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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第4章 グラジオラスは存在を明確に表し始める
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69GF 絡まって消えない1つの楓 その2



 2001年5月20日。2人の赤子が生まれて半年という条件を満たした。そして、半年が経つまでの87日間に友情を築くという条件も満たし、全ての条件が満たされた。

 2人の赤子は自我を持ち、話せるようになっていた。だが、2人は孤児なため名前がなく、名前の部分を「君」と呼んで話していた。個体番号も同じNo.0000000(セブンオー)であり、全く同じ生物だとこの実験を行う上、決まっていたのだ。それに違和感を持っていた男の赤子は、実験が終わり次第ここを抜け出そうと考えていた。それがわかっていた女の赤子は、男の赤子と共に抜け出そうと考えていた。それに全く気づいていないネイソン達は、実験を始めた。

 2人の赤子は実験装置に入れられ、四肢を拘束された。そして大量の専用器具が体の至るところに取り付けられた。



 「実験開始。ロストエネルギーを体内に注入」



 その言葉と同時に、2人の赤子の体の中に大量のロストエネルギーが注入された。その時、普通の生活では体験することのない、尋常ではない痛みが体全体に行き渡った。そして、更に痛みは増していった。体の一部が切断していてもおかしくない痛みだった。だが、それからは逃れることは出来ない。四肢を拘束され、大量の専門器具が体の至るところに取り付けられているからだ。痛みから逃れることは出来なく、ただただ叫び声を上げて耐えるだけだった。



 「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァ!!!!!!!!!」



 叫び声は実験装置に阻まれ、微かに聞こえる程度だった。だが痛がっている姿は明確に見えており、悶絶という2文字がネイソン達研究者を襲った。だが、ネイソン達は動じることなく実験を続けた。そう、自分の選んだ道をただ真っ直ぐ進むネイソンは、赤子が苦しんでいる姿などどうでもいいのだ。ただただ自分の利益になるなら犯罪すら厭わない人間が、赤子が苦しんでいる程度で動じるわけがない。



 「全身に行き渡りました」


 「わかった。では、ロストエネルギーが体に馴染むまで待つ。完全にロストエネルギーが体に馴染まないと真祖化の実験ができないからな」



 ネイソンは2人の赤子を見て、少し笑っていた。



 「行き渡りました」


 「わかった。ブレイクエナジーを脳に注ぎ込め。そして2分間置け」



 ブレイクエナジー。ロストエネルギーをηシステム型ロンガルトブレストと電気融合させることで生まれる物体である。主に真祖化に必要なものであり、産まれて半年以上1年未満の人間の体にロストエネルギーを馴染ませた状態で脳に注ぎ込むと真祖化に成功する。産まれて1年以上の場合、擬似真祖として真祖になれなかったアナザーの存在となる。単位はロストエネルギーと同じくGF(ゲアフロー)である。もし、ロストエネルギーの馴染んでいない体にブレイクエナジーを流した場合、体は瞬く間に消滅する。

 脳にブレイクエナジーが流された時、2人の赤子は痛みが来ると思って身構えた。だが、痛みは全然来なかった。それは、ロストエネルギーの性質が無に返すという性質であり、細胞を破壊させてはロストエネルギーが代わりの細胞として補う。これが全身で行われているから痛みが襲う。だが、ブレイクエナジーはそのような性質がないため、ロストエネルギーに順応するのだ。



 (痛みが来ない……?)



 2人の赤子は疑問に思った。それは、体に何の異常も起きていないからだ。ついさっきまで激痛が体全体で走っていたのが、一瞬にして消えたのだ。疑問に思うのも当然である。逆に思わない方がおかしいのである。

 そしてすぐに2分が経過し、拘束器具も専用器具も外されて実験装置から出された。



 「実験は終了だ」



 2人の赤子は体の異常や不具合があるか確認をした。



 「何も起こってない……」



 2人の赤子は何が変わったのかわからないまま、再びそこで過ごすことになった。だが、2人は逃げ出そうとしていた。それだけは絶対に成し遂げようと決めていた。

 時は流れて8ヵ月後、1月20日。遂に逃げ出せるチャンスが訪れたのだ。2人は完全に喋れるようになり、意思疎通もできていた。



 「今しか出る時はない」


 「そうだね。身体能力はある程度上昇してるみたいだし……」


 「大人くらいの身体能力だから頭を使ったら逃げれる」


 「……逃げよう」



 2人の子供は、ドイツの実験施設からの脱出を企てた。



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