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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第5章 陰謀包む『文化祭』
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82GF 駆け抜ける『文化祭』



 〔警戒しとけよ。これから犯罪が増え出す〕


 〔了解〕



 雷風からの無線が来た。すると、すぐにアトミックアニーから連絡が入った。



 《不審者と思われる女4人組が、刃物を持って1人の女に脅しをかけている模様。ここから東南東に726m地点です》


 「これからは単独行動で行ける?」


 「行けるよ」


 「じゃ、アクセルモード突入するから8割は私がやる」


 「任せたよ」


 「アクセルモード、突入」



 アトミックアニーは白夜に、「犯罪を起こしそうな者の居場所」と、「何を行おうとしているのか」ということを正確に伝えた。白夜はそれに従い、アトミックアニーをアクセルモードに突入させた。



 《極秘コマンド『加速』確認。アトミックアニー、アクセルモード突入》



 白夜はその場から姿を消した。



 (アクセルモード……、やっぱり速すぎる……)



 雫はそう思いながら、雷風と同じように避雷針の上に立ち、不審者を気配察知で探していた。

 白夜は現場に到着すると、刃物で刺そうとしている女を見つけた。白夜は目に止まらない速さで、襲おうとしている4人組を手刀で気絶させた。



 「大丈夫? 立てる?」


 「あ……、ありがとうございます……」


 「大通りに戻った方がいいよ。この人たちはしばらく立てないから」


 「わかりました……。ありがとうございます……」


 「礼なんていらないよ。私はただ単に当たり前のことをしただけだからね」



 そう言い残すと、白夜はその場から姿を消した。



 《今のところ犯罪を起こしそうな気配は無い?》


 《はい、全くと言うほどありません》


 《じゃあ雷風の言ってたこと……》


 《いえ、あの方が言っていたことは間違いなく事実です。実際、そういう事例が何度もあるんですよ。この時間が犯罪に有効的な時間とわかれば、それに従って行おうとする者は必ず現れます。それを警察は逆手に取って犯罪者を捕まえるんですよ。あの方はそれを利用し、未然に防ごうとしているのです。マスター》


 《なるほどね。つまりは雷風の言っていることは正しいってことか》


 《そういうことです。用心は大切ですよ、マスター》


 《そうだね》


 《それに、想像以上に犯罪が宮城野区に集中しています。どこかの組織が犯罪者に関与していると考えられます》


 《そういうのは私よくわからない》


 《では教育を……》


 《1番やりたくないことをやらせようとしないで》


 《冗談です》


 《そういやさ、話し方流暢になったよね》


 《マスター、不審者を確認しました。男5人組が6歳の男児、女児合わせて3名を誘拐しようとしている模様。北に3.6km地点です》


 《わかった》



 白夜はさっきまで笑っていたが、情報が入った瞬間に真顔に変わり、誘拐場所へと向かった。



 「金は俺たちが払ってやるよ」


 「一緒に回ってあげるよ」


 「こっちおいでよ」


 「……触らないでよ!!」


 「あ? ガキが……。調子乗りやがって……」



 白夜が着地すると、男の1人が女児に触っていた。それを女児が振り払うと、男複数人でとり囲もうとしていた。



 (こいつら卑劣……)



 白夜は瞬く間に、男5人組のみぞおちをそれぞれ殴った。男5人組は全員気絶し、白夜はしゃがんで3人の子供たちに視線を合わせた。



 「もう8時30分だよ? 帰らなくていいの?」


 「9時まで遊びたいの!!」


 「けどね、ああいうやつらがまた襲ってくるかもしれないよ? 次は私助けないよ?」


 「……帰る」


 「けど1つ、いいこと教えてあげる」


 「いいこと?」


 「私は元々女ヤンキーだったんだけどね、こうやって君たちみたいな人達を助けたりしてる。なんでかわかる?」


 「わからない……」


 「まあわからなくてもいいよ。けどね、私はこう思ってるの。「本当に人を守るためなら、暴力をしてもいい。なんなら人を殺してでも守りたい人がいるなら、そいつを殺せばいい」って」


 「つまりはね、人を守りたいなら暴力をしてもいい。けど、それに見合った力をつけないといけない。君のしたことはいいことだよ。けど、力がない。私も力がなかった。だから力を求めた。君は私みたいになってほしくないけど、力は求めてほしい。力を求めたら、いつかきっといいことが起こるよ」



 白夜は3人の子供たちの頭を順番に撫でると、その場から姿を消した。



 《マスター、優しいですね》


 《優しくなかったらこんなことしてないよ》


 《自分で自分のことを優しいとは言うんですね》


 《それは不問で。それとさ、やっぱり流暢に喋ってるよね》


 《気のせいです》



 白夜はアトミックアニーと話しながら、犯罪者をどんどんと警察に突き出していた。



 「あの、警察さん? 不審者捕まえたから逮捕しておいてね。あと、場所と容疑はデータで送っておくから」



 白夜は電話を切った。



 《マスター。全て任せるおつもりですか?》


 《だってさ、やってもらった方がいいじゃん》


 《それを本人の前で言うことではありませんよ》


 《いいじゃん人工知能なんだから。最大限活かしていくよ》


 《私はそれを望みます》


 《I wish thatであってる?》


 《そうです。I wish thatです》


 《……私何言わせてるんだろ》


 《少なくとも、私には理解できる事柄ではありませんでした》


 《難しく言わないで》



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 雫は避雷針の上に立って探していたが、見つけるとすぐに白夜が向かうため、やることがなかった。



 (もう全部白夜に任せとけばいいんじゃない?)


 (お前も働けよ)


 (そうじゃないよ。アクセルモード会得してから白夜化けてるよ)


 (まあ、あいつ強すぎるよな。それにアクセルモード初期設定だし)


 (だから私やることないんだよ)


 (なるほどな。まあ……、頑張れよ)


 (励ましが心に刺さる……)


 (それはごめん)



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