39GF Opposite gods and ordinary people just met
「……なにやってるんですか」
盾羽は、広場の芝生で寝転がっている慧彼を見ながら言った。
「え? 見ての通りだけど」
「いや……、そういうことじゃないんですけど……」
「慧彼ってさ、やっぱりこの芝生好きだよね」
ベンチに座っている白夜が、慧彼に向かって言った。だが、その言葉には続きがあった。
「まあ……、……もうそろそろ会議だけどね」
その言葉を聞いて、慧彼は飛び起きるように立ち上がった。
「え? マジ?」
「マジです」
「マジ」
盾羽と白夜に確認すると、本当だということがわかったため、広場から直接屋上へ跳んだ。
「……慧彼さんって、何かと忙しい人ですね」
「慧彼の行動って読めないからさ、私はずっと振り回されてるんだよね」
「白夜さん。その気持ち、わかります」
盾羽と白夜は、慧彼の後を追って広場から直接屋上へ跳んだ。
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「遅かったな」
雷風は、慧彼が屋上に来た時にそう言った。
「芝生で寝転がってたから遅れた」
「やけに正直だな」
「いつもは正直じゃないみたいな言い方じゃん」
「お前は正直なのか嘘なのかわからないからな……」
「私ってそんなに変?」
「まあ、それなりにはな」
「泣いてもいい?」
「お好きにどうぞ」
「冷酷……」
雷風と慧彼が何気ない会話をしている時、盾羽と白夜が屋上へ来た。屋上には既に風月、霞が到着しており、全員が集まったことになった。
「さて、全員集まったな。それじゃまずお前らの時間割を詳細に話してくれ」
「1年C組、1時間目は数学Ⅰ、場所は教室。2時間目は体育、場所はグラウンド。3時間目は物理、場所は教室。4時間目は国語、場所は教室。5時間目は公民、場所は教室。6時間目は英語、場所は教室。報告は以上だよ」
「2年A組、1時間目は体育、場所は体育館。2時間目は地理、場所は教室。3時間目は古典、場所は教室。4時間目は化学、場所は教室。5、6時間目は体育館でレクリエーション。報告は以上です」
「3年は……、休みだね」
その言葉を聞いたとき、雷風は霞の顔を見た。それは疑っている目だった。その眼差しを向けられた霞は、少し困惑した。
「……休み?」
雷風は霞に聞き直した。それは霞を疑って聞いたのではなく、雷風自身の耳を疑って聞き直したものだった。
「うん。休み」
「お前ら、今日来た意味あるか?」
「無いよ」
「無いよ」
風月と霞は声を合わせて言った。雷風は、自身の耳が壊れていないことに気付き、スマホに情報を入力した。
「とりあえず2時間目の体育、場所がグラウンド。んで5、6時間目のレクリエーション、場所が体育館。それは俺も対処できる。まあいつも通りだが、戦闘態勢はしておけ」
雷風がそう言うと、全員は屋上から姿を消した。それと同時に、雷風は周囲の警戒を開始した。
(さて、何か来る感じはするんだよな……)
雷風は、何か嫌な予感はしていた。
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白夜がいる1年の女子の体育は、グラウンドにある400mのトラックを、インターバル走のようにするらしく、400mトラックの中に整列していた。
「今からインターバル走をする」
(いや、夏にインターバル走するってヤバイぞ……)
雷風は、白夜の無線を通して授業風景を聞いていた。夏にインターバル走をするということに雷風は驚きを隠せなく、心の中で嘆いていた。
夏にインターバル走をするということは、過度な運動をすることと変わらないため、日頃から運動をしていない者は熱中症や脱水症状を起こしやすいため、こまめな水分補給や適度の休憩、そして暑さ対策をした方がよい。
そして準備体操が終わり、3分間の休憩時間が始まった。だがその時、グラウンド中に轟音が鳴り響いたとともに、噴煙が広く、高く舞った。それを確認していた雷風は、すぐに無線で白夜に伝えた。
〔お前はそのままそこにいる女子生徒達といろ。ついでに先生も。アトミックアニーもいざというときに使うから持っておけ。今上空から降ってきたやつ、確実に十二神のメンバーだ〕
〔わかった〕
雷風はすぐに屋上から飛び降り、着地すると同時に轟音が鳴った元凶のもとへ向かった。
「……誰だ」
噴煙という色がついた霧が晴れる。すると、そこには翠玉色の髪をしており、振り向くと見える蘇芳色の瞳が雷風を睨んでいた。
「名乗るのはあなたが先なのでは?」
雷風に威圧をかけるその者は、一切の隙がなかった。その姿勢に雷風は感化された。
「そうだな。俺は鬼頭 雷風だ」
「私は羅刹天。鬼頭 雷風、あなたを殺す」
「おう、やってみろ」
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空を飛んでいた羅刹天は、ある迷いがあった。
(もし、断罪者と遭遇したらどうしよう……)
羅刹天は、たとえ敵である断罪者でも殺すことには抵抗があった。断罪者の名前こそ頭の中に入ってはいるが、名前だけで勝手に決めつけるのも良くないと羅刹天は思っている。
(その時はもう、威勢の良い武人のような人造人間になって、断罪者達を欺くしかない……)
そうしている間に、羅刹天は仙台に到着した。
(……あの学校、体育をしてるのかな? ……まさかあそこに断罪者が?)
そう思ったのか、羅刹天はその学校のグラウンドへ急降下して着地した。すると、屋上から誰かが飛び降りてきて羅刹天の方へ近づいてきた。
(誰? けどあの高さから飛び降りても怪我はない……)
視界が晴れる。すると1人、羅刹天の正面に立っていた。
「誰だ」
その者が羅刹天に名前を聞く。その時、さっき決めた決め事を思い出した。断罪者の前では武人のような人造人間になると。
「名乗るのはあなたが先なのでは?」
羅刹天はその者を睨んで威嚇した。だが、その者は何かに感化された顔をし、少し笑っていた。
「そうだな。俺は鬼頭 雷風だ」
「私は羅刹天。鬼頭 雷風、あなたを殺す」
「おう、やってみろ」
互いに戦闘態勢に入ったグラウンドの空気は、緊張感という言葉以外では何も表せなかった。




