40GF The battle that began with destiny, part 1
互いに戦闘態勢に入った。その周辺に漂う緊張感は、ゴミがひとつ乗るだけで断ち切れる程張り詰めており、強者しか入れない空間と化していた。
最初にその沈黙を破ったのは羅刹天だった。能力を発動しながら雷風の方に向かって走った。空中にロストエネルギーで形成されている、4種類のエレメント属性が刻まれている魔法円が現れた。そこから放たれたものは、殺傷性の持つ莫大な量のロストエネルギーの光線だった。それは全て雷風の方へ向かって飛んでいた。
(捉えた!!)
羅刹天は完全に雷風を捉えて、空中で殴るモーションに入った。その時、捉えていたはずの雷風の姿は一瞬にして消えた。
(どこに消えた?)
羅刹天は雷風のいたところから少し先へ行ったところで着地し、上を見た。すると空中には、羅刹天の方を見ている雷風がいた。雷風はあの時、ほぼ垂直に、だが少し後ろへ跳んでいたのだ。
(いつの間に……)
(こいつ……、中々面白そうな能力だな……)
苦戦を予感していた羅刹天とは違い、雷風は空中で密かに笑っていた。それは、強者しかわからない微笑みであり、また、子どもが対等な遊び相手を見つけたときに見せる微笑みだった。
羅刹天は雷風に向けて光線を放った。光線の速度は、銃弾より速い音の速度を遥かに越えており、常人なら避けることすらできない。だが、相手が悪かった。
(……斬れば行けるか)
その光線に、雷風は刀を抜いて斬ったのだ。光線は軌道を変えて二等分され、空中へ消えていった。立て続けにもう1発の光線が飛んできたが、それも雷風は刀で斬って軌道を変えて避けた。刀の振る動きは、続けて1つの動きにしているのではなく、1つ1つ独立した動きとして刀を振っていた。つまり、光線が飛んできたのと合わせて刀を振り、1度刀の動きを止めてから次の光線に合わせて刀を振っている。刀を振る速度が速く、そして正確なことから生まれる超絶技巧なのだが、それを軽々としていることから、遠くから見ていた白夜は驚きを隠せなかった。
(いや……、あれはやばすぎでしょ……)
雷風は着地し、羅刹天と一気に離れて距離を取った。その動きは、着地したタイミングと合わせて、光線を当てようとした羅刹天の反射神経より遥かに速かった。
(速い!!)
羅刹天は驚きながらも光線を放った。雷風は後ろへ跳びながら、飛んでくる光線の軌道を丁寧に逸らしていく。それはどこにも当たらないように、そしてどこにも迷惑がいかない最適な場所に誘導する。
2発目の光線の軌道を逸らした時、羅刹天はゼロ距離まで近づいて能力を発動した。4種類のエレメント属性が刻まれている魔法円が形成されていくところが、雷風の目でしっかりと確認することができた。そして、雷風が着地した瞬間に光線は放たれた。だが、雷風は着地してから光線が放たれるその一瞬の間に上に跳んだ。片足のつま先が地面についた瞬間に跳んだため、高さこそ出なかったものの避けるには十分だった。
(さて、ここからどう遊ぶかだな……)
羅刹天は、雷風がそんなことを考えていることも知らず雷風へ向けて光線を放った。それはさっきよりも的確に軌道を作っており、雷風を確実に捉えていた。だが、魔法円に作った場所が羅刹天の肩の高さだったため、羅刹天のいたところは空洞になっていた。それを予測した雷風は、無線で盾羽に伝えた。
〔盾羽、盾出してくれ〕
〔わかりました〕
盾羽は窓からその戦闘を見ており、盾1つ入るかわからない程の広さの空洞に、盾を的確に生成した。それを使って一気に降下した雷風は、羅刹天を上から切り刻もうと考えた。その時、羅刹天は上を見てすぐに後ろへ跳んだ。だが、その時にはもう遅かった。
(俺はこのタイミングで確実にこいつを殺せる。でもなぁ……、ここで殺したらさすがに勿体なさすぎるよな……)
雷風は着地し、その時にはまだ空中にいた羅刹天に近づいた。そして羅刹天の腹へ回し蹴りを放った。羅刹天は防護ネットを貫いて、校舎の壁に打ち付けられた。校舎の壁はめり込み、いかに威力が強かったかというのがわかる。
(鬼頭 雷風……。この人、強すぎる……)
雷風が近づいてくる前に地面に地をつけ、少し跳んだ後に校舎の壁を使って、グラウンドの中央へ跳んだ。それを全て見ていた雷風は、グラウンドの中央へ跳んだ先へ走った。
(このままだったら多分、ずっと遊べるぞ……)
雷風は不敵な笑みをこぼしていた。
羅刹天が着地すると、雷風は羅刹天の核を狙って刀を振った。それを避けようと羅刹天は後ろへ跳んだ。それと同時に、4種類のエレメント属性が刻まれている魔法円を、大量に生成して雷風へ向けて放った。それと同時に、自身の体にも魔法円を生成し、地面の方へ放つことで後ろへ移動する速度を上昇させた。
(そんなこともできるのか……。あの能力、結構汎用性高いんだな……)
雷風は感心しながら、飛んでくる光線の軌道を全て逸らした。適当にしているように見えるが、次は全て同じところに光線が飛ぶように軌道を逸らした。
(この人……、刀を扱うのがあまりにもうますぎる……)
羅刹天が着地したところへ近づく雷風。だが、羅刹天はその状況を読んだ。羅刹天の周囲360°に魔法円を360個生成し、1つ1つは重なっていたものの全て機能するものだった。それを一気に発動し、光線を盾にしながら上へ跳んだ。それを見ることしかできなかった雷風は、ただただ感心していた。
(……すごっ)
雷風は羅刹天の跳んだ高さを見てから1度しゃがみ、勢いよく上へ跳んだ。




