206GF 覚醒のための条件
「寄りたい場所って……」
2人が目の前にしているのは、パリの街の一角。雷風は、今まで見たことはあるが自分がこの場に立つとは思いもしなかったため、少々混乱している。荘厳な雰囲気というのか、独特な雰囲気を纏っているその場所は、心に大きなダメージを負わせる。
「どうしたの?」
「いや、どうしたって……」
横を見ると、楓はこちらを見てニヤニヤとずっと笑っている。どうやら、ここには逃げ場はないようだ。楓(マルクト洗脳状態)との戦闘時より、雷風は緊張していた。比べ物にならないほど、雷風の心拍数は跳ね上がっていた。
雷風は深呼吸して心を落ち着かせると、楓の心拍も上がっていることに気づいた。
「緊張してるのか?」
「え、え? そんなことないけど?」
雷風は楓の手をそっと両手で握り返すと、楓は目をじっと見る。その目はさっきまで真剣な眼差しをしていたが、今となっては完全に乙女な、男を殺しにくるような優しい瞳だった。
「大丈夫。緊張してる同士だから」
「けど……」
「何事も完璧にしようとしなくていい。手探りでいいから」
「……経験済み?」
「いや、俺も初めて。程遠い世界だと思ってたから」
「そ、そう……?」
「嘘なんかつかねぇよ」
そう言うと、2人は大きく桃色で「HOTEL」と書かれた大きな建物へ入っていった。
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翌朝、慧彼達は何事もなく過ごしていると、会議室に2人が帰ってきた。
「お? 帰ってきた」
慧彼は2人が帰ってきたことに気づくと、続いて全員が2人の方を見る。そこには、グテっとした雷風と満身創痍ながらずっと笑みを絶やさず、雷風にくっつきまくっている楓の姿があった。
「えーと、何があったn……。ちょっと、何するの?」
聞こうとする白夜の口を塞ぐ風月。その意味が何となくわかっている皆(ポルトスを除く)は、白夜に目配せをする。白夜はなんとなく聞いてはいけないのだと理解するが、ポルトスは全くわかろうとはしなかった。
「何してたんすか」
「聞くな……」
雷風はそう言うと、声の力のなさにポルトスは寒気を覚える。
「雷風、今日もいい?」
「嘘だろお前……」
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夜、体力が回復した雷風は、楓の体を使って検査をしていた。
「もし、あの資料に書かれていることが本当なら……」
「あの資料……?」
「ああ。楓がドイツの資料室で得た資料に書かれてたやつ」
何を検査しているのかあまりわかっていない楓だが、雷風の反応的にいいことなのだろうとプラスに考える。すると、雷風はあるものを発見する。
「共鳴数値が同調してる……。これが覚醒への兆候だって言いたいのか……?」
覚醒という言葉を聞いた瞬間、楓はあることを思い出す。
「あ! あの時に見たやつ……?」
「そのやつだな」
雷風は検査のために楓につけていた針を抜くと、楓は瞬間に再生して思いっきり抱きつく。
「じゃ、昨日の続きということで」
「あー、そういうことなんだった……」
雷風は楓に長時間の検査をさせる代わりに、昨日の続きをさせてあげるという契約を結んでいた。それをしっかりと覚えていた楓は、一気に口角を上げて雷風と視線の高さが合うように足でも体を掴む。
「じゃ、しよっか」
「……昨日で慣れた。今日は俺の番だな」




