29GF 不可能存在というスケール
格納庫にいた盾羽と霞は、どんどん核爆弾を消滅させていった。
「見た限りではこれが最後かな」
霞は最後に残った核爆弾を消滅させ、格納庫に会あった核爆弾を全て消滅させた。
「もうここですることと言えば……、内部の人造人間達を倒すだけですね」
盾羽は、ある疑問が浮かんだ。
「格納庫……、戦艦にしては大きすぎませんか?」
「そう?」
盾羽は満遍なく核を探していた時に思った。「移動距離が明らかにおかしい」と。この戦艦のサイズが、どれほどの大きさなのかがわからない程大きいと考えた盾羽は、戦艦の壁を触った。
「霞さん。多分ですけどこの戦艦、ロストエネルギーで形成されてます」
「っていうことはどれだけ大きなものを作ってもあまり問題はない。……っていうことか」
「これだけ大きい戦艦ということは、核があるかもしれません。実際、私の作るイージス艦には核がありますし……」
「じゃ、人造人間達狩りながら核探すって感じで行こう」
「そうですね」
話し合いの末決まった方針の通り、霞と盾羽は戦艦の内部に侵入した。そして2人は、人造人間を狩りながら戦艦にあると予想した核を探した。
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操縦席にて。巨大な窓を割って戦艦の中へ入った風月は、操縦をしている人造人間達を、能力を使用して殲滅した。
(……あった。これで自動操縦モードにできる)
風月は自動操縦モードにするため、目的地を設定しようと戦艦内にある地図を開いた。
(……え?)
「これは……、どういうこと?」
その地図には戦艦がある部分が影として映されているのだが、「南鳥島の上空から那覇の上空までが、1つの戦艦の影で埋め尽くされていた」のだ。
「この戦艦……、いったいどうなってるの?」
風月は、この異常な程の戦艦の大きさに唖然としながら、後ろから近づいてきている人造人間を事前にセットしていた斬撃で核を斬った。
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「……人造人間多いって」
慧彼は、限りなく出てくる人造人間に呆れながら殲滅していた。甲板に人造人間が集まってきたら能力を使用する。だが慧彼は知らない。この戦艦の規模が、日本を覆う程大きいことを……。もちろん、戦艦に乗っている人造人間の数は、慧彼の考えている数とはかけ離れた数であることは確実であろう。
〔ねぇ、聞こえてる?〕
慧彼は、出発前に風月へ渡していた無線で会話を始めた。
〔聞こえるよ〕
〔何か情報はあった?〕
〔ありまくりだよ。まず、その人造人間達だけど、無視していいよ。もし、人造人間が多すぎて邪魔だったら倒して中に入った方がいい〕
風月は慧彼に人造人間の異常な多さを伝えようとしたが、伝え方がわからなかった。だが、慧彼は風月を信用した。
〔なるほど。とりあえず目の前の人造人間達潰していいんだよね?〕
〔そういうことだね。〕
〔潰して進めってことだ。私それ得意だよ?〕
慧彼は高く跳んだ。そして能力を発動し、アンバーの瞳をマルーンの瞳へと変化させた。
「内部破壊」
すると、視界内に入った人造人間は核から消滅していき、視界内に入った人造人間は全員消滅した。
(今のうちに……)
慧彼が戦艦の中へ入ろうとした時、ロストエネルギーが単体で甲板へ集まった。それは、微かにだがロストエネルギーの密度がそれぞれ違っていたため、人造人間として加工されたロストエネルギーだと慧彼は理解した。
〔風月。今ね、目の前にロストエネルギー単体でどんどん現れていってる。何か知ってることない?〕
〔いや、それは私にはわからない……。けど、それは多分この中にいる人造人間のロストエネルギーをかき集めてるものだと思う〕
〔ロストエネルギーの密度が微妙に全部違うから、多分風月の言ってることはあってる〕
慧彼の前で単体として動いているロストエネルギーは、だんだん形を作っていった。
〔繋がりましたか?〕
盾羽が無線の会話に入った。
〔多分だけど無線のチャンネルが違ったんだと思う。私たちはずっと同じ無線のチャンネルだから〕
〔わかりました。霞さんもここに呼びますね〕
盾羽は、無線のチャンネルを変更した。そして、盾羽が無線のチャンネルを元に戻すと、霞が無線のチャンネルに入った。
〔今何かヤバいことでも起きてる?〕
〔今ね、単体として動いてたロストエネルギーがどんどん合体していって1つの生命体になろうとしてる。これってどうすればいいの?〕
状況を説明した慧彼は、霞に解決策を聞いた。
〔とりあえずそいつ倒そうか。それで、そこってどこ?〕
〔全員同じ戦艦にいるよ〕
風月が、全員が同じ戦艦に乗っていることを伝えた。
〔そして慧彼は前方甲板で無線会話中。私は操縦室で戦艦の自動操縦をしようとしてる。2人は今どこ?〕
〔私は研究室です〕
〔私は食堂だね〕
盾羽が研究室、霞が食堂にいることを艦内地図にメモした風月は、この戦艦にある核の場所を、戦艦の設計図を見ながら推測をしていた。
(……これは!!)
風月はとあることを見逃していた。設計図にある研究室、それは核の近くであればすぐにロストエネルギーを供給することができる。それを読んだ風月は、盾羽にあることを指示した。
〔盾羽。〕
〔どうしました?〕
〔研究室付近の壁とか天井とか床とか物とか。とりあえず全部壊して。核が出てくるまでね〕
〔は、はぁ……〕
盾羽は風月の滅茶苦茶な指示に呆れながら、壁や天井、床、物を、鋭利な盾を生成してどんどん破壊していった。
〔……ありました。それもかなり大きいサイズです〕
〔それそれ。ちょっとヒビ入れるだけで壊れるから〕
〔ヤバい!! なんか完成した!!〕
慧彼がその無線を送った時にはもう、盾羽は核を破壊していた。戦艦は灰となって、跡形もなく消えていく。あの巨大な戦艦が壊れた時には、風月は跡形もなく消えていく姿を見て唖然としていた。
(あれが壊れるなんて……)
「なんかついてきてるって!!」
慧彼は自分が乗れるサイズのガベルを生成し、東に向かって降下していた。その角度はかなり浅かったが、後ろにいる何者かが同じ軌道で降下をしていた。
「なんでついてくるの!?」
慧彼の声は、全員の耳に届いていた。盾羽は大量に作った鋭利な盾を高速で移動させて、何者かを勢いよく刺した。
「ナニヲスル、ドウルイヨ」
「何が同類だ!! 追いかけてこないで!?」
「コトワル」
「断るなぁ!!」
慧彼は必死に逃げていた。追いかける人造人間を自称する者に攻撃をする盾羽を見たその者は、ターゲットを変えた。
「ツギハオマエダ」
その者は体全体から時限爆弾のようなものを剥き出しにし、残り10秒のところからカウントダウンを始めた。
「全員、飛ぶ手段があれば仙台へ急行してください!!」
盾羽は、ガベルを消して降下している慧彼をお姫様抱っこし、2人が乗れる大きさの盾を生成して一気に仙台へと向かった。霞は外に出て、高度が下がったことにより海水が使用できるようになった。そのため、能力を発動して海水で翼を作って仙台へ高速で滑空した。風月は、刀を振って斬撃を具現化し、それに一瞬で掴まった状態で斬撃を発射した。そしてその上に乗り、3人は仙台へ向けて飛んだ。
「マテ!! マテ!! マテ!! マテ!!」
そう言う人造人間だと自称する者についている時限爆弾は、残り1秒を切っていた。そして、それはタイムリミットを迎え空中で大爆発が起こった。
(危なっ……)
全員の背後で起こった爆発は、範囲と威力はとてつもないものであった。触れたら即死のレベルである爆発を目の当たりにした4人は、少し危機感を持ちつつも急いで仙台へと向かった。




