32GF 自由という覚醒
雷風と風月はボスの部屋の中へ入った。するとそこには、暗闇の中に大量の人造人間を作る装置が光った状態であった。その中で一際目立っていたのは、正面にある12個の人造人間を作る装置で眠っていた12体の人造人間。そして、その前にとある者が立っていた。白衣を着ており、雷風と風月が着ている服とは真反対になっていた。
(こいつ……、ボスか……)
確信した雷風の思考は、思考回路の根源を繋いでいる風月の元へ、思考回路の根源を辿って頭の中を駆け巡った。
(雷風の倒さなければならない敵が……、この男……)
「侵入者か……、まあいい」
「お前は誰だ」
雷風はその者に聞いた。
「教えるわけがないだろ。……1つ教えるとすれば、この首を見ろ」
その者が雷風と風月に見せた首は、白銀 誠の首であった。それを知らない雷風は、それが誰なのかを尋ねた。
「そいつ誰だよ」
「こいつは元々、このビルドのボスをしていた者だ。こいつを俺が殺して、俺がこのビルドの頂点に立った。つまり、ボスになった」
「それが3年前に起こった北海道の?」
「そういうことさ、1号」
その者は、風月のことを「1号」と呼んだ。それに腹が立った風月は、その呼び方を止めるようにきつく言った。
「私を1号と呼ぶな」
その言葉を発した時、風月はその者に向けて殺意を放った。
風月が明確に殺意を放った時、雷風の記憶回路にとある記憶が入ってきた。それは、3年前に起こったとされる霞の仕事の話を聞いた時だった。話の最後に出てきたのがこの男である。風月は記憶力が良かったため、一瞬でその記憶が入ってきた。そこに出てきた男が、『天城 神月』だった。その名前が今、風月の口から出された。
「天城 神月」
「おいおい、殺気がこの部屋に溢れかえってるが?」
神月は風月のことを煽るような態度で喋った。そして、神月は立て続けにとんでもないことを言った。
「君達断罪者なんて知らないよ。だって、君達の新たなトップがすぐに死んでしまうんだから」
そう言うと、神月は姿を消した。それは誰かの人造人間の能力であり、後ろにいた12体の人造人間達もすぐに姿を消してしまった。
「……消えた」
「……消えたね」
雷風と風月は、仙台駅があったところまで戻ってきた。すると、そこにはもう全員がいた。
「ボスに会ったの?」
「まあな。一応会った」
その時、風月は雷風に抱きついた。心の中にあった緊張感と、雷風が自分の側にいるという安心感により、風月は泣いてしまった。雷風はその姿を見て、頭を撫でて慰めることしかできなかった。風月が雷風を想う気持ちは誰よりも強く、誰よりも深く、そして誰よりも濃い。それ故に雷風が死んでしまうかもしれないあの瞬間を体験した後、生きているという安堵が心を包んだ。風月のそんな姿を、雷風は初めて見た。焦りながらも雷風は風月をお姫様抱っこした。
「盾羽。姉さん助けた時に使ったあのでっかい盾あるだろ? あれで慧彼と白夜、霞の3人連れて寮に帰らせてくれ。俺はちょっと、姉さんとすることがあるからさ」
「わかりました。ではみなさん、帰りましょう」
「りょーかーい」
「りょーかい」
「OK」
盾羽は風月を救出したときに使用した大きな盾を生成し、その上に全員を乗せたことを確認した上で寮へ向かって盾を飛ばした。
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神月達は、大阪の難波にある地下街より地下深くの、マネジメントの本部に来ていた。マネジメントの本部に来た理由は1つ、新しいトップである学校の校長の首を無惨に撥ね飛ばすことだった。マネジメントの戦闘員、非戦闘員関係なく殺していくその12体の人造人間の姿は、まるで悪魔であり、邪悪な神を表していた。
「もっと残酷に殺せ。これは命令だ」
神月に命令された12体の人造人間は、槍を投げつけて壁に打ち付けて殺したり、何人かの非戦闘員の体を炙ったり、体のありとあらゆる穴に水を注ぎ込んで溺死させたり、足や腕を折った後に殺したり、殺された者の脊髄を抜き取って剣にし、それを振り回したりした。
「ここしか残ってねぇな。おいお前ら、今から話するから大人しくしとけよ」
神月はその部屋に入ると、マネジメントの新トップがいた。
「お前がマネジメントのトップか?」
「それがどうした。俺がトップだったらどうする」
「お前がトップでもトップじゃなくても殺す」
マネジメントの新トップの心臓を腕で貫いた神月は、その死体を部屋の外へ投げた。そして、トップにしか座れない席に座った。
「おい十二神共」
「はっ」
十二神と呼ばれる人造人間達は一斉に返事をした。神月は、そんな人造人間達にある命令を下した。
「……今からこの組織内にいる人間を全て殺せ。人間と判断できるものは全て殺せ。どれだけ残酷に殺してもいい。殺した数を競ってもいい。だが、最低でもさっきの残酷さを保ったまま殺せ。いいな?」
「はっ」
十二神は返事し、一斉に部屋を出た。
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仙台にいた雷風と風月は、仙台駅から少し離れたビルから座って夜空を見ていた。
「雷風、ありがと」
「いつも世話になってるしこのくらいどうってことないよ」
「そう?」
雷風は、輝いていた星とそれを隠すように流れる雲を見て、今ようやく自由になれたと思った。だが、今の雷風達の状況は神月達に追い込まれている状況であることを雷風達は知らない。だが、それを知る由がないわけではなかった。
(あの言葉……、「君達の新たなトップがすぐに死んでしまうんだから」ってどういうことだ?)
雷風は考えていた。だが、悩みを抱えて考えていた時に比べて、心の中にあった悩みが解き放たれた時に考える時の方が解決策は思い付くのだ。
(……いや待てよ?)
雷風は一度頭をリセットして考えた。そして、神月の言った言葉をそのままの意味で捉えて考えた。それによって導き出される答えは簡単なものであり、「数手先で神月達がどのような行動をするのか」というものがわかるようになるまで頭が回っていた。
雷風の仮説を元に、風月に少し聞こえるような声で言った。
「あいつらを学校に行かせるわけにはいかねぇ……」
雷風の考えていたことを思考回路の根源を伝って理解していた風月は、声に出してリアクションをした。
「……え?」
「俺の思考回路を読んだ姉さんならわかるはずだ。事の重大さが」
「……そうだね。絶対に行かせちゃ駄目だ」
雷風は、寮についたであろう盾羽に電話をかけた。
〔盾羽、急いで用件だけを言う。用意を2分で済ませて急いで仙台に戻ってこい。その時は断罪者全員連れてな〕
〔わかりました。伝えてすぐに仙台へ戻ります〕
雷風は電話を切り、風月を連れてホテルへ向かった。
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「今から隣り合った部屋で3部屋借りれます?」
「はい。今日はたまたま空いてますよ。ラッキーですね」
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雷風と風月は、ロビーで盾羽達が来るまで待っていた。
「まず東京には住めない。居場所はすぐに特定されると思う」
「そうだね。……考えるのめんどくさいから仙台で良くない?」
「……そうしよう」
その後、世間話をしているところに盾羽達がホテルに来た。
「何の話してたんですか?」
「え? 雷風の性癖の話」
「雷風の性癖? そういうの興味ないと思ってた」
「実際興味ねぇよ。んでまあ本題だが、東京に行くのはちょいと危ない。だから俺達は常に2人以上で行動すること。んで、俺達は仙台に住む。だから転校先も仙台の学校だ。それだけは覚えとけ」
「転校か~。……2回目だ」
慧彼は2回目であるが、それ以外の断罪者は全員1回目である。
「……私小学校ほとんど行ってないし、中学校なんてまるごと行ってないよ? それでもいいのかな?」
「姉さん元々頭いいじゃん。それにさ、俺の思考回路の根源伝って会話すればいつでも答え教えれるから」
「じゃそれでいいや」
それ以外は特に喋ることは無く、各々分けられた部屋へと入っていった。




