82GF 駆け抜ける『文化祭』
〔警戒しとけよ。これから犯罪が増え出す〕
〔了解〕
雷風からの無線が来た。すると、すぐにアトミックアニーから連絡が入った。
《不審者と思われる女4人組が、刃物を持って1人の女に脅しをかけている模様。ここから東南東に726m地点です》
「これからは単独行動で行ける?」
「行けるよ」
「じゃ、アクセルモード突入するから8割は私がやる」
「任せたよ」
「アクセルモード、突入」
アトミックアニーは白夜に、「犯罪を起こしそうな者の居場所」と、「何を行おうとしているのか」ということを正確に伝えた。白夜はそれに従い、アトミックアニーをアクセルモードに突入させた。
《極秘コマンド『加速』確認。アトミックアニー、アクセルモード突入》
白夜はその場から姿を消した。
(アクセルモード……、やっぱり速すぎる……)
雫はそう思いながら、雷風と同じように避雷針の上に立ち、不審者を気配察知で探していた。
白夜は現場に到着すると、刃物で刺そうとしている女を見つけた。白夜は目に止まらない速さで、襲おうとしている4人組を手刀で気絶させた。
「大丈夫? 立てる?」
「あ……、ありがとうございます……」
「大通りに戻った方がいいよ。この人たちはしばらく立てないから」
「わかりました……。ありがとうございます……」
「礼なんていらないよ。私はただ単に当たり前のことをしただけだからね」
そう言い残すと、白夜はその場から姿を消した。
《今のところ犯罪を起こしそうな気配は無い?》
《はい、全くと言うほどありません》
《じゃあ雷風の言ってたこと……》
《いえ、あの方が言っていたことは間違いなく事実です。実際、そういう事例が何度もあるんですよ。この時間が犯罪に有効的な時間とわかれば、それに従って行おうとする者は必ず現れます。それを警察は逆手に取って犯罪者を捕まえるんですよ。あの方はそれを利用し、未然に防ごうとしているのです。マスター》
《なるほどね。つまりは雷風の言っていることは正しいってことか》
《そういうことです。用心は大切ですよ、マスター》
《そうだね》
《それに、想像以上に犯罪が宮城野区に集中しています。どこかの組織が犯罪者に関与していると考えられます》
《そういうのは私よくわからない》
《では教育を……》
《1番やりたくないことをやらせようとしないで》
《冗談です》
《そういやさ、話し方流暢になったよね》
《マスター、不審者を確認しました。男5人組が6歳の男児、女児合わせて3名を誘拐しようとしている模様。北に3.6km地点です》
《わかった》
白夜はさっきまで笑っていたが、情報が入った瞬間に真顔に変わり、誘拐場所へと向かった。
「金は俺たちが払ってやるよ」
「一緒に回ってあげるよ」
「こっちおいでよ」
「……触らないでよ!!」
「あ? ガキが……。調子乗りやがって……」
白夜が着地すると、男の1人が女児に触っていた。それを女児が振り払うと、男複数人でとり囲もうとしていた。
(こいつら卑劣……)
白夜は瞬く間に、男5人組のみぞおちをそれぞれ殴った。男5人組は全員気絶し、白夜はしゃがんで3人の子供たちに視線を合わせた。
「もう8時30分だよ? 帰らなくていいの?」
「9時まで遊びたいの!!」
「けどね、ああいうやつらがまた襲ってくるかもしれないよ? 次は私助けないよ?」
「……帰る」
「けど1つ、いいこと教えてあげる」
「いいこと?」
「私は元々女ヤンキーだったんだけどね、こうやって君たちみたいな人達を助けたりしてる。なんでかわかる?」
「わからない……」
「まあわからなくてもいいよ。けどね、私はこう思ってるの。「本当に人を守るためなら、暴力をしてもいい。なんなら人を殺してでも守りたい人がいるなら、そいつを殺せばいい」って」
「つまりはね、人を守りたいなら暴力をしてもいい。けど、それに見合った力をつけないといけない。君のしたことはいいことだよ。けど、力がない。私も力がなかった。だから力を求めた。君は私みたいになってほしくないけど、力は求めてほしい。力を求めたら、いつかきっといいことが起こるよ」
白夜は3人の子供たちの頭を順番に撫でると、その場から姿を消した。
《マスター、優しいですね》
《優しくなかったらこんなことしてないよ》
《自分で自分のことを優しいとは言うんですね》
《それは不問で。それとさ、やっぱり流暢に喋ってるよね》
《気のせいです》
白夜はアトミックアニーと話しながら、犯罪者をどんどんと警察に突き出していた。
「あの、警察さん? 不審者捕まえたから逮捕しておいてね。あと、場所と容疑はデータで送っておくから」
白夜は電話を切った。
《マスター。全て任せるおつもりですか?》
《だってさ、やってもらった方がいいじゃん》
《それを本人の前で言うことではありませんよ》
《いいじゃん人工知能なんだから。最大限活かしていくよ》
《私はそれを望みます》
《I wish thatであってる?》
《そうです。I wish thatです》
《……私何言わせてるんだろ》
《少なくとも、私には理解できる事柄ではありませんでした》
《難しく言わないで》
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雫は避雷針の上に立って探していたが、見つけるとすぐに白夜が向かうため、やることがなかった。
(もう全部白夜に任せとけばいいんじゃない?)
(お前も働けよ)
(そうじゃないよ。アクセルモード会得してから白夜化けてるよ)
(まあ、あいつ強すぎるよな。それにアクセルモード初期設定だし)
(だから私やることないんだよ)
(なるほどな。まあ……、頑張れよ)
(励ましが心に刺さる……)
(それはごめん)




