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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
187/206

187GF マジノ線攻防戦 その8



 マジノ線攻防戦が始まった時、雷風と楓はダルタニャンと共に、能力で見た内容について考えていた。



 「もしフランスを狙うとして、最悪俺達でドイツ、イギリス、イタリア、ロシアの軍をまとめてぶっ潰せるんだよな……?」


 「ま、まあな。パリは全部ぶっ壊れて荒廃することにはなるが」



 雷風はわざわざ時間差でフランスを狙う意味があるのかと思った。現に、イギリス、イタリア、ロシアはフランスに攻め入ってこない。ドイツ軍だけが午後9時丁度に戦闘を開始できるようにマジノ線付近で待機していた。



 「ドイツ軍の戦闘に便乗した。っていう考えはない?」



 楓はこの時間差での侵攻を、最初から計画されていたものではなく、後から便乗して計画されていたものだと考えた。すると、1つの事実が浮上する。



 「便乗したって考えると、三国が同時に戦闘に介入するって考えづらくない?」


 「まあな……。絶対って訳ではないが……」



 ダルタニャンは何かあるかと考えていると、横から急に大きな声が出てくる。



 「……そういうことか!」



 雷風は何かに気づいたらしく、すぐに考えをまとめて話す。



 「まず、イギリス、イタリア、ロシアは最初から便乗して戦うことを計画していた。それはどの戦いでもいい。とりあえず、次に行われるフランスとドイツの戦いに関与するつもりで、たまたまそれが全軍が衝突するマジノ線攻防戦だった」


 「待って。それだったら都合が良すぎる」



 雷風の仮説に異議を唱えたのは楓。楓は雷風の仮説に自分の意見を付け加えた上で話す。



 「ドイツはイギリスと繋がってる。上下関係はめちゃくちゃあるけどね。多分、イギリスがドイツに全軍を使って大規模な侵略作戦を行えって命令したんだと思う。ドイツには条約で無視できない形になってる。もし無視したら、イギリスが全力で報復攻撃を行うからね」



 ドイツとイギリスは軍事同盟のような条約を結んでおり、イギリスの命令にドイツは従わなければならないという不平等条約である。その権限を行使したのではないかと楓は語る。



 「じゃあ、セフィロトを全部使って進軍することをダルタニャンは能力で知って、フランスにも多くの戦力を使わせる。そして勝った方に便乗して、更に自分たちの手柄にするってことか」


 「めちゃくちゃタチ悪いな……」



 ダルタニャンはイギリス、イタリア、ロシアの目論見をどうにか止めたいと思った。それは雷風と楓も同じであり、3人の意見は一致した。声に出さなくてもそれは顔と雰囲気でわかる。



 「俺と楓でマジノ線まで行ってくる。多分、俺達が行くくらいじゃフランスには手を出さないはずだ」


 「もし出したらこっちから連絡する。霞には感謝しないとな」


 「あいつの隠しカメラを仕掛ける技術には驚かされる……」



 ダルタニャンの手元には、ウェストミンスター宮殿地下室の映像が映し出されたタブレット端末がある。何故それがあるのかを知るためには、ロンドン偵察作戦まで遡る必要がある。霞は隠れて隠しカメラを仕掛けており、その映像が映し出されており、ダルタニャンはそれを頼りに無線でいつでも連絡するように約束した。

 雷風と楓はダルタニャンにその大きな仕事を任せ、マジノ線へ向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「忠告する。今すぐドイツに戻れ」



 土埃が晴れ、ポルトスは姿を見た瞬間に目を見開いて体を1番小さい2mの大きさにする。対してケセドとイェソドは姿が見えても、誰が落ちてきたのかよくわかっていない。その者は忠告と言っていたため、敵であると考えた。



 (なんなんだ……?)



 ケセドとイェソドは戦闘体制に入ると、クレーターを作った張本人はその場から姿を消す。



 「諦めろ。覚醒コマンドを使ったところで勝てん」



 ケセドとイェソドの間にその者は既に立っており、右に立っていたケセドは手で(コア)のある心臓部分を、左に立っていたイェソドは機械色が強い刀で(コア)のある心臓部分を抑えられており、いつでも殺すことができると、声を出さずに理解させられる。



 「雷風。なんでこっちに来た?」



 全身真っ黒な上に誰も追うことができない、圧倒的な速度での身のこなし。ポルトスはその動きで正体が雷風だと確証にまで至り、元々の手筈と異なっていることを疑問に思った。すると、雷風はパリでの考察を話し始めた。



 「後でまた話すことにはなるんだが、お前がわかるくらい簡潔に言うと、イギリスとイタリア、ロシアの3ヵ国が全勢力を用てドイツ、ベルリンに奇襲する。それをどうにか阻止したいから、この戦いを止めに来た」



 ポルトスに向けて言った台詞は、真横にいるためもちろんケセドとイェソドにも聞こえている。雷風が言ったその台詞は本当なのかと疑う2体は、戦闘体制はおろか殺気を出すのすらもやめて聞いた。



 「それは本当のことなのか?」



 イェソドは雷風に聞く。すると、雷風は真剣な表情のまま、トーンを変えずに真剣に返答する。



 「ああ。そこまでしてお前らをぶっ潰したいのか、それとも用済みになったのか。よくわからんが奴らのやり方が気に食わん。だから言いに来た」



 依然、雷風の顔は真剣なままである。ふざけてもいい空気などとっくにこの場からは消え去っており、2体もそれをただ信じるしかなかった。



 「そうか……」


 「俺は今からオランダに行ってくる。その間にお前達は他の戦いを全て止めに行ってくれ」



 雷風はそう言い残すと、地面を蹴って一気に北北西へ向かった。その方向は霞のいるオランダであり、事態は刻一刻を争うものとなっていた。ポルトスは雷風の言い残した言葉をしっかり聞き取り、状況の整理に追いついていないケセドとイェソドの首根っこを掴み、その大きさのまま慧彼達が戦う最前線へ向かった。



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