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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
177/206

177GF ハンブルグ急襲作戦 その3



 推定5000匹の飛蝗の塊に向かって、白夜は恐怖心の反動で走り始めた。アトミックアニーを持つ力はバグり散らかし、目はガンギマっている、飛蝗に対する恐怖心をあまり感じていないことから、ひとつの究極状態であろうと推測できる。

 知っているだろうか。恐怖の感情が限界突破した状態を。それはある種の恐怖対象への恐怖が無くなることである。私が忌む物は虫と虫と虫。とりあえず虫。しかもロストエネルギーでわざわざ作るなんて蛮行、ありえない。私は世界大戦なんて今は全然考えてない。私が考えているのは一つだけ。目の前の飛蝗をゴロゴロ作ってるやつをとりあえず私の視界から早く消すこと。そして目の前の飛蝗を消すこと。私は虫を恐れることを何も悪だと思わない。それが普通だと思うから。その心を捨てたら人ではなくなるっ!! だから早く潰して恐怖を感じる体に戻す!! それだけっ!!

 ある意味覚悟がガンギマった状態の白夜は、飛蝗の群れの中へと正面から向かっていった。ちょうど今まで忌み嫌うものみたく光線をぶっ放していたのに。



 (狙いはひとつ)



 (コア)のみ。研ぎ澄まされた鋭い眼差しはゆっくりと、ゆっくりと大きくなっていく。自然と口角が上がっていく。



 「面白くなってきたァ!!」



 歩きながらぴょんぴょん跳ねたり手首足首を回したりして体をほくじた白夜は、左手に持っていたアトミックアニーの一振を上に投げ、立ち止まって戦闘体制に入る。



 「アクセルモード、突入」


 《極秘コマンド『加速』確認。アトミックアニー、アクセルモード突入》



 投げたアトミックアニーは量子レベルに分解され、右手に持っていたアトミックアニーも一部が分解され形が刀状に変わった。分解されたアトミックアニーは黒い翼に変形し、白夜の背中にくっつく。



 「さて、全部斬るよ」



 アナイアレーションを発動させ、鎧に戻る命令を下す時間よりも早く走り始めた。白夜が1歩目を踏み出した瞬間、次の瞬間にはホドの背後にまで迫っていた。姿が見えた時には既に大量にいた飛蝗は塵としても残っていなく、完全にロストエネルギーの一分子として空中に漂うものとなっていた。既に(コア)のある部分にアトミックアニーの先端を突き立てていたが、ついさっきまでの硬さはなく、軽く突き立てるだけで血が流れる。アトミックアニーをホドの背中から離した白夜は、次の瞬間には100mほど離れたホドの正面に立っていた。

 アナイアレーションを解除した白夜は、ホドが現状を理解するための時間を作った。



 「何故殺さなかった?」



 アナイアレーションを解除して1秒も経っていないにも関わらず、背中の微かな痛みを感じて状況把握を行ったホドは、白夜にその真意を聞いた。



 「あんたをもうちょっとまともに殺したくなった」


 「殺すにまとももクソもない。殺すか殺されるかだ」


 「まあそうだけど。これに限っては私の美徳に関する話」


 「そうか」



 ホドは刹那の間に鎧を纏い、またすぐに戦闘体制に入る。その瞬間、2つの大きな地面を蹴る音がした。2人は既に立っていた地点から消えており、正面から互いを攻撃しようとしていた。ホドは前傾姿勢で走り始めた時の勢いのまま白夜の顔を正面から殴ろうと足を大きく踏み込み、拳だけを上にあげている状態で、対する白夜はホドの拳に向けて剣先を突き立てており、体制で言えばホドと大差はないが、既に腕を伸ばしきっているということである。



 (どう避ける? この砲撃を)



 そう心の中で語りかけたのは白夜の方だった。持っていた刀状のアトミックアニーをハンドガン状に変形させた。これは咄嗟の判断という訳ではなく、アトミックアニー自身が前から提案していたものだった。そのため、アトミックアニーに変形の命令を出したらすぐに反応できた。

 ハンドガン状のアトミックアニーの銃口から放たれたのは、全てを包み込むほど広範囲な光線。ホドは咄嗟の判断で足以外の鎧の飛蝗を盾にすることができたが、光線の火力はその強固な飛蝗すらも一瞬で溶かしていくほどのものだった。そのため、作った一瞬の隙で光線の範囲外まで走った。



 (なんだ今の……)



 光線の効果範囲外まで走ったが、そこにいたのは戦闘体制万全の白夜。残った鎧ではただ逃げることしかできなかったが、それすらも白夜に防がれるように顔を掴まれた。



 「殺す気はないんで。次はアクセルモード(反則)無しで殺します」



 白夜は右足にロストエネルギーを込めると、ホドの顔を上に軽く投げた状態で破壊力抜群の上段蹴りを容赦なく放った。ホドの顔面は原型を留めることなく彼方遙かに吹き飛ばされ、白夜も蹴った後にホドの描く綺麗な放物線を眺めていた。



 「……さて、帰りますか!!」


 《殺さなくてよかったのですか?》



 アトミックアニーはホドの強さを脅威だと考え、殺すのが1番良かったのではと思った。だが、白夜の考えは違った。



 「多分ね、ホド(あれ)はアクセルモードなしでも殺せるし、なんなら私以外でも難なく勝てるはずだよ」



 白夜はホドのことを大した脅威だとは考えず、しかも誰でも倒せる雑魚だという評価を下した。白夜の考えが転ばぬ先の杖となるのか、それともアトミックアニーの考えが杞憂となるのか。それは翌日にわかる話である。



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