66GF 孤独に咲くエリカ
「満月の苗字を語るなカスが。お前は満月家の人間じゃない」
《極秘コマンド『加速』確認。アトミックアニー、アクセルモード突入》
すると、アトミックアニーは変形した。白夜の身体隅々にまでアトミックアニーの制御が行き渡り、アトミックアニーがハンドガンのような形に変形した。
「アクセルモード、突入」
白夜がそう言うと、突進してくる篤弘を遥かに凌駕する速度で横を突き抜けた。それは白夜の思っていたスピードより明らかに速く、細いレーザーを放つ暇がなかった。
《自動操縦を推奨します》
《いや、自分でコントロールするよ》
《了解。アシストに専念します》
白夜は今ので撃つタイミングを理解した。
(なんなんだ……、風を感じたと思ったら既に後ろに白夜がいる……)
唖然としていた。何も考えれなかった。考える暇がなかった。だが、本能が理解した。能力を使えと。篤弘は思わず能力を使った。
白夜は振り向きざまに篤弘の核目掛けて細いレーザーを放った。だが、そこには篤弘はいなく、霧が晴れたように篤弘の残像は消えた。
「後ろだァァッ!!」
後ろから攻撃を仕掛けようとした時、白夜は篤弘中心に円形状に走り、細いレーザーを核に目掛けて撃ち続けた。弾数制限はなく、1発1発が核を一発で撃ち抜く威力を誇る。だが、それを何回も何回も撃ち続けたのだ。余波で篤弘の身体はどんどん消えていった。
(まだ終わってない)
白夜は急ブレーキをし、上へ飛んだ。
一方、雫は宙を舞う白夜を見た。
(白夜?)
雫は魔法円を白夜の足場になるように生成し、白夜はそれを使って篤弘の核目掛けて飛び蹴りを放った。その速度は計り知れたものではなく、音の速度は確実に超えていた。そこから繰り出される蹴りは、頭を吹き飛ばした。それは怨念の蹴りでもあり、制裁の蹴りでもあった。
「アクセルモード、解除」
白夜がそう言うと、アトミックアニーは元の形に戻っていた。そして白夜は立ち上がると、兄である篤弘の消滅しかけの体を見た。
「とことんカスだったな……、こいつ……」
《背後に敵性生物が大量感知》
アトミックアニーは、白夜の背後から押し寄せてくる大量の人造人間のことを伝えた。白夜は脇にアトミックアニーを通し、ノールックで放った。
「今ので最後の集団だよ。あとは慧彼と盾羽に任せよう」
霞が白夜の前に着地した。
「何してたの? ずっと見えなかったけど……」
「路地裏とかに潜んでた人造人間を成敗してたね」
「成敗って……」
すると、雫も合流した。
「魔法円、役に立った?」
「立った立った」
「良かった良かった」
3人は上を見た。空中浮遊戦艦が2機あるのがわかる。
「上のあれは多分ロストエネルギーでできてるよね?」
白夜が確認すると、雫はとんでもないことを言い出した。
「光線、撃ってみようか?」
「いやいや、……もしロストエネルギーでできてなかったらどうするの?」
「試してみる価値はあるでしょ」
「まあ……、いいけど……」
すると、雫は上へ向けて光線を放った。上へどんどん伸びていく光線。だが、空中浮遊戦艦にぶつかった瞬間に光線は消滅した。
「……え?」
「……え?」
白夜と雫は同時に同じリアクションをした。何故? と言わんばかりの「……え?」というリアクション。驚きと疑問が同時に来たのだ。
「まあ、ロストエネルギーで能力による攻撃を消してるんだろうね」
「じゃあ内部から壊せばいいんじゃない?」
「……確かに」
白夜はそう提案すると、霞はそれを了承した。
「アクセルモード、突入」
《極秘コマンド『加速』確認。アトミックアニー、アクセルモード突入》
アトミックアニーは一瞬でアクセルモードへと変形し、白夜は上に向かって跳んだ。それを追うかのように霞と雫も上へ跳んだ。
「とりあえず着地と」
戦艦と戦艦を繋ぐ連絡橋に着地した白夜は、アクセルモードを解除していた。水で翼を生成していた霞と、光線を上手く使って上昇してきた雫も同様に着地した。
「とりあえずこの戦艦、ぶっ潰そう」
「中に人造人間がいても倒せるでしょ」
「いないことを願うばかりだよ……」
白夜単独と霞、雫に分かれて内部に入り、全方向に光線を放った。すると、戦艦はすぐに爆発した。その爆発する前に脱出した3人は、爆風で地上へ押された。
地面に着地した3人は、無線で風月と連絡をした。
〔今どこ?〕
〔一応仙台中を盾羽がイージス艦使って、人造人間が残ってないか調べてくれてる〕
〔確認はありませんでした。とりあえず殲滅は完了です。釧路にいる雷風君を待ちましょう〕
〔了解〕
3人はその時、雷風が釧路にいることを初めて知った。




