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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
184/206

184GF マジノ線攻防戦 その5



 「さあな」



 マルクトは背後にいる慧彼の方を向こうとしたが、それはさせまいと側面から10本程槍を生成し、超高速度で射出する。背後からの攻撃を優先して対処したいが、疎らに射出されてどこに当たるか軌道が不明確なため、側面からの槍は無視できない問題となっていた。



 (バッタの盾を作るには時間がなさすぎる……。なら……)



 マルクトはイェソドの能力である『粒子』を使い、骨と臓器、筋肉、神経の配置を体内で粒子レベルの細さでバラバラにし、その上でムドゲアリムス機関を右手の中に収納し、体を丸ごと空中へ放った。胴体には右手とそこにあるムドゲアリムス機関、剣、頭が支えられるギリギリの細さの骨がバラバラに、且つ折れにくいように骨をロストエネルギーを強化した。見た目はただの棒人間である。だが、そのくらいしないと正面からの攻撃の対処はできなかった。更にマルクトはロストエネルギーの探知を行い、槍の軌道を探知で確認しながら振り向く。



 「キモッ……!!」



 思わず口に出すほど本物の棒人間は気持ち悪かったようで、慧彼は精神的ダメージを与える。だが、そんな攻撃を食らうほどマルクトの精神は弱くない。この状態であることは仕方がないと、イェソドの能力を使う時点で割り切っている。

 マルクトは振り向きざまに正面から来る大量の槍を一瞬で全て捌き切ると、慧彼が持つ槍は目と鼻の先まで来ていた。また、探知のおかげで側面から槍は自分を通過した時点で消滅することがわかったため、粒子を解除して体を一瞬で元に戻す。



 「きっしょ……っ!!」



 一瞬で棒人間から元に戻ったことに更に気持ち悪さを覚えた慧彼は、かなり大きな声と共に、手に持つ槍にロストエネルギーを込めてマルクトに放つ。だが、それはマルクトによって弾かれる。



 (弾かれることくらいは既に承知済み。だから、ちょっとでも時間が稼げればいい!!)



 弾かれる前に槍を射出し、手に反動ができるだけ残らないようにする。そのまま左に持っていた槍で、ものすごい速さの突きを放つ。その間に右手に新たな槍を生成し、握ってすぐに突きを放てる状態を作る。その上で、慧彼は全方位から槍を大量に生成して射出する、事実上の槍での袋の鼠状態を作り、マルクトがその場から移動することを完全に封じることができた。

 次々に右、左、前、後ろ、そして上から槍が襲いかかってくる。マルクトは慧彼からの強力な攻撃を捌きながら、全方位からの攻撃を全て防ぐしか、この場を凌ぐ術がなかった。慧彼の攻撃は、マルクトが踏ん張っている足が完全に動いているのがわかるくらいには押している。マルクトに残された手段は、慧彼のロストエネルギーが限界を迎えるまでこの攻撃を耐えるしかなかった。



 (貰ったか……っ!)



 流石に千を超えるような槍を完璧に捌き切るのには限界があり、徐々に足や肩に槍が貫く。槍は体を貫いたままその場に留まり、マルクトの動きは更に鈍くなる。更に刺さる本数も増えていき、慧彼の勢いも更に上がっていく。



 〔今です〕



 慧彼はマルクトの顎を刃の部分で斬ると、後ろに下がりながら、穴を埋めるように槍を生成し、射出を開始する。

 マルクトは慧彼により強制的に上を向かされると、そこには普通ではありえない光景が広がっていた。光は屈折することなく正常に通っているはずなのに、それを無視するように存在する大量のレーザー砲台。空を埋め尽くすその光景は、マルクトからして地獄でしかなかった。レーザー砲台は全てマルクトに照準があった状態で設定されており、どの砲台を見ても全て自分を向いている。

 盾羽は高度3000m地点にある、空中を埋め尽くすレーザー砲台達の上にいており、レーザー砲台を全て生成、設定したのは盾羽である。過去に1度だけ作ったことがあるイージス艦には、超強力なレーザー砲が搭載されており、そのレーザー砲の材質を全て透光性のとても高い性質にしたものを、限りなく通常と違和感のない状態で空中に敷き詰めたのだ。それがこのレーザー砲台要塞であり、盾羽の推測だと、地球は軽く貫通するレベルである。



 (使わざるを得ないか……っ!)



 使うのを躊躇っていたマルクトだったが、頭上に広がる無数のレーザー砲台を見ると使用しなければならない状況になっていると判断せざるを得なかった。



 「覚醒コマンド、19(ナインティーン)33(サーティースリー)01(ゼロワン)30(サーティー)



 そう言うと、マルクトは鬼を彷彿とする角を額から2本生やし、自然に体から湧き出るロストエネルギー放出量が桁違いに増えた。慧彼と風月はマルクトの近くにいたため、急いで構え直す。

 マルクトはバッタの盾を消して斬撃が通るようになるが、マルクトの体に触れると斬撃は形を保てずに消滅する。慧彼の槍も、マルクトの体に触れると簡単に弾かれてしまう。さっきとは桁違いの防御力を誇るマルクトの体は、自身でも驚くほどだった。



 (使うのは試運転含め2回目だが、こんなに防御力が上がるとは……)



 マルクトは上から降り注ぐであろうレーザー攻撃をどうにかしようと、剣を構えて上へ跳ぶ。

 盾羽は、マルクトが跳ぶと同じタイミングでレーザー砲を放つ。放った瞬間、とてつもない音のレーザー音が周囲に響き渡り、光の速度でマルクトの体に届く。慧彼の槍や風月の斬撃をもろともしない防御力を誇るマルクトの体だったが、流石に地球を軽く貫通するレベルの破壊力には耐えられず、マズいと思ったのか左腕を顔の前に出すが、徐々に左腕が溶け始める。



 (嘘だろおい……)



 最終手段である覚醒コマンドですら防ぎきれないレーザー砲の威力を直に感じて、少し絶望すら感じたが、それで終わるわけにはいかない。マルクトはレーザーでの攻撃を超速再生でなんとか左腕の破壊を相殺する。そのままマルクトは剣を構えて、レーザー砲台要塞を切り刻んで破壊する。レーザー砲台要塞はかつてないほどの轟音に放ちながら爆発し、その爆風で上に押し上げられる。



 「覚醒コマンド、ですか」



 押し上げられた先には、盾羽がいた。完全に獲物の狩りをする残忍な目をしており、碧い瞳が鋭く光っているようにも見えた。そのままマルクトは地面に向けて胴体を強く蹴られ、瞬きをする間もなく地面に叩きつけられた。

 地面に叩きつけられたマルクトは、大きく凹む地面と共に一番下で強制的に体を畳まれていた。その状況からすぐに凹んでいないところへ戻って体制を立て直すが、後ろから風月の斬撃が飛んでいることに気づいた。



 (今背後にダメージを食らっては……)



 マルクトは空中へ逃げるしかなく、仕方なく跳んだ。



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