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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第2章 過去という信念
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19GF 純愛という歪み



 『ロストエネルギーとは、地球の(コア)にある無限生成されている物体。質量を持っており、電気のような物だが、威力が桁違いに高いのが電気と違う部分だ。それに、有害物質を消滅させるという特徴を持つ。ロストエネルギーを体内に注ぎ込むことで生成されるのが人造人間である。

 人造人間とは、人体にロストエネルギーを注ぎ込むことで生成される、人体を元に作った新たな生命体。呼吸を必要とせず、ロストエネルギーが体内に循環することで体の中に入る有害物質を消滅させる。

 人造人間を生成する方法だが、主に2つの方法がある。

 1、より強い人造人間を生成する場合、人造人間製造機に人間を入れる。そこに能力の元となる物体を入れる。そして、人間にロストエネルギーを350GF以上入れることで生成される方法。

 2、量産型の人造人間を場合、作りたい人造人間の型を人造人間製造機に入れ、その中にロストエネルギーを350GF以上360GFまで入れることで生成される方法。

 人造人間はロストエネルギーが275GF以上あると、体内で必要量を無限生成するため、人造人間はほぼ無限に能力を使用することができる。そして、2の場合で生成した人造人間は、時間はかかるものの(コア)以外は再生することができる。

 人造人間の体は強制的に成長させるため、体内年齢は20歳で止まる。そのため、飲酒も喫煙も許される』



 (なるほど……。そういうことか)



 霞は、その情報をUSBメモリに移した。そして研究施設を出た。出る際には各地に時限爆弾を設置した。



 (研究施設の「完全壊滅」だからな……)



 霞は歩道を歩きながら、時限爆弾の強制爆破スイッチを押した。すると、街中に爆破音が鳴り響き、周囲の建物は姿を消した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「そういうことだ。私は当時解明されている情報は知っている。私が人造人間だってことも理解している」


 「そう……、だね……」



 風月は霞に深く礼をした。



 「あの人の……、敵討ちをありがとう……」


 「褒められることをしたつもりはない」



 風月は膝から崩れ落ちた。その状態のまま、霞に問いかけた。



 「……1ついい?」


 「ああ、いいぞ」


 「あなたはなんでそれ程に無慈悲でいられるの?」


 「無慈悲……、か……。誰かに愛を持ったことはないからな……。だが罪悪感は持ったことはある。人造人間にだって善の心はある。誰かのために戦おうとする人造人間もいる。だが、それを制御されて操られ、殺されてしまう人造人間もいる。そんな人造人間を殺してきたのが私だ。その度に私は罪悪感に縛られてきた」



 霞はタバコを吸い、口から煙を吐いた。



 「私はその罪悪感を何度も取っ払っている。だからこうして普通に話せたりしている。だが、私も心は弱い。だから、10年以上その罪悪感や不満を溜め続けていた雷風は本当にすごいと思っている。今の雷風は罪悪感や不満を復讐っていう形で爆発しているだけだ」



 霞は風月の方を向いて言った。



 「どこに行っているのかわかるんだったら行けばいい。その時は慰めてやれ。雷風を泣かせてやれ。それを唯一できるのはお前だけだからな。風月」



 霞は、膝から崩れ落ちた風月の頭を撫でた。その時、風月は泣いて霞に抱きついた。



 「ありがとう……。霞……」


 「ああ。どういたしまして」



 霞はタバコの火を消し、灰皿においた。そして、風月が抱きついているため、霞は風月を抱っこしながらリビングに入った。



 「風月は泣いてるよ」


 「そうですか」



 盾羽がそう言うと、霞は盾羽に聞いた。



 「昨日大量に買った酒って冷蔵庫にあるか?」


 「缶ビールならありますけど……」


 「じゃあそれ全部ここに置いてくれ」


 「え……、わかりました」



 盾羽は冷蔵庫にある缶ビールを全てリビングにある机に置いた。



 「盾羽、話を聞いてくれ」


 「はい……」


 「というか慧彼と白夜はどこだ?」


 「自分の部屋で寝ました」


 「わかった」



 霞は缶ビールを開け、飲み干して言った。



 「風月。こいつはただ、雷風への愛が重すぎるだけだ」


 「愛が……、重い……」


 「そのために雷風のことを最優先してしまう。ただそれだけなんだろうな。だからあんな行動にまで走ってしまう。雷風の言ったこと、やったこと、これからすることを全て許してしまうんだろうな」


 「愛が重いが故の行動の果てなんですね……」


 「愛が重いのは何も悪いことじゃない。それで周りに影響を与えてはいけないこともない。逆に与えないのがおかしいんだ。だが、それで周囲にまで影響を与えすぎてはいけない。それだけは覚えておけよ、風月。それで不信感を抱いて、愛する人すらも離れていっては意味がないだろ?」


 「う、うん……」



 精神が壊れかけな風月の回答は、単純なものだった。だが、それが今の精一杯の回答だったのだ。それに気づいた盾羽は、風月に近づいて正座をし、頭を撫でた。



 「別に悪いことではありませんよ。雷風君を愛しているっていう気持ちは伝わってきます。ですが、雷風君のために動きたいのなら、その真意をしっかりと考えて動かなければいけませんよ。もし、あの行動が雷風君のためになると思っているなら間違っていると私は思います」


 「……え?」



 風月は盾羽の方を向いた。その顔は、目の回りが赤く、涙目で、いかにも泣きそうな顔だった。



 「風月さん。とりあえず雷風君のことを考えることは今はやめましょう」


 「うん……」


 「考えるのをやめたら、次に何を考えたらいいと思いますか?」


 「……」



 風月は考えた。



 「わからない……」


 「そうですか……。ではこう考えてください。慧彼さんと白夜さんがどうしてあれほど怒ったような、怖い顔で風月さんに質問していたかを」


 「わかった……」


 「とりあえずわかるまで考えておいてください。私から話すことは以上です」


 「ここには残ってくれるのか?」



 霞は盾羽に聞いた。



 「まあ、部屋に戻っても暇なので」


 「その言葉を信じてたよ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 雷風が仙台駅に着くまで残り129時間58分37秒



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