺戮もあるからな」


 「そんなことあるんですか……」


 「とりあえず、お前の知っている暗殺業とは全く違うのが断罪者だ。こういうのも普通にする。それを頭に置いておけ」


 「わかりました」



 稜燿から出てくる真面目な一言は、1ヶ月の中で1回も聞いたことがなかった。



 「行くぞ」



 篤臣の合図で、全員は嵐山の各地へ散った。それが、最後に顔を合わす瞬間だと知らずに。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 夜が明け、雷風は不審者と思われる者達を全て殺した。心臓部分を斬ると体が塵になって消えていく者達は、とても強かった。1人1人が桁違いの強さで、雷風はそれを苦戦しながらも戦い、殺した。合流地点に戻った雷風は、そこで待ち続けた。



 (なぜ帰ってこない……?)



 雷風は心配になりながらも、待ち続けた。

 日が落ち、マネジメント本部から無線で通達が来た。その通達とは、飛鷹 稜燿、鷹栖 慧制、鬼頭 篤臣、暁 清史郎の死亡を知らせていた。確定した通達を確認した雷風は、自分にとってかなり上の存在である者が死ぬことを認識し、心を無にした。



 (姉さんだけはこんな目に遭わせない……。絶対に……)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 記憶が全て入ってきた時、私は雷風の過ごした環境を知った。自分の正体を知らずに生き、周りの大切な人が周囲から消えていくことを体験しながら生き、同じことが起きないように何年間も1人で断罪者を続けた。そんな人生を過ごしたことの無い私は、雷風の心境を察することはできなかった。だが、私は雷風に対して、何かできることがないか考えた。



 (できること……。目の前で口に出さず、記憶を通じて教えてくれた雷風の心境を理解することはできない。できればしたくもない。けど、雷風は多分天涯孤独なんだろう……。なら……)



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