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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第7章 三正面作戦
203/206

203GF 大和と武蔵



 深夜、皆が寝静まった頃。

 作業室から、ひとつの機械音が聞こえてくる。そして、2つの異なる声が、機械音にかき消されながらも聞こえる。



 「フェイルチーター同性反応、感知完了。2つ目のフェイルチーターの複製、完了。楓、そっちは?」


 「ラーシエン増幅装置設定段階、82%。アクセルモード設定段階は通過してるよ」


 「了解。後は自主形態変化と異種完全同機項目だけか」


 「そうだね。自主形態変化に関してはもう進んでるし、後は異種完全同機だけ」



 情報共有をしながら、あるものを作っている。ひとつひとつに繊細な作業が求められ、ミスなどは一切許されない。

 そんな中、楓はあることを聞く。



 「今ってさ、何を作ってるの?」


 「これか? 楓が一昨日に使ってた武蔵の最終調整だな」


 「最終調整?」


 「そう。一昨日使わせた状態は、簡単に言うとまだ試作段階。ロストエネルギーとブレイクエナジーの反応が促進されてなかったり、最適効率化がまだ全然できてなかった」


 「最適効率化?」


 「ロストエネルギーが最小限で使えるようにする装置だな。クソちっちぇけど大事な部分ではある。なんせ、これがないと、莫大な量のロストエネルギーを流し込まないと、フェイルチーターの能力が使えない」


 「電気伝導率みたいなやつ?」


 「そうだな。伝導率を最大限に高めてるってだけの装置だ」


 「結構大事じゃん」


 「だから大事って言ったろ」



 すると、楓は立ち上がり、既に完成している大和を持つ。



 「これはもう完成してるんでしょ?」


 「そうだな。まあ、完全同機以外はだがな」


 「雷風がそこまで入れたがった完全同機、どのほどのものなのか見てみたいけどね」


 「まあ、使える時にならない限りは見れねぇよ。そんな頻繁に使うものでもないしな」


 「……じゃあ、何か大きなデメリットとかもあるの?」


 「まあ、憶測だがある。使用者の(コア)に大きな負担を与え、大和と武蔵の大部分がお釈迦になる。……2つ目は修復したらいつでも復活できるけどな」


 「……これを2回することになるんでしょ?」


 「……ん? そうだが?」


 「もう5時間は経ってるけど……、それでも屁でもないみたいな感じ取るつもり?」


 「屁でもねぇよ。元々、真祖として半永久的に生きることができる身だ」


 「……それもそうか」



 楓は最初、2つ目のデメリットに注目したが、よくよく考えてみると、「1つ目のデメリットの方が注視しなければいけないのでは?」となった。



 「……ん? 1つ目のデメリットってなんて言ったっけ」


 「あー、使用者の(コア)に大きな負担を与えるってやつな」


 「……その方がやばくない?」


 「だから頻繁には使えないって言ったんだよ」


 「なーるほどね。じゃあ完全同機に関してはほとんど未使用で終わる可能性が高いわけね」


 「そういうことだな」



 楓は作業室の1番大きなモニターを見る。そこには大量のタブと、タブごとにチェックリストがこと細かく書かれている。その大半には既にチェックマークが付いており、付いていない箇所は10箇所と、朝までには終わりそうな雰囲気だった。

 フェイルチーターの複製が終わった雷風は、それを直接武蔵に取り付ける作業をしていた。



 「……楓。今日、フランスとドイツ回ろう」


 「……いいよ」



――――――――――――――――――――



 A.M.7:00。慧彼はアラームの音で起きる。



 「……あ、もうこんな時間?」



 慧彼は夢遊病のため、ベットの上で寝ていたはずが、起きたら既に部屋の壁に逆立ちをしている。その状況にももう慣れたのか、何も驚くことなく時計を確認する。

 慧彼は部屋についている洗面台で顔を洗い、歯を磨くと、会議室に行く。



 「おはよー」



 慧彼が力なくそう言うと、既に雷風と楓を除く全員がいた。



 「あれ? 雷風と楓は?」



 すると、慧彼の発言を一番近くで聞いていた白夜は、「さぁ?」と言わんばかりのボディランゲージを披露する。



 「まあ、あの2人だからそんなにやばいことはしないだろうけど……」



 すると、その会話をうっすらと見ていた風月は言う。



 「あ、あの2人ならデートに行ったよ」


 「……デート?」


 「うん。なんかフランスとドイツを周ってくるって」



 慧彼は風月からの発言を聞いて、開いた口が塞がらなかった。理由は明白であろう。



 「雷風が、……デート?」



 慧彼の中で、雷風は無情の人間だと思っていた。それ故、雷風は命を簡単に奪う決断をも厭わないのだと、そう思っていた。が、現実は違かった。愛人のためなら、デートはするのだと。



 「え、冗談でしょ?」


 「慧彼ちゃんは雷風をどういう人だと思ってたの?」


 「無情、非情、無心の人」


 「まあ、あながち間違ってはないか」



 風月はひとつ間を置くと、慧彼に話し始める。



 「あの子ね、子どもの頃はちゃんと感情を顔で表現する人だったの。けど、断罪者になってからなのかなぁ? 全てを悟ったみたいに無心になったの。だから、慧彼ちゃん達が助けてきてくれた時もビックリしたし」


 「……イメージと違うでしょ?」



 風月は慧彼に聞く。



 「うん。何考えてるか全くわからないし、大胆なことするし、無茶なこともするし。よくわからなかった」


 「慧彼ちゃん始め、みんなに知っていてほしいことなんだけど、心の奥底ではちゃんと人のことを考えれる人なのよ、あの子。だから、誤解はしないでほしい」



 そんな中、白夜は風月に聞く。



 「けど、雷風ってたまにえげつないこと言うけどね」



 そんな空気をぶち壊す質問に、風月はぶち壊した空気を保ちながら返す。



 「それは普通にあなた達をいじめてるだけだよ」


 「クズじゃん」


 「あの子はクズだよ」


 「認めんなよ」


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