27GF 包囲という絶望空間
『南鳥島にて、島内を侵攻をしている人造人間達を1体も残さず殲滅せよ。これは緊急任務であり、南鳥島にいる海上自衛隊、気象庁、関東地方整備局の人間達を守るためである。直ちに南鳥島へと向かえ』
慧彼、風月と別れた盾羽は、自分が乗れるサイズの盾を生成した。
(さて、日本の最東端である南鳥島……。かなり遠いですね……)
そう、本州から1800km離れている南鳥島は、日本海溝の東側にある唯一の日本の島で、日本最東端の島ある。その距離を知っていた盾羽は、急いで向かわねばならないと思っていた。
(もう侵攻されているのに何故すぐに送らなかったんでしょうか……。早く緊急任務を終わらせて向かいたかったんですが……)
盾羽は生成した盾に乗り、急いで南鳥島へと向かった。
(いったい、どのくらい人造人間がいるのかが問題ですよね……。もし私では倒しきれない数では応援が必要ですし……。ですがこんな辺境の島まで来れる人員は多分いない……。断罪者のみなさんも緊急任務がありますし……。そんな簡単に助けを求めるわけにはいかない……)
色々考えたが、結局辿り着く結論は1つであった。
(私だけで倒しきる必要がある……)
海の上を飛ぶ盾と、その上に乗る盾羽の姿は、まるでサーフィンで勢いよく飛んだサーファーのようだ。その姿とは合わない、黒のロングコートに碧眼が輝くその姿は、月光に照らされていた。海面に移る影は、青い光がひとつあるだけだった。それが残像を作り、海面には1つの青い線が見えているような風に映っていた。
(恐らくビルドの人造人間……。いったい目的は何なんでしょうか……)
盾羽は考えていた。だが、顔は覚悟を決めた顔をしていた。
南鳥島が見えてきた。盾羽は盾を蹴って跳び、南鳥島へと一気に向かった。空を跳ぶ姿もまた、月光に照らされているため、青い光が見えているだけであった。
南鳥島の滑走路に着地した盾羽は、急いで建物のある方へ向かおうとした。その時、その建物の方から人造人間がうっすらと見えていた。盾羽がじっくり見ようとした時、その人造人間達は走って来た。その数は近づいていく程どんどん増えていく。そして、小国の軍なら作れる程の人造人間が集まって、盾羽の方へ走っていた。それを目の当たりにした盾羽は……。
「貫ける限界まで、盾で貫きましょうか……」
盾羽は鋭利な盾を大量に生成し、一直線に放った。向かってくる盾に直線的に向かっていく人造人間達。しっかりと核を貫き、跡形もなく消えていく。だが、その後ろにも大量の人造人間がいた。その光景を見て、盾羽はこう思った。
(終わりがない……)
盾の鋭利な部分も欠損していき、遂には盾が全て壊れた。物怖じせず走ってくる人造人間達。その数はゆうに5万は越えていた。人造人間で溢れていた滑走路は、徐々に盾羽を追い詰めていた。
(……しょうがないですね。もうここまで来たら第2パターンを使うしかないですね……)
盾羽は空高く跳んだ。そして、上空から鋭利な盾を大量に生成した。それを下へ加速させて放つことで、重力と加速で一瞬のうちに地面へ落下する、不可視の雨を体現させた。避けて地面に落ちると、そこに巨大なクレーターが生まれる。そしてその盾はすぐに消滅するため、当たったら死、避けたら地形変化からの2発目で死という、必ず死ぬスパイラルを作り出した。
(……あれはいったい?)
盾羽は上空でいたため、1つわかったことがあった。滑走路の端にいるある人造人間と、海から湧き出ている人造人間に関係があるのだと。
(……そういうことですか)
それに気づいた盾羽は、空中に平らな盾を生成してそれを足場とし、滑走路の端へと一気に向かった。盾を変形させ、両剣を生成した。
滑走路の端にいる人造人間は、空から向かってきている盾羽に間一髪で気づいた。すかさず前方へ移動し攻撃を避けた。
(外した……)
両剣を振って攻撃した盾羽は、振った時に生まれた体のバランスのズレをすぐに修正して着地した。その時、その人造人間は盾羽の元へ走った。すぐに戦闘体勢に入った盾羽は、拳と刃を交える戦闘に入った。
盾羽と人造人間の一発一発の威力が強く、それも高速で行われているため、周囲に与える余波はとてつもないことになっており、戦闘をしている周辺の地形はどんどん変化していき、何も知らない人はまるでクレーターと言ってしまう程になっていた。拳と刃が当たる度に音が鳴り、それもどんどん大きくなっていった。
(こいつ……、確かに強い……)
盾羽は一旦、人造人間と距離を取った。その距離を詰めようと走ってくる人造人間の首には、「α」と書かれていた。
(α?)
疑問に思ったが、今はそれどころではない盾羽。上から振り下ろされる拳を持ち手でふさいだ盾羽は、両剣を勢いよく上へ持ち上げることで人造人間を上へ飛ばした。その隙を突いて核を突き刺すことで倒した盾羽は、目の前にいる人造人間が消えないことに驚いた。
(まさか……、あの人造人間はダミー!?)
盾羽は上から何かが降ってきていることに気づき、人造人間達を盾で殲滅しながら移動した。
「これってどういう状況?」
上空から霞が降りてきた。それに驚いた盾羽は、何故ここにいるのか霞に聞いた。
「え? なんでここにいるんですか?」
「いや、戦闘音が聞こえてきたから」
「耳いいんですね」
「まあね」
「まあそんな戯れ言はいいんです。この人造人間達をどうにか一掃できませんかね……。私の能力ではどうにも限界がありまして……」
霞は何か思い付いた。
「なるほどね。とりあえず任せて」
霞は何故か、上に指を指した。
「上から降ってきた人造人間達、いたでしょ」
「は、はい……」
「あの上にビルドの飛行船がある」
何かがわかった盾羽は、霞に確認をした。
「……だから人造人間が海から来ているんですか」
「まあ……、そういうこと。とりあえず上の飛行船をどうにかしないと終わらないと思うから、上に上がる作戦でも立てといて。その間ここは潰す」
「上がるだけならすぐにできますよ」
霞は少し驚いた表情をしたが、すぐに落ち着いて話を続けた。
「じゃ、行く準備しといて」
「わかりました」
霞は能力を使用し、海水の1つ1つを槍に変えた。
「人造人間の核を正確に潰すことを心がけて放つ……。核の場所は共通して人間で言う心臓部分……。それだけ意識してればいいか」
霞は確認し、一気にそれを放った。それは、降下中の人造人間にも放ち、南鳥島周辺にいる人造人間は残らず殲滅した。
「行く準備できた?」
「できましたよ」
「じゃ、早速行くよ」
盾羽は、2人が乗れる大きさの盾を生成し、その上に2人は乗った。
「飛行船へ向けてまっすぐ飛ばすので、絶対にこの盾から離さないでください」
「わかった」
盾羽は飛行船へ向けて一気に放った。
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雷風&白夜 19時50分
慧彼&風月 19時35分
盾羽&霞 19時35分




