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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第2章 過去という信念
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18GF 灰という消滅



 霞は、ピンが刺されているポイント周辺に着いた。その時にはもう黄昏時であり、通行人は寒そうに厚着をしていた。無論、霞も厚着をしている。



 (……寒っ)



 霞は研究施設から道路を挟み、反対側の建物の屋上にいた。屋上に吹く風は、地面に吹く風よりも強く、冷たかった。その中で1人、研究施設の方を向いていた霞は、警護の人数を見ていた。



 (97、98、99……。ざっと100人くらいか)



 霞は次に、研究施設の横幅と奥行きを見ていた。



 (この建物は基本的に外資系の企業。だから地上は全部人間が運営している。……ということは、地下に広がっているのか)



 霞は屋上から飛び降りた。そして、柄から鍔までしかない刀を腰から取り出した。すると、空中にある水蒸気が水へと変化し、刀の刃の部分を作った。



 「敵だ!! 知らせろ!!」



 警護をしていた者は、中にいる者に聞こえる声で言った。そして、その声を聞いた者たちによる足音が外まで聞こえていた。



 「さて、久しぶりに暴れるか」



 霞は地面を踏み込み、警護をしている者たちの方へと走った。



 「走ってきたぞ!! 放て!!」



 その指示で、警護をしている者たちは銃を向けた。そして、放たれた弾は全て切り落とされ、霞に(コア)を斬られた。



 (やはり人造人間か……)



 外で警護をしていた人造人間達を瞬殺した霞は、堂々と研究施設のある建物の中へ入った。



 (地下だよな……、多分)



 そう思った霞は、用意していた水分を使って足元の床を壊した。すると、そこには能力の発動準備をした人造人間が大量にいた。



 (待ち構えていた……、ということか)



 霞は手を伸ばし、手のひらを広げた。すると、用意していた水分を手のひらの先に集束させた。



 「放て」



 霞のその言葉で、水分は波動のような勢いで人造人間達を襲った。その勢いは凄まじく、当たったところの部分は消滅していた。それを床と平行に撃ったため、大半の人造人間の(コア)を消滅させた。

 残った残党は霞に襲いかかるが、さっきの攻撃で能力の発動を一度リセットしてしまったため、なす術もなく霞に(コア)を貫かれた。



 「見るに耐えんな……」



 霞は、目の前で同じ種族である人造人間が、灰となって消えていく姿を見て思わず言ってしまった。



 (罪を犯した者なら躊躇いなく殺せる。だが、無理矢理体を作り替えられ、他人の欲のために使われる人造人間だけは殺すのに躊躇いが生まれる……。もし私のように自我を持って、目的を自分で見つけ、それで私達に抵抗するなら容赦なく殺せるんだがな……。心が痛む……)



 だが、霞は任務のために、世界の安泰のために、人々の平和を守るためなら躊躇なく殺した。それを今更変えることなど、世界から許されないのである。そう霞は思っているからこそ、自分が汚れ役となって、これ以上こんな人を増やさないように、人造人間や罪を犯した者を狩っているのだ。

 霞は走りながら前に現れる人造人間を片っ端から殺しているが、大きな穴が目の前に現れた。穴を越えた先には道があるが、それ以外には一切道がない。そして、先の道から人造人間が2体飛んできた。



 (……穴大きいな)



 霞は前にいる人造人間に、水分で形成した槍を3本、(コア)めがけて高速で飛ばした。人造人間はその槍を頭から受けてしまい、魚の串刺しのような状態で宙に浮いた。



 (狙い通り刺さったな)



 霞は、宙に浮いた人造人間の上に乗った。そして、2体目の人造人間に備えた。人造人間は霞を殴ろうと空中で姿勢を作っており、霞を殴ろうとしているのが読みやすかった。霞はもちろん殴ろうとしているのを理解し、人造人間が刀の射程圏内に入った瞬間に、(コア)ごと一刀両断した。

 霞は研究施設内の人造人間を続々と狩った。その度に霞の後ろには灰ができていった。その灰は全て時間経過で消えていき、そしてそこには何も残らなくなる。その姿を霞は見ようとはせず、生きている人造人間だけを見ては全て殺していった。



 (ここで終わりか……)



 研究室。霞はその部屋の前にいた。そこ以外は全て行き、人造人間は全て殺した。

 霞は研究室へ入った。すると、すぐに着弾すると爆発する弾が2発飛んできた。それを上に跳んで避けた霞は、間髪なく3発飛んできた。



 (能力自体は強いな……)



 空中に一瞬氷を生成し、宙に浮かせてそれを足場とし、後ろへ跳んだ。その状態で1発目を斬り上げて処理、すぐあとに飛んできた2発目を斬り落として処理。高速で飛んできた3発目を十字に斬って処理した。そして着地した霞は、空中から突撃してくる人造人間を捉えた。両手には着弾すると爆発する弾を持っていた。

 その状況で霞は、何故か口角が上がっていた。狂人の域に達していた。『狂人』と形容できる程に霞の精神は狂っていた。

 霞は飛んでくる人造人間に向かって、正面から跳んだ。そして一瞬で斬り落とすような体制に変え、人造人間を(コア)ごと斬り落とした。



 (……なんだ?)



 その時、轟音が鳴り響いた。上からどんどん床が壊れていく音が聞こえる。そして、研究室の天井を破壊し、先にいた白銀を上から拳で砕いた。

 着地した霞は、上から飛び降りてきた者に話しかけた。



 「お前は誰だ」



 そう問いかけると、小さい声でその者は答えた。



 「天城(あまき) 神月(かづき)だ」



 そう言うと、天城は霞の横を通って入り口から出た。



 (天城……、神月……)



 霞はそう思いながら、誰もいない研究室の中を歩いた。すると、何個かのパソコンを見つけた。



 (これは……、人造人間のデータか……)




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