175GF ハンブルグ急襲作戦 その1
2018年10月6日、午後6時20分。白夜がドイツ、ハンブルグに単身で進軍。ハンブルグに駐屯していたホド軍を白夜が発見した瞬間に殺し始めたため、ホド軍がそれに反撃する形で戦闘体制に突入した。
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(ここにいるみたいなこと言われたんだけど……)
ダルタニャンに「ハンブルグに向かえ。重要拠点だから強いやつが必ずいる。……はずだ」と指示され、ひとまず指示の通りにハンブルグに着いた白夜は、周りを見渡して強そうな人造人間がいないか確認する。
「強いやつどころか人造人間すら見えない……」
白夜はロストエネルギーを隠して移動するなんてことは絶対にしない。当人曰く「察知して攻撃してきたらねじ伏せるだけだから、別に隠す必要性なくない?」とのこと。そのため、一見気を抜いていそうな感じで周りを見渡しているが、常に戦闘態勢に入っている白夜。
大きな交差点の丁度真ん中に立っている白夜の視界の端に、1km程離れた先にある交差点の角からうっすらと人造人間の髪の毛が見えた。目にロストエネルギーを纏わせ、凝らして見ていたため、髪の毛に纏っている微細なロストエネルギーを感知したというわけだ。見つけた瞬間に全身に莫大なロストエネルギーを込めた白夜は、人造人間のいる方へ瞬く間に移動し、核を一瞬で破壊する。
「見つけた」
白夜の視界には大量の人造人間。見ただけで2000体は超えている。視界に捉えた瞬間、背中にしまってあったアトミックアニーを取り出し、片手で2000体の人造人間に銃口を向けて引き金を引く。銃口からは高密度の殺傷性の高いロストエネルギーの塊が光線状になって放出され、実に見つけてから1秒も立たずに2000体もの人造人間を殲滅した。
(あれ、一体残った……)
たまたま光線による被害を免れた人造人間がいた。白夜はアトミックアニーを見て「故障かな?」と首を傾げながら言う。
「お前が……、真祖か……?」
「真祖……? なにそれ?」
白夜は何を言っているのかよくわからない人造人間の核をとりあえず撃ち抜く。
(真祖って何?)
真祖という言葉に疑問を抱きながらも、背後に迫る人造人間を振り返りざまにアトミックアニーで一斉に葬る。
「……ま、どうせ雷風のことでしょ。無視無視」
頭と記憶力が悪くても勘は抜群の白夜は考えることを諦め、今自分がやりたいことを最優先で行った。そのためには、あまり使いたくない手段を使うしかなかった。
(探知かぁ……)
ハンブルグの面積は755k㎡ととても広い。アクセルモードに入ったとしても、755k㎡をローラーで探すのは限界がある。維持するためのロストエネルギーもバカにならない。そのため、まだロストエネルギーの消費量が少なくコスパのいい探知を使うことを選択した。だが白夜にはひとつ懸念点があった。それは、白夜がロストエネルギーを使った広範囲探知を苦手としていることだ。
ロストエネルギーを使った探知は、自身のロストエネルギーを一定の範囲まで広げて纏うことによって、ロストエネルギーの中にある情報を全て手に入れることができる。気配探知より正確な探知が可能だが、ロストエネルギーを操るものには逆探知を行われる可能性が高い。
白夜は自分のロストエネルギーを体外へ放出し、それを維持すること、つまりロストエネルギーを広げて纏うことが極めて苦手であるため、これまでロストエネルギーを使った探知は行わないようにしていた。だが、いずれ使う。そのいずれが今である。好きなことを行うためには、苦手なことも行わなければならない。それを今、白夜は実感した。
(……よし!!)
白夜はロストエネルギーを半径5km程広げ、円形に75k㎡以上の範囲を探知することができた。すると、その中にいるのは大量の人造人間。数は10万に上り、かなり密集しているようだった。その地点までの距離は420mとかなり近く、その情報を得た瞬間に探知を解除し、歯茎を見せて向かった。
ソニックブームが発生する。それは白夜が音を凌駕する速度でその場に現れたから。地に足をつけた白夜は能力を使用し、風が生み出すエネルギーを操作してより強大なものとする。風は竜巻のような強さに変わり、風が持つエネルギーはかなり大きなものとなった。
「圧死。……で、いいのかな?」
疑問に思いつつもパチンと指を鳴らし、風が持つエネルギーを全て重力に変換し、風が竜巻となって吹いていた範囲にいた人造人間を核ごと重力で押し潰す。10万に達する程の人造人間は一瞬にして体が地面に叩きつけられ、体が重力に耐えきれずにそのままぺちゃんこになって破裂する。
《マスターの背後20km先から敵性反応あり。高速で現地点に近づいているものと判断します》
アトミックアニーは背後から迫る影を瞬時に察知し、白夜の脳に直接伝える。白夜はアトミックアニーからの警告を感じ取った瞬間に後ろを振り返り、その正体を確認する。
「気づかれたか。気配もロストエネルギーも隠したつもりだったんだが……」
「まさかさ、こいつら全員……、囮?」
後ろにある圧死した人造人間の死骸を親指で指しながら、目の前にいる人造人間に聞く。
「ああ。まさかこうも簡単に気づかれて、更に殲滅されるとは思わなかった」
すると、ハンブルグに蔓延っていたロストエネルギーで作られた大量の飛蝗を自身の周囲に集め、その内の1匹を人差し指の先に乗るようにジャンプさせる。
「そこまでの実力者なら自己紹介しないとな。俺はドイツ軍セフィロト、ホドだ」
「断罪者、満月 白夜」
2人はいつ仕掛けてくるのか、常に睨み合い警戒しながらその場に留まることしかできなかった。




