81GF 交錯する『文化祭』
密かに闇は動いていた。文化祭に現れたイレギュラーの闇と、社会の裏として存在している闇が合わさった時、いったい何が起こってしまうのか。それは、首謀者にしか分からないことだった。
「外がうるさいな」
「まあいいだろ。うるさいのはいつもだ」
「そうか。なら始めよう」
「ああ、そうだな」
「真祖の姫を生贄にして始まる……」
「文化祭に潜ませた大量の人造人間。それに含まれているロストエネルギーを使って行われる……」
「お前が首謀者だからな? 月天」
「そうでしたね」
「お前は潜ませた意味を理解しているのか?」
「わかってますよ。とりあえず、街中に溜まったロストエネルギーを吸収して、それを自身の能力に合わせて放てばいいんですよね?」
「そういうことだ。とっとと行け」
「……わかりました」
月天は部屋を出た。
「俺もよくわかんねぇんだよ。こういうのは」
「じゃあ話し合いに参加しなかったらいいじゃねぇか」
「まあさ、参加はしてぇだろ? 暇じゃねぇか」
「それはわかるが……」
「とりあえずよ、俺はあいつが能力を発動するまで生きていればいいんだろ?」
「そういうことだ。任せたぞ、伊舎那天」
「任せとけって」
伊舎那天も部屋を出た。
「あの人たち……、やっぱり気に食わないんですよ……」
「しょうがねぇだろ。あいつらがいねぇと俺達今頃どうなってたよ」
「戦争に参加ですよ」
「断罪者を倒すチャンスが無くなるところだったって言え。現実を突きつけんな」
「嫌なんですか?」
「あんな「正々堂々が悪」とかいう世界には行かねぇよ。ああいうのは性格の悪い奴らに行かせておけばいいんだよ」
「自分のこと性格いいって言ってますよそれ」
「まあいいからな」
「否定はしません。ですが肯定もしません」
「肯定って?」
「だからバカは……」
「何か言ったか?」
「何も言ってません。とりあえず行きますよ」
「了解了解」
一方、部屋に残っていた1人の男は……。
「神月が言っていたプロジェクト……。利用するとか言ってた癖に最終的には全部壊すのかよ……。内側から壊すのも楽しいな……、これ……」
「何をしている?」
そこに1人の男が入ってきた。
「いや、何も無い」
「俺は聞いていたが?」
「どこから聞いていた?」
「神月が言っていたってところから」
「全部じゃねぇか」
「とりあえず、何のプロジェクトのことなんだ?」
「終焉の理計画だ」
「あれか。すんごい厨二病みたいなプロジェクト名」
「そう。今は順調なんだろ?」
「まあな。世界戦争を起こしてくれたネイソンはよくやったよ」
「あいつも我が組の傘下だからな」
「ドイツが傘下とは嬉しいことだ」
「だが、それを神月には伝えていないんだろ?」
「ああ。これほど面白いことは無いさ」
「フランスと軍事介入をした神月は一見、裏切り行為のように見えるが、俺たちからすると嬉しいことなんだよな」
「同時討ちってやつだからな」
「まあ、神月が無駄に死ぬだけだろうがな」
「無駄って酷ぇな……。まあ、自身を擬似真祖にでも強化して前線に出てるんだろうな」
「早く結果が聞きたいところだが、とりあえず待つしかない」
「今回も両方を潰すための行動なんだろう?」
「ああ。逆に何故、このような好機を逃さなければならないのだ」
「それは言えてるな」
「奴らを殺すためならなんでもする。そのためならアメリカだって支配する」
「もうしてるだろ」
「そうだったな」
「……死んでくれ」
後から入ってきた男は、先に部屋にいた男の心臓部分を、ナイフで突き刺して殺した。その男はアメリカ軍の指揮を行うための無線機を奪い取り、通信を行った。
〔臨時として私が王となる、鍵政 方俊である。以後、元の王が戻るまでは我の指示に従え〕
鍵政組。それは仙台を拠点を置く指定暴力団である。表社会では建築会社や不動産、学校法人など幅広く活動しているのだが、裏では薬物はもちろん、人造人間関連にも手を染めている、裏社会では1番の極悪集団である。それが鍵政組であり、それの173代目当主が、鍵政 方俊である。年齢25歳のまだまだ未熟な者ではあるが、実力は確かである。誰も方俊を止めることが出来ないことから、裏社会では『暴走組長』と呼ばれている。
(真祖の姫を使ってどうすると言うんだ……。私はただただ十二神か断罪者、どっちかが死んでもらえればいいのだ)
今の方俊の目標は、人造人間を減らすことだった。そして秘密裏に、ある装置を作っていたのだ……。
〔例のものはできたか?〕
〔いえ、まだです〕
〔事態は早く収束させた方がいい。そのための消滅装置だろう?〕
〔はい〕
〔なら急げ。8ヶ月以内に完成させろ。それまでに完成させなかったら……、わかっているな?〕
〔わかっておりますとも〕
〔ならとっとと作れ〕
〔はっ〕
無線を切ると、また考えだした。
(真祖と真祖の姫にはあれは効かない……、なら直々に手を下さなければ……。約15年における作戦だ。親父から受け継がれたこの作戦……、成功させなければな……)
鍵政組は闇として、密かに動いていた。




