38GF Bondage continues even when control is released
羅刹天が自分の能力を研究し始めた時、火天は梵天と帝釈天の側にいた。
「まあ、俺達より順位上だし……」
「……この辺にしとくか」
火天は支配を解除された。それまで縛られていた行動全てが、唐突にできるようになったことに解放感を覚えたが、羅刹天が孤立している状況を考えると、すぐに束縛感が襲ってきた。
「これ以上は羅刹天と関わらない方がいい。それは俺達が保証する」
「羅刹天に寛容な態度取った瞬間に殺しに行くからな」
梵天と帝釈天が発した脅しのような言葉に対して、火天はただ従うことしかできなかった。
それから2日間、火天は十二神の者達の意のままに動かされていた。それは、帝釈天が洗脳しているからではなく、火天の意思によるものだった。火天が何かをしたわけでもない。誰かが命令したわけでもない。その意思は、十二神の者達にはわからなかったことだった。
(羅刹天だけは……、何としても救う……)
その時、大阪市中にある放送が入った。
『羅刹天に告ぐ。東北方面へ攻撃に向かえ』
放送が終わったとき、羅刹天の能力と思わしき音が地上に鳴り響いた。
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「あそこに人いるでしょ?」
慧彼は窓を開け、雷風に指を指しながら生徒達に語りかけた。生徒達は恐る恐る窓の外を見て、雷風がいることを確認した。
「あの人がこのクラスに来るんだよ」
その瞬間、全員が慧彼のことを見た。
「え?」
「マジ?」
「めっちゃ動き速かったけど……」
生徒達は驚きという感情と喜びという感情、そして、恐怖という3つの感情が心の中で入り交じっていた。先生は事情を知っていながらも体が震えていた。
「よし、授業を始めようか」
先生は平常心を保つことができた。先生は生徒達にそう言い、授業に気を向けさせた。
一方、屋上にいた風月の後ろには、霞がいた。霞は偵察兵を一閃する斬撃を目の前で見てることから、偵察兵を一瞬にして斬っていたのに一番驚いていた。
(いや……、これはもうチートでしょ……)
驚きを超えて軽く引いていた霞は、風月が振り向いた瞬間には平常心を保っていた。
「早く教室行くよ」
「わかったって~」
霞と風月は、ジョギングほどのペースで走って3年B組の教室へ向かった。
「遅れました」
「遅れました」
2人は教室に入ると同時に先生や生徒達に向かって謝った。
「あ、ああぁ……。……とりあえず自己紹介をして、好きなものを言ってくれ」
「わかりました」
風月は即答し、自己紹介を始めた。
「鬼頭 風月です。2年A組に弟である鬼頭 雷風がいます。好きなものは雷風と仲間です。第一に守るものは雷風です。まあ、とりあえずよろしくお願いします」
「……あっ、私か。瑠璃 霞です。好きなものは……」
霞は、「好きなもの」ということについて考えたことが一度ない。何といえばいいのかはわかるのだが、「正直に言えばいいのか」「嘘をついて答えたらいいのか」という2択で迷っていた。その時、そんな姿を見ていて気づいた風月は、霞に小声でアドバイスを送った。
「本当のことを言えばいいと思うよ」
霞は、そのアドバイスの通り正直に答えた。
「無いです。なので、これからこの学校で好きなことを見つけていこうかなって思います」
「もうそろそろ夏休みだけど好きなこと見つけろよ!!」
その時、男子生徒が霞にエールを送ったことで、クラス中の生徒が霞にエールを送った。
「ほら、いい方向に行ったでしょ?」
「確かに……」
「あの席に座ってくれ」
風月と霞は、先生に言われた空席へ向かった。
風月達が自己紹介をしていた時、白夜は大量の質問を着実に捌いていた。
「他に質問とかありますか~?」
「はい!!」
その時、1人の女子生徒が勢いよく手を上げた。その生徒に目が行った白夜は、その生徒に質問権を与えた。
「はいそこのショートカットの女の子!!」
「後で連絡先交換しませんか?」
「うん、いいよ~」
その時、白夜はひとつ聞きたいことがあったことに気づいた。
「ねぇ、この学校の部活って何があるの?」
その時、生徒達は周りと話しながら数を数えていった。
「正確な数はわからないけど、30は確実に越えてるよ」
「……多くない?」
「それは全員が思ってることだよ」
「あ、そうなんだ」
そんな一日を過ごし放課後、学校の屋上で雷風達は集まっていた。そこに慧彼と盾羽が遅れて来た。
「あ、もう全員いたんだ」
「まあな。お前らも急いで来たんだろ?」
「まあね」
慧彼と盾羽は会話の輪に入った。
「まあそれでだ。俺は基本ずっとここにいる。休み時間とかには普通にここ来れるからさ」
「わかった」
「それじゃ、私と慧彼は今から部活の見学に行ってくる」
白夜はそう言い、慧彼と共に屋上から飛び降り、着地すると体育館へ一直線に向かって走った。
「わんぱくな奴らめ……」
「そういう年頃じゃないの?」
風月がそう言うと、雷風は見事な切り返しをした。
「その年頃は少なくとも8年ほど前だけどね。姉さんは知らないか……」
「そんな悲しいこと言わない……」
風月は雷風の頭を撫でた。
「それで、ここにはいつ頃までいるんですか?」
盾羽は雷風にそう尋ねた。
「5時までだな。それ以降は俺だけで仙台の見回りをする。家に帰ったら飯の用意しといてくれ」
雷風にそう頼まれた盾羽は、霞と共に夜飯の準備をするために家へ帰った。
「私は雷風の見回りに付き合うよ」
「ありがと、姉さん」
雷風は5時まで学校周辺を警備した後、仙台の見回りへ向かった。




