表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第2章 過去という信念
25/206

25GF 街中という危険地帯



 『那覇にて、住民を次々と殺害し、家屋を破壊し続ける人造人間達を、鬼頭 風月を連れて至急殲滅せよ。これは緊急任務であり、那覇に住む住民を守るための任務である。直ちに那覇に向かえ』



 盾羽と別れた慧彼と風月は、どうやっていくかに迷った。



 「……どうやって行くの?」



 慧彼は風月に聞いた。



 「……方法なら一応ある」


 「え? 何?」



 食いぎみに聞く慧彼に、風月は落ち着けと言わんばかりのジェスチャーをし、慧彼を一旦落ち着かせた。



 「私の能力って、斬撃を具現化する能力なんだよ」


 「……と言いますと?」



 そう慧彼が聞くと、風月は自分の能力の説明を小声で始めた。それを聞くように慧彼は耳を澄ませて聞いた。



 「剣ってさ、速く振ったら残像ができるじゃん?」


 「うん」


 「その残像には実体がない。けど、それを物体としてこの世に残す。それと同時に、斬った時に向いてる方向に飛ばす。その斬撃は色を変えたり、飛ぶ時にラグを生じさせることができる。つまり飛ぶ瞬間を操作する。それが私の能力」


 「なるほどね。だいたいわかったよ」



 慧彼は理解した。だが慧彼は、「それがどうしたのか」と言わんばかりの考えているリアクションをしている。考えるようなジェスチャーをし、能力を説明した意味を探した。



 「……わかんない?」


 「わかんない」



 慧彼がずっと考えていたため、風月が慧彼にそう聞いた。すると、慧彼は潔く「わからない」と答えた。



 「私さっき、斬撃を具現化するって言ったじゃん?」


 「うん」


 「じゃあ、その上にも乗れるよね?」



 斬撃を具現化すると、その斬撃に触れるようになる。もちろん斬撃の上に乗ることも、斬撃を掴むことも、巨大な斬撃を作ることもできる。そして、斬撃を飛ばす瞬間を操作できるため、斬撃がそこにある間はずっと宙に浮いている状態である。だから、その上に乗ることで前方に高速で進むことができる。

 そこで疑問が生まれる。それを慧彼は気づいた。



 「じゃあさ。私たちが乗った斬撃って、飛んだ時落ちないの?」



 そう、その疑問が生まれる。それに風月は答えた。



 「落ちないよ。何故か、上に物が乗っていても関係なく飛んでいくんだよね」



 風月にも訳は分からなかった。だが、重さに制限がなく、斬撃を消滅させるまでずっと真っ直ぐ飛んでいき、その上に乗っても斬撃は落ちたりしない。ということだ。



 「なるほどね。とりあえず乗ってればいいんだ」


 「ま、そういうこと。んじゃ、行くよ」


 「りょーかーい」



 慧彼と風月は、周囲にある一番高いビルの屋上まで、重力を無視するように壁を走って登った。前傾姿勢で走るその姿は、まるで忍者のようだった。



 「あれ何!? 忍者!?」


 「すげぇ!! 忍者だ!!」



 走りながらもその声を聞いていた慧彼と風月は、そのリアクションについての会話をしていた。



 「忍者だって。私達だったら多分くノ一じゃないの?」


 「多分そうだと思うけど……、まあ服装が男っぽく見えるんじゃない?」



 黒のロングコートを着た2人の姿は、遠くから見たら男にしか見えなかった。だが、黒のショートカットにアンバーの瞳をしている慧彼と、黄のロングヘアーに翠眼の風月は、近くで見たら必ず女であると言えるだろう。もう一度言おう、2人の姿を近くで見た全員が女であると思うだろう。

 屋上についた慧彼は、一度ビルから顔を覗かせて下を見た。すごく高く、人が蟻みたいにうろうろしているのを見たのだが、慧彼は単純な感想しか述べなかった。



 「高っ……」


 「まあ、このビル高さ100m越えてるからねぇ」


 「え? マジ?」


 「多分ね」


 「多分て……、一気に信用度ゼロだよ」



 そんな会話をしながら方角を確認していた風月は、腰に刀を形成した。



 「準備完了だよ。今から飛ぶよ」


 「え? ちょっと待って」


 「待つって」



 風月は斬撃を具現化させ、それを宙に固定した。風月は早速その上に乗り、慧彼に乗るように促した。


 「ほら、早く乗って」


 「今から行くって」



 慧彼も具現化した斬撃の上に乗り、向かう準備はできた。



 「じゃ、絶対にこの斬撃から手を離しちゃダメだからね。覚えといてね。……もう一回言うよ!!」


 「言わなくていいよ!!」


 「じゃあいいや」



 そう言うと、具現化した斬撃は那覇へと一直線に進んだ。そのスピードは圧巻であり、飛行機より圧倒的に速く、空気抵抗も凄まじいものである。



 「これ、手離したら落ちるやつだ」


 「だから手離しちゃダメだよ。落ちたら那覇行くの時間かかるからね」



 そんな雑談を具現化した斬撃の上で繰り返し、18時20分、那覇周辺に具現化した斬撃は飛んでいた。



 「じゃ、もうそろそろこの斬撃消すから。着地はしっかりした方がいいよ。打ち所悪かったら死ぬから」


 「大体死なないでしょ。こんな高度だったら尚更」


 「いや、ちょっとずつ高度上げてってるからさ、今多分高度6000mとかだよ」


 「どうりで寒いわけだ」


 「ま、斬撃消すよ」


 「よろしく」



 慧彼が風月に任せるような発言をした時、風月は具現化した斬撃を消滅させた。その瞬間、体は急降下を始めた。落下スピードは時間が経てば経つ程上がっていき、すぐに時速100kmを越えた。そして、那覇郊外をめがけて降りている風月と、その少し上で風月の落下地点を見極めようとしている慧彼。

 風月が上を向き、慧彼へ喋りかけた。



 「あのサトウキビ畑周辺に着地するから。それに合わせて着地して」


 「了解」



 風月は落下地点を慧彼に伝え、再び急降下を始めた。慧彼はそれを把握したのち、再び急降下を始めた。

 慧彼と風月は、サトウキビ畑周辺のポイントへ正確に着地した。そこから那覇は少し距離はあるが、走っていけばどうにかなると思った慧彼は、風月に提案した。



 「ここからだったら走っていったらいいんじゃないの?」


 「まあ、それもそうか。そうしよう」



 風月はすんなり受け入れた。かなりの距離を走ることに賛成なのだろう。

 慧彼は、走っている間の虚無な心を埋めるために、風月にある提案をした。



 「喋りながら行く?」


 「そうしよう」



 風月は、それもまたすんなり受け入れた。数日前ではあり得ない光景だっただろう。だが、今の慧彼と風月の関係は良好である。

 2人は地面を踏み込んで、同時に蹴って走った。那覇への一本道を走る速度は凄まじいものであり、2人が走っている残像が見える程である。一歩一歩の間隔がかなり広く、ほぼ飛んでいるように走るため、2人の足音はたまに地面を蹴る時の音しか鳴らない。



 「今日の任務結構ヤバそうだよね」


 「今までの任務を知らないからわかんない」


 「というかさ、前までは任務じゃなくて仕事だったんだよね。けど、今回の任務だけはしっかり任務ってなってるんだよね」


 「今までとは違うんだ……」


 「何回も任務って言ってるってことは多分故意だからさ。なんで今回だけは違う表現の仕方なんだろうって思う」



 この会話を通して、風月は話の中にあった「任務」と「仕事」というキーワードと、マネジメントから送られてきたメールに出てきていた「緊急」というキーワードを使って、風月はある持論を作った。



 「今回の任務って緊急なんでしょ?」


 「うん」


 「緊急じゃない、いつも送られてきてるのが「仕事」、今回みたいな至急行動しなさいみたいなやつを「任務」って言うんじゃない? そういうことじゃないの?」


 「あー……、……そういうことね!!」



 頭を使って考え、理解することができた慧彼は、なるほどと言わんばかりにわかったような顔をした。



 「そろそろ着くよ」



 那覇が見えてきた。周りはもうすっかりビルだらけである。



 「一旦止まって」



 目の前に路地から1体の人造人間が現れた。その後ろから続々と、人造人間が姿を現した。慧彼のその異常な程の危機感知能力の高さに、風月は少し驚いた。



 「さて、戦闘開始だね。風月」



 慧彼の言葉と共に、風月は戦闘体勢に入った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ