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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
194/206

194GF マジノ線攻防戦 その15



 カールスルーエ近郊に着いた雷風、霞、ティファレトの3人は、1つ違和感がありながらも楓の元へ向かう。



 「これで全員……。ではないな」



 雷風が感じた違和感の正体。それは白夜の姿がないこと。そして上から見た時に未だ1ヶ所、火花が散っていたこと。「まさかな」とは思っていたが、低い可能性であると思っていた。が、それが現実となっているため、雷風は頭を掻きながら大和に左手を添える。



 「楓、もうちょっと待っといて」


 「わかった」



 楓はすぐに了承してくれたため、雷風はまだ戦っているであろう白夜の元へ、アクセルモードの状態で向かった。



 「大和、駆動」



 しばらく探していると、白夜とホドがとてつもない速さで戦っているところを見つけた。地面に叩きつけられたホドの(コア)に向けて、白夜がアトミックアニーで突きを放とうとしている。



 (まずいな)



 雷風はアトミックアニーの先端がホドの(コア)に触れる前にアナイアレーション状態となり、白夜とホドの距離を離すために、白夜の首根っこを掴んで放り投げた。

 アナイアレーション状態を解除すると、白夜とホドは急に目の前に現れた雷風に一瞬驚きを隠せなかった。



 「え? 雷風?」


 「こいつが真祖か……。面白そうだな」



 ホドはこれから雷風と戦うのかと思うと、楽しみで仕方がなかった。が、当の本人にはその気はない。「面白そうとは?」とも思っている始末。



 「白夜と、特にお前。とりあえずこの戦いは終わりだ」



 すると、2人は同じタイミングでリアクションする。



 「は?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 こうして全員を集めることができた雷風は、現状の説明を始める。



 「この戦いが起きている背景で、イギリス軍、イタリア軍、ロシア軍がドイツのベルリンに向けて進軍していることがわかった。しかも同時にだ」


 「用済みって訳か……」



 マルクトは雷風の言葉を聞き、薄々事態を察した。だが、1つ引っかかる点がある。



 「何故それを俺たちに伝えた? そのまま放置していれば勝手に俺達が負けていたんだぞ?」



 マルクトの言うことはごもっともである。本拠地を開けている今、そのまま時間を稼いで叩き潰してもらったら勢力が1つ減るチャンスであった。もちろん、雷風もその考えには至った。普通であればここで時間を稼ぐだろうと。



 「理由か……。強いて言うなら、『イギリスのやり方が気に食わなかった』」


 「なるほど。バカな男だ」



 マルクトは、雷風が次に何を言おうとしているのかだいたいわかった。



 「だからベルリンでそいつら全部潰す。と言いたいんだろう? だが、それはよせ」


 「ほう?」



 雷風は考えを見透かされたことで少し驚いたが、ひとまずマルクトの考えを聞くことにした。



 「確かにお前らと戦った方が俺達的には楽だ。真祖も真祖の姫もいる。確かに太刀打ちできそうだ。だが、俺たちとお前達は敵対していた身。そう簡単に協力させてたまるか」


 「プライドか?」


 「ああ」



 すると、雷風はマルクトの肩を2度叩きながら、敵ながら励ましの言葉を送る。



 「肩の力くらい抜けよ。奴の石を無理して継ぐ必要はない」


 「そうかよ」



 マルクトは指を鳴らすと、セフィロトが全員マルクトの方を向く。



 「一旦ベルリンに戻る。ベルリンに戻ったら全員、すぐに総戦力を上げて防衛しろ。いいな?」


 「了解」



 マルクトを除くセフィロトが返事をすると、残ったドイツ軍は全てベルリンに帰った。それを見ていた者の内、この状況を理解できた者と理解できていない者に分けることができた。



 「俺達もパリに帰ろう。まずは現状の共有をする」



 雷風達はダルタニャンのいるパリのフランス軍最高司令本部へと帰った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「さて、今の状況を説明する」



 ダルタニャン含め、現状がどうなっているのかは雷風くらいしか正確にわかっていない。その上で今までの情報と照らし合わせて、全員での情報共有を行う。



 「まず、ドイツとイギリスは同盟を組んでいたが、イギリスがドイツに不平等条約のような感じで同盟を組んでいた」


 「……主従関係ってこと?」



 慧彼は雷風の言ったことを、簡潔にまとめた。雷風は慧彼のまとめたことが正しかったため、正直に正しいと伝える。



 「そういうことだ。その上で、イギリスはイタリアとロシアと三国同盟を結んでいた。今回は平等な同盟だ。こっちは協力関係的な意味合いが強い」


 「でもさ、ドイツもそこそこ強いんだからさ、不平等なことくらい指摘できるんじゃないの?」



 白夜は雷風に質問する。



 「そう。いいところに気づいたな。確かにドイツのセフィロトは強い。けど、めちゃくちゃ強いかって言われるとそこまででもない。覚醒コマンドを使わなければな。これに関しては雫が一番わかるだろ」


 「まあね……」



 不服そうな雫。だが、関係なく話は進行する。



 「そして、あの戦いには不自然な点が2つある」



 不自然な点。全員は一斉に不自然だった点を思い浮かべる。まず、一番最初に思い浮かべることができたのは。



 「なんか、いつもに増して雑魚兵やら偵察兵が多かったよね」



 先に前線に出ていた慧彼は答えると、白夜はボーッとしていながらも慧彼の回答に首を縦に振って賛同する。



 「セフィロトが全員あの戦いにいたとかか?」



 アトスはいつもと違ったいちばん大きな点を挙げる。



 「……全戦力があの戦いに揃っていた?」


 (あの人造人間……、いつもあるドイツ製がなかった……?)



 口元に手を置きながら慧彼とアトスの意見をまとめて呟く盾羽に、アラミスはさらに別角度で戦いでの問題を推察する。



 「1つ目の問題は、あの戦いにドイツ軍の全戦力がいたこと。盾羽が呟いた通りだな。あそこにセフィロトが全員揃うってことは、首都ベルリンには少なくとも、セフィロトが1人も居ないということになる」


 「じゃあ、ベルリンがガラ空きになるんじゃ?」



 風月は雷風に完璧な誘導を行うように聞く。



 「それがイギリスの狙いなんだろう。まず、ドイツ自体頭が悪いわけじゃない。というか、俺達とは違って本格的に戦争を経験してる『軍』なんだから、戦略面に関しては俺達より数段上。あ、ダルタニャン達は別な」


 「……じゃあさ、この状況ってもっとおかしくなるんじゃ? 本拠地守るなんて私達でもわかるけ、ど……」



 霞は雷風の発言に対して疑問を抱いたが、今までのことを振り返っているとひとつの結論に辿り着く。それに気づいた霞は目を見開き、雷風と目を合わせる。雷風は気づいたであろう霞に対して首を縦に振り、話を再開する。



 「そう。そこで生まれる疑問がさっき説明した通り、『本拠地である首都ベルリンが空白地帯になること』だ。だが、これについては説明がつく。それがさっき説明した、『不平等な同盟、所謂主従関係』だな」


 「イギリスはドイツに、ベルリンを空白地帯にすることを命令させたってことですね」



 アラミスは1つ目の問題の重要ポイントを抑える。それについて全員が納得したような雰囲気を出すため、雷風は2つ目の問題を挙げる。



 「2つ目の問題は、あそこにいた人造人間が全てイギリス製の人造人間であったという点だ。これに関しては霞の方が詳しいかもしれない。言ってくれ」



 雷風から直接指名が入った霞は、唐突だったため少し驚きながらも立ち上がり、2つ目の問題についての解説を始める。



 「イギリス製の人造人間は、全ての人造人間の基本となった標本に、イギリスの首相であるオリバー・クロムウェルが自動操作プログラムを組み込んだ人造人間のこと。簡単に言えば、イギリスの都合のいい様に動く可能性がある、ドイツにとって危険な人造人間ってこと」


 「前線に出せば、私達と戦うことがイギリスにとって最も都合のいい結果になるからってこと……?」



 慧彼は霞に質問すると、霞はテンションを上げながら答える。



 「そういうことっ!!」



 癖のある答え方をするが、霞はこのテンションを維持して解説を続ける。



 「ドイツ製の人造人間をベルリンに置いておくことでっ、少しでも襲撃が起きた際の防衛ができるってことっ。Do you understand?」


 「ウザッ」



 横で見上げていた風月は、霞の妙に発音が綺麗な英文に思わずツッコミを入れる。



 「霞、座っていいぞ」


 「了解」



 雷風の言葉を聞いた瞬間にテンションを元に戻し、座って話を聞く体制に入った霞に、その全てを真横で見ていた風月はため息をつく。



 (相変わらず……、霞って変……)


 「霞の説明の通り、恐らくだがドイツはベルリンに少量の兵を残していたんだろう。いつ何かがあった時の対処のためだろう」



 霞の解説に補足を入れる雷風は、そのまま話を続ける。



 「そこで、俺達が観測したイギリス、イタリア、ロシアの同時侵攻と繋がる」



 すると、これまでずっと黙っていたポルトスが何かに気づいたのか、雷風に聞く。



 「なあ。今ドイツってどうなってるんだ?」


 「そう言えばそうか……。もうイギリス軍が着いててもおかしくないのか……」



 そこにいた全員が、ドイツの現状について気になっていた。



 「といっても、確認する手段はここにないもんな」



 気になるが、ドイツの現状を確認する手段は存在しない。そのため、ただここで待つしかなかった。……そんなことで諦める彼らではなかった。



 「……じゃあカメラ持たせて中継してもらうか。行く人ー」



 ダルタニャンは凶行に走る。が、それを止めようとする者はいない。



 「……私行こうか?」



 手を挙げたのは、同じくずっと黙っていた楓。他に行きたい者はいない模様だ。これぞまさに現代社会である。



 「じゃあ楓、これ持って行ってきてくれ」


 「わかった」



 雷風は後ろにあった機材置き場の中から小型中継カメラを1つ取り、楓に渡す。楓はドイツで中継が開始されないか不安だったため、この場で中継を開始してから向かった。



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