41GF The battle that began with destiny, part 2
雷風は羅刹天の跳んだ高さを見てから1度しゃがみ、勢いよく上へ跳んだ。一気に近づいてくる雷風の姿を見た羅刹天は、恐怖感が一気に体中に伝わって、ゾッとした。
羅刹天は雷風と高度が同じになった時、事前に生成していた魔法円から光線を一気に放ち、それを雷風が対処している間に、地上に向かって降りた。
(戦闘を重ねるほど強くなっていく……。こいつ……、やるな……)
雷風も遅れて地上へ着地したが、着地する直前に羅刹天は魔法円を形成し、光線を放っていた。それを正面から当たる直前にまであった雷風は、光線の軌道を真上へ逸らした。
〔準備ができました。展開しますか?〕
盾羽が、何かの準備ができたようだ。それを知っている雷風は、それを了承した。
(何これ……)
羅刹天は、自身と雷風を囲んでどんどんできていく盾の壁を見て思った。羅刹天は盾に触ると、変哲もないただの盾だった。だが、雷風にとってこの壁は、機動力を上げる最大のフィールドであり、この戦法を実戦で使うための試験という意味でもあった。
雷風は地面を強く蹴り、盾を蹴り、盾を蹴り、その空間内を縦横無尽に跳び回った。それと同時に羅刹天の体に浅くダメージを入れていくのだが、そのスピードが尋常ではないためかなりのダメージが入った。
(これは使えるな)
〔解除していいぞ〕
雷風は盾羽にそう伝え、盾を全て消した。
「羅刹天だったか? お前と戦ってだいたいわかった」
羅刹天は、雷風の言っている意味がわからなかった。体は自動再生するため、意識して再生させる必要はないのだが、何を言っているかがわからなかったため、意識して再生させることで再生速度を上げた。
「お前、十二神で孤立してるだろ?」
その時、全てが読まれたことを羅刹天は感じざるをえなかった。この戦いの間は武人のような人造人間になっていたのだ。だが、今の精神状況まで読まれているような気持ちになったのだ。
「まあ、お前がどういう状況なのかは問わない。けどな、俺はお前を殺そうとは思わない」
羅刹天の心の中には、何か足りないものがあった。それは、プレッシャーという重い存在を支えるものだ。これまで羅刹天は、プレッシャーという重い存在を、心のバランスだけで支えてきたが、そのバランスが崩れたらプレッシャーも同時に落ちてくるのだ。それを今、一気に支えられたように感じた。
「鬼頭 雷風。あなたはさ、人造人間の核に触れたことってある?」
唐突な質問だった。それは誰もが感じることだろう。だが、羅刹天は信用しようとする心が生まれたのだ。その心に正直になって質問をしてみた羅刹天は、雷風がどんな答えを残しても、答えを残してくれること自体が嬉しいのだ。
「いや、斬ったことはあるけど手で直接核に触ったことはねぇな」
「体の中にロストエネルギーがある者は、人造人間の核に触れることで、触れた人造人間のの能力を使用することができる。けど、それを使えるのは核に触れている間だけ」
「へぇー……」
(結構ガチで初めて知った……)
すると、羅刹天は自身の左手に小さな核を生成した。その左手を雷風の方へ出し、雷風に触らせた。すると、雷風の体の中にあるロストエネルギーが、明らかに反応していることがわかった。
「……体内のロストエネルギーが結構反応してるぞ」
「そう。それは私の能力が使える証拠。けど、左手を離すと?」
羅刹天は雷風の手を離し、核を消した。
「体内のロストエネルギーの反応が消滅して、能力が使えなくなる」
ここで、雷風の中に1つの疑問が生まれた。その疑問は至ってシンプルなものであり、戦わなければ更に深まっていただろう。雷風はその疑問を率直にぶつけることにした。
「何故俺にそんな情報を教えた」
「簡単だよ。十二神を壊滅して、天城 神月を殺してほしい」
「神月は仮にもお前らの主だろ? 何故殺したいっていう感情が生まれる? それに十二神もだ。何故俺が殺さなければならない?」
その時、羅刹天は少し悲しそうな顔をした。
「私はあいつらが許せない。だから強くなって殺す。それの手伝いをしてほしいんだよ」
「……それはさ、『お前の友人もか?』」
雷風は戦闘をして羅刹天の全てを知った。そのため、神月を殺してほしい理由、十二神を壊滅したい理由、そして何よりも、友人さえも殺したいと思った理由を知っている。だが、それを口で言わせたのだ。決して性格が悪いからということではない。雷風は、気にかけているからこの行動に出ているのだ。自分の口で言わせるということが、精神が壊れかけている状況の中では一番大切なのだ。
「……支配されている状況で生かしてあげても何も嬉しくないと思う。だから殺してあげて自由にしてあげたい……」
弱々しい声で話した。これが羅刹天の本音だと理解している雷風は、これが本当のことだとわかっていた。だからその時、雷風は羅刹天にこう言い残した。
「一回ビルドの本部に帰ってその人を救おうと努力しろ。それでも無理ならここに来い。俺は屋上にいる」
その言葉と同時に、雷風は屋上へと一瞬で跳んだ。少し遅れて羅刹天は大阪へ帰った。




