24GF 地獄耳という強運
『ワシントンにて、ホワイトハウス周辺にあるロストエネルギーの源泉を封鎖せよ。これは緊急任務であり、海外で人造人間の実験を行わせないようにするための任務である。準備はワシントン支部にあるため、直ちにワシントンへ迎え』
(いつもは『仕事』なのにな……。なんで今日は『任務』なんだろ……)
空を高速で飛びながら考える霞だが、そんなことを考えている間にアメリカ本土が目の前にまで迫っていた。
(……早くない?)
霞はそう考えたが、時計を見ると日本時間で19時13分であった。結構なタイムロスだと考えた霞は、急いでワシントンへと向かった。
(ワシントン……、あそこか)
地図アプリを見て確認した霞は、周囲の地形と照らし合わせてワシントンを見つけた。ワシントンは丁度日が登り始めた位の時間であり、起きるのが早い人は活動を開始していた。
(やっぱりアメリカって日本と時差すごいな……)
ワシントン郊外に着地した霞は、思いっきり踏ん張って走った。周囲の景色は荒野からしばらく変わらなかったが、すぐに街が見えてきた。街が見えてきた霞は、両足を踏みきって前方へ飛んだ。その体勢は、走り幅跳びの空中で踠いているような体勢であり、ホワイトハウスまで一期に飛ぼうとする考えであった。
(……ホワイトハウス遠くない?)
そう、郊外からホワイトハウスまではかなり距離があった。飛んでいるだけでは時間が足りないと思った霞は、能力を使って翼を生やした。その状態で急降下し、前方へ滑空した。そうすることで勢いをつけ、スピードを出した。それはかなりのスピードを生み、更に羽ばたくことでスピードと高度を上げていった。
(……あれか?)
誰がどう見ても「白い」と言われるような建物があった。敷地は広い、周りにはたくさんの木々が、そして噴水まである。ホワイトハウス以外の何物でもない建物を霞は見つけた。
その周辺に着地した霞は、ホワイトハウスを見た。美しいと思っただろう。すごいと思っただろう。だが、霞は口に出すことはなかった。その代わりに出た言葉があった。それは……。
「……任務送るの絶対に適当でしょ」
霞は雑用ではない、と思っている。だが、断罪者と言えど世界を裏で監視するマネジメントの構成員である上、必ず雑用はしなければならない。今回がその例である。「ロストエネルギーの源泉から溢れているロストエネルギーを封鎖する」という簡単な仕事は現地の構成員でもできるであろうと思った霞であったが、とりあえず現地にいる構成員の元へ向かうことにした。
「あー……、なんでこんなことしてるんだろ……」
霞は時々、何かに対して必ず愚痴を吐くのだ。その対象となるものに制限はなく、人、物、現象、環境、その他諸々全てのことがらに関して愚痴を吐いてしまう。それが何故かわからない。
現地の構成員と合流した霞は、ロストエネルギーの源泉から溢れているロストエネルギーを封じる専用の道具を手に取った。この仕事は何回もやっているためやり方がわかるのだが、非常に手順が多くてめんどくさいのだ。
(早く終わらせないとな……。合流できないからなぁ……)
その手順を一つ一つ丁寧に速くこなしていき、全ての手順を完了したのだが、終わったときにはもう日本時間では19時30分になっていた。
(タイムオーバーか……)
「Good bye」
霞はそう軽く別れを告げて、日本に高速で戻った。
(目的地は仙台駅か……。もう間に合うことはないけど、せめて間に合うように……)
そして、日本のEEZ(排他的経済水域)に入った時、自然の波の流れとは違う、微かな波に気づいた霞は、その先にあるある島へと向かった。
(この先って……、……まさか?)
霞は急いで向かった。そしてその島から半径1km内に入った時、霞は音が聞こえた。
(戦闘音?)
霞はその音の元へ急行した。そこには……、
盾羽がいた。その周辺には大量の人造人間。囲まれているような様子だったため、能力で形成した銃を大量に作って宙に浮かせ、一気に放った。
霞はその島へ着陸し、盾羽にどういう状況なのかを聞いた。
「これってどういう状況?」
盾羽は、霞が何故ここにいるのかと驚いたような顔をして返答をした。
「え? なんでここにいるんですか?」
「いや、戦闘音が聞こえたから」
「耳いいんですね」
「まあね」
「まあそんな戯れ言ははいいんです。この人造人間達をどうにか一掃できませんかね……。私の能力ではどうにも限界がありまして……」
霞は何かを思い付いた。
「なるほどね。とりあえず任せて」




