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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第3章 Bullying and revenge
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50GF The deceased does not speak



 「並び的に次は私か」



 霞は話し始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 瑠璃 霞。霞は孤児だった。そのため、幼い頃から児童養護施設でいた。環境はいいものとは言えなかったが、悪いとも言えない、至って普通の児童養護施設で1人、孤独に過ごしていた。その中、1人の男児を見ていた。その男児はリーダーシップに長けており、周りを大切に考えている模範的ないい男だった。イケメンであり、児童養護施設の中でのカーストはトップだった。ただ、霞は幼少期から性格が異常であり、歪であり、変であり、ひん曲がっていた。霞は、その男児とは真逆な人間になろうとした。



 (あの男を目標にしよう……)



 自分以外の人間を、「人間ではなく、自分に話しかけてくる幻想、虚構に過ぎない存在」として、人間として存在するのは自分だけだという唯我論を掲げ、自分以外の人間の言葉を完全に無視し、周りから人は離れていく。

 そんなことをしている間に、周りには誰もいなくなり、自分の理想とする空間が完成した。



 (できた……。これが私の望んだ完全なる虚構世界!! 幻想世界!! 私の空間!!)



 この考えを知り、霞の望んだ完全なる虚構世界(ぼっち空間)を完成させた時、なんと3歳である。

 そしてもうそろそろ6歳となる頃である11月13日、霞は引き取られた。普通、親族じゃないと引き取ることなんてできないが、今回の場合、児童養護施設自体が襲撃されたのである。職員や児童は全員無惨に殺され、6歳の誕生日が明日である霞だけが運良く生き残ったのだ。



 (完全なる虚構世界が……)



 霞は自分の世界として構築していた完全なる虚構世界(ぼっち空間)が、目の前でことごとく壊れる姿に苛立ちを覚えた。



 「お前にはある実験に付き合ってもらう」


 「付き合う? まだ5歳なのでお断りします」


 「そういう付き合うじゃねぇよ。お前みたいなやつなんかと付き合うわけないだろ」


 「えっ……、失礼……」


 「とりあえずお前は実験の被験者で確定だ」


 「あ、確定なんだ私」


 「……黙れ!!」



 幼少期の霞は、襲撃者が怒るほどうるさかった。

 霞は車に乗せられ、蕨市から仙台まで向かった。



 「ここに入れ」


 「はいはい」



 霞は何の抵抗もなく実験に使う機械の中に入った。そして実験が開始されると、霞は悲鳴をあげることはなく、ただただ実験をしている研究員のことを見ていた。そして、冷静に周りを見ていた。



 (ここ……、ビルドって言うんだ……)



 霞はあまり痛みを感じなかった。そのことには全研究員が驚いていた。



 「あの子全然痛がりませんよ」


 「屈強すぎませんか? ねぇ白銀さん」


 「あの女……、痛覚をあまり感じていない?」


 「え? 痛覚が?」


 「偶にいるんだよ。こういうやつは過去に何かしらの影響を受けてるってな」


 「へぇー」



 研究員たちがそう話していると、実験は終了していた。変わり果てた姿に霞は少し驚いた。



 (これが新たな姿か……)


 「それで、体をいろいろ弄る実験ってことでOKかな?」


 「あなた……、痛みは感じた?」



 1人の研究員が霞に近寄り、水入りコップを渡しながら聞いた。



 「まあ感じたよ。すんごい痛かったよ」


 「じゃあ、強がってたってこと?」


 「まあ、そんな感じだね」



 霞はそう言い、1人の研究員から渡された水入りコップを見ていた。



 (水……。柱とかになったら面白いんだけどな……)



 じっと見ていると、水は地面と垂直に伸び始めた。そして、霞の身長より少し上へ行ったところで止まり、水の柱が生まれた。



 「これが能力!?」


 「この子が……」


 「え? 能力? ……これが私の能力?」



 霞は瞬時に全てを理解した。思い通りに水を動かす能力。これが自分の能力だと瞬時に理解し、それを当たり前かのように実行しているその姿を見て、研究者たちは驚く以外できることがなかった。



 「じゃ、とりあえずここから立ち去りますわ」



 霞は、この施設にある水を使って背中に翼を生やし、仙台から脱出し、大阪へ1人向かっていた。翼を生やして飛ぶ速度は、この能力を使って初めてなのだが、新幹線を凌駕していた。



 (……なんで大阪向かってるんだろ)



 霞自身、なぜ大阪に向かっているのかは分からなかった。本能的なものが行けと行っているのか、それとも行く運命なのか。全ては神だけが知ることである。

 そして淀川に着水した時、ある者達が河川敷から見ていた。何かを話しているようだった。だが、全く聞こえなかった。それは、水の中から陸上の音はあまり聞こえなく、霞は少し耳が悪いからである。



 (何か喋ってる……、とりあえず陸に上がってみるか……)



 霞が河川敷に上がると、霞を見ていた者達は霞を見下ろすように立った。そして話しかけた。



 「君を引き取ろう。私達、マネジメントで」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「私はこのくらいしか覚えてない」


 「全員……、過去やばくない?」



 風月は盾羽、白夜、霞の3人の過去を聞き、驚愕していた。



 「まあ、人体実験受けてるしそれまでの過程が大変なんだろうなって思う」



 そこを白夜は冷静に語る。その姿には違和感が溢れていた。それを慧彼は口に出してしまった。



 「白夜が真面目なこと言ってる……」


 「私ってそんなに真面目なこと言ったら変!?」


 「変。すごく変」


 「マジか……」



 慧彼は全員を見て、語ろうとした。



 「じゃあ最後は私が……」


 「明日で」



 その時、風月はそう言った。



 「えっ?」



 慧彼は思わず困惑したことを口に出してしまった。



 「流石に明日で」



 白夜も便乗した。



 「私も明日を希望します……」



 盾羽も便乗した。



 「じゃあ私も」



 霞も便乗した。



 「いや、「じゃあ」って言ってるじゃん!!」


 「これはこれ、それはそれ」


 「意味が違う!!」


 「まあ、とりあえず明日の夜っていうことで、とりあえず今日は寝よう」



 風月がそう言うと、全員はぞろぞろと布団の中に入り、すぐに寝た。



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