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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第2章 過去という信念
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21GF 苦難という結果



 慧彼達は外にいた。



 「ん?」



 翌日の18時、風月以外の全員にメールが来た。



 「何のメール?」



 風月がそう問うと、慧彼達はメール内容を確認しあった。



 「風月……、最悪の状況になった」



 霞がそう言うと、風月は理解した。



 「……仕事?」


 「そういうこと」


 「しかもね、仙台から一番遠いところの仕事に当たった慧彼に「風月も連れていくように」っていう一言も添えられてる」



 霞がそう伝えると、風月は何か悟ったかのように呟いた。



 「まさか……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 慧彼達に連絡が行く少し前、雷風は歩きながらスマホを触っていた。そのスマホの画面は、電話をする直前であった。



 「さて、もうそろそろ仙台駅か」



 雷風もまた、何かを悟ったかのように電話をかけた。






 〔何のようだ。暗殺者〕





 「堅苦しいぜジジイ」





 〔煽ってんのか?〕





 「煽ってねぇよ」





 〔それで? 何の用件で電話をかけた?〕





 「もうそろそろあいつらが仙台に来る頃だろう。だからあいつらに仕事を与えろ。全員の仕事場所は別々。それも緊急で」





 〔邪魔されたくないのか?〕





 「そういうことだ」





 〔追加の条件は?〕





 「俺の姉さんがいるはずだ。姉さんを慧彼と同行させろ。別に仕事の場所とは関連性を持たせなくていい」





 〔了承した。今から送る〕





 「任せたぞ」






 雷風は電話を切った。その瞬間、安堵したかのように下を向き、コートのポケットにスマホを入れた。そして左足を後ろに下げて前傾姿勢を作り、地面を強く蹴って走った。その時、仙台まで50kmとなっていた。



 「19時30分だ」



 雷風は走っている中でそう言った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「それでさ、どこに行くとか書かれてるの?」



 風月がそう聞くと、慧彼から場所を言い始めた。



 「那覇だね」



 盾羽が言った。



 「南鳥島で政府の仕事です」



 霞も言った。



 「ワシントンで仕事」



 その瞬間、風月は反応してしまった。



 「遠くない?」


 「私だけ異次元に遠いよね」


 「早く行ってこれば?」



 慧彼がそう提案すると、霞は前傾姿勢を作った。



 「そうするよ」



 霞がそう言うと、空気中の水分を使って翼を形成した。コンクリートの道路を踏み込んで、翼を羽ばたかせ、ものすごい速度でアメリカへと飛んだ。



 「私も言う流れなの? これって」



 白夜だけはまだ言っていなかった。



 「忘れてた」


 「酷っ」


 「ごめんごめん。それでどこ?」


 「根室」



 そう、白夜は仙台から一番近い場所であった。



 「じゃあ白夜。できるだけ速く仕事を終わらせれることってできる?」


 「うん。殲滅系の仕事だから」



 そう言うと突然、白夜は宙に浮いた。そしてある程度宙に浮き、一気に根室へと向かった。



 「では、各自行きましょう」



 盾羽の提案で慧彼と風月は那覇へ、盾羽は南鳥島へ向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 19時、雷風は仙台駅周辺にいた。



 (決行まであと30分か……。この周辺でも見て回るか)



 仙台駅周辺にあるとあるビルの屋上に立っていた。そこからは、仙台駅周辺を一望することができ、誰がどのように動いているのかが一目見てわかる。

 雷風は、コンビニに売っているおにぎりを食べながら仙台駅周辺を見ていた。



 (今のところ人造人間の気配は無し。じゃあビルドはどうやってここに守っているんだ?)



 通行人の中に人造人間と思われる者は1人もいなかった。他の研究施設などであれば、建物周辺で人造人間が巡回しているのだが、今回に限っては人造人間が誰もいない。今から家に帰るのか、仙台駅で降りて家に帰っていく人々で溢れている。

 数分が経った時だった。仕事終わりのような人達が駅から出てきた。そして仙台駅からその人達が出ていくと、仙台駅周辺は無音に包まれた。パトカーや救急車のサイレンも鳴らず、ただ無音だった。上から見ていた雷風は、「なぜそこにいるのか」、「ここで何をしているのか」という虚無感に襲われていた。



 (何かの能力か?)



 虚無感から解放された雷風は、さっきの虚無感に襲われた現象を能力の影響だと考察した。



 (じゃあ中に入るのは危険か……)



 そう思い、雷風は神経を集中させた。それは、どこに能力を発動させた人造人間がいるのかを探るためだった。



 (……そこか)



 雷風は少し動いた音に気付き、助走をつけて少し離れたビルへと跳んだ。滞空している間にアトミックアニーを取り出し、最低火力でその人造人間の眉間を撃ち抜いた。

 そのビルに着地した雷風は、アトミックアニーをしまった。そしてスマホを取り出し、今の時間を確認する。



 (あと3分か。実行するには少し早いか……)



 雷風は無音で包まれている仙台駅周辺を監視していた。服装は黒のロングコートに黒のネックウォーマー、黒の特注手袋。普通なら不審者と言われる服装である。



 (決行の時が来たか……。)



 雷風は心の中で呟くと、心の奥底にしまっていた憎悪が体の表面にまで出ていた。漆黒のオーラに包まれているような。復讐が終わるまで止まらないマシーンのような。そのようなものでは表現しきれない程の憎悪が溢れていた。



 「姉さんをあそこまで潰した罪。壊滅では償えないぞ……」



 雷風はビルから飛び降り、道路に綺麗に着地した。そして刀を抜き、仙台駅の入り口へと一気に走った。



 「侵入者だ!!」



 中には待ち伏せていた大量の人造人間がいた。だが、雷風に数で勝つことはできなかった。人造人間の間を縫うように進み、進んだ道の周辺にいた人造人間を、その刹那の時の中で切り裂いた。



 「来いよ、雑魚共が」



 雷風がそう言うと、周りにいた人造人間が雷風に襲いかかった。その時、仙台駅の上空から謎の爆音が、少し前まで静寂に包まれていた仙台駅周辺に鳴り響いた。その音は仙台駅にどんどん近づいていき、仙台駅の中を破壊した。



 (なんだ?)



 そこにいた全員がその爆音の中心にいた者を見た。それは……。



 「間に合った……」



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