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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
181/206

181GF マジノ線攻防戦 その2



 ポルトスの肩の上に乗っている盾羽、霞は地上で暴れている雑魚兵、遊撃兵を、同じく雫は宙に浮かぶ偵察兵を倒しまくっていた。特に雫は、偵察兵を殲滅しなければ雑魚兵と遊撃兵が無限に増えていくため、早く殲滅しなければいけなかった。



 「ん? なんかいる……」



 霞は地上から15mの高さから下を見下ろしていると、自身の能力に似ている人造人間がいた。能力を使用しているのだが、遠い海水をわざわざこのカールスルーエに持ってきていたため、上から見ていた霞の目にすぐ留まった。わざわざ海水を使ったことで何かしらの能力に影響するのだろうと考えた瞬間、霞の口角が不気味に上がっていた。



 「霞……? なんで笑っ……、て……」



 横から見ていた雫は、霞が急に水の滑走路を作っていることから、「なんで笑いながら滑走路作ってるんだろう?」と思った。次の瞬間、霞は水で翼を形成して滑走路を物凄い速さで通っていった。雫から見ればその場から一瞬で消えたようなものであり、滑走路を通した先を見ると、霞が敵の首を鷲掴みにして北へ飛んでいく様子が小さく見えた。同時に「あの人の考えることはよくわからん」で雫は思考を終わらせることにした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一方の霞。人造人間の元へ音を置き去りにする速度で近づくと、そのまま首根っこを鷲掴みにしてオランダのアムステルダム、ザンドヴォールトに到着した。



 「……どこ?」


 「どこでもいいでしょ。正直」



 連れてきた人造人間は困惑している。それはそうだろう。味方に加勢しようとしていたら急に首を鷲掴みにされて、景色がみるみるうちに変わっていくと海沿いの街が広がっているのだ。だが、それには一切触れさせようとはしない霞。



 「それより、君は男なの? 女なの? 生物学的に答えて」


 「男」



 男にも女にも見えるその風貌に、中性的な声。男というのだから、目の前の人造人間は男なのだろう。ただ単に男か女なのか気になっていたため聞いた霞は、その疑問が解消されて戦う気が整った。

 人造人間は何故、自分がここにいるのかずっと疑問に思っていた。さっきまでカールスルーエ郊外の草原にいたのが、いつの間にかオランダの港町にいるこの異様な状況。



 (カールスルーエ郊外のあの草原だったら能力にも限界があった。しかも僕は能力をしっかり使って戦っていた……。目の前の滅罪者は、確実に僕が能力を使っているところを見ていたはず。わざわざ水が多いこんな所に連れてきた意味がわからない……)


 「そこの君、『なんでこんなところ連れてきたんだろ?』『バカじゃね?』とか思ってるでしょう」



 霞が唐突に質問……、確認をする。人造人間は首を縦に1度振ると、霞は何故か誇らしげに語り始める。



 「君の能力が水を行使する系統の能力なのは知ってるし、めちゃくちゃ遠くの水、恐らく海水をわざわざ使用しているってことは、海水を扱うんでしょう。じゃあ、よっぽどここに連れてくるのは私にとって不利になる。そう考えるのが普通」



 人造人間はまさかと思って足を一歩下げ、霞を見る目が引いていた目から、一気に殺意の籠った鋭い目に変わる。そこまで来ると霞は人造人間が完全に察したのだろうと理解し、その上で話を続ける。



 「お、わかったんだ。けどまだ気持ちよく話したいから話すよ。私も水を扱い能力を持つから、ここで戦うのは私にも、君にもメリットがあってwin-winってこと」


 「ハンデをなくして戦いたい。そう言いたいんですか?」


 「ま、そういうこと。気持ちよく話したかったから、理解力があるのも問題か……」



 完全に戦闘態勢に入りきっている人造人間を目の前にしても、霞はそのような動作に入ろうとはしない。舐められているのかと思った人造人間は、海水を操作して、海水を槍のように形どって攻撃を仕掛けるような素振りを見せる。だが、それでも霞は微動だにしない。



 「……ビビってるんですか? それとも、舐めてるんですか?」


 「いや? 全く。私が手を抜いて勝てるような敵じゃないでしょ、君って」



 では何故、微動だにしないのか。余計疑問が深くなった人造人間は、何故動かないのか聞く。



 「じゃあ何故、微動だにしないんですか?」


 「うーん。相応の敵は名前を聞いておかないとさ、戦った気にならないんだよ。だから聞く。君の名前は?」


 「……ティファレト」


 「そう。私は瑠璃 霞。コードネームは滅罪者」



 霞はやっと戦闘態勢に入り、海水、大気にある水蒸気を一気に手元に集めた。



 「じゃ、始めよっか」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一方、イギリスのロンドン、ウェストミンスター宮殿の地下ではオリバーが無数の人造人間を目の前にして、更にイタリアとロシアに連絡を行っている状態でいた。



 〔そっちは準備できたか?〕


 〔どっちのことだよ〕


 〔両方だよ〕


 〔はぁ……。こちらヘラクレス、準備完了〕



 すると、ヘラクレスはため息をつきながらもすぐに了承する。残ったのはルシファー率いるロシア。



 〔ルシファー、終わったか?〕


 〔ちょっと待って。ベルフェゴールがまだ来てない〕


 〔じゃあ先に手筈を確認しておく〕



 オリバーはヘラクレスとルシファーが持っている端末に、今回の計画の手筈を示したデータを共有する。



 『2018年10月7日、午後8時55分。ドイツのベルリンにイギリス軍、イタリア軍、ロシア軍(連合軍)総戦力で侵攻する。セフィロトの全滅を以て侵攻を終了するため、現れるまではベルリンを破壊し尽くすものし、作戦名を「ベルリン強襲作戦」と名付ける』



 〔異論はあるか?〕


 〔ないな〕


 〔ないね。んで、ベルフェゴール来たわ〕



 全軍の準備が整ったため、連合軍は総戦力を挙げてベルリンに向けて進軍を開始した。



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