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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
173/206

173GF パリ大空襲 その2



 「ガブリエル」


 「どうしたの?」



 ミカエルが雫と目を合わせながらガブリエルの名前を呼ぶと、ガブリエルはノータイムで反応する。ミカエルは右手を肘を曲げて挙げる。すると、ガブリエルはその合図だけでミカエルが何をしたいのか瞬時に理解し、戦闘態勢に入る。その際に発した殺気は雫と霞にも届いており、2人も戦闘態勢に入った。



 「Angel code : seraphim of storm」



 非常に発音の良い声でガブリエルは特定のコードを唱える。すると、黄緑色の瞳は黄色の瞳に変わり、元々生えていた翼の他に、新たに4枚の翼がエネルギー体として体に纏い、ロストエネルギー総量が格段に上昇した。発動していた下降気流は解除されたが、その分のロストエネルギーがガブリエルの元へ還元されていく。

 ミカエルは肘より先を下へ振り下ろし、ガブリエルを地上へ降下させた。その際に、ミカエルはガブリエルに聞いていた。



 「オリバー様からの命令、覚えてるよな?」


 「そりゃもちろん。使える駒は極限まで使用する。でしょう?」


 「覚えてんじゃん」



 目の前に突如として現れたガブリエルは、火の球を消滅させた直後の雫の手に負えるものではなかった。だが、回復している分のロストエネルギーを残しながらも、今体内に残っているロストエネルギーで対処しようとする。



 「その状態で戦う気?」



 ガブリエルは余裕そうな振る舞いで雫に聞く。すると、雫は魔法円をある程度展開して、ガブリエルの問いに答える。



 「もちろん」



 更に展開する魔法円の量を増やし、ガブリエルの意識を自分に向ける雫。そんな雫の姿に感銘を受けていたガブリエルは、体からロストエネルギーを放出し、自身を強化する。

 その瞬間、背後から無色透明な物体がガブリエルの両方の首元を通った。雫は誰がその物体を出したのか、まずまずその物体が何なのか、完全に知っていた。ガブリエルは無色透明な物体が棒状になっているため、無色透明な武器が通ったのかと思った。だが、その物体をよく見てみると何かがおかしい。風の影響を受け、靡いて形状が一瞬一瞬で変わっているのだ。

 ガブリエルは正面を見ても何もないため、背後から何かが来ると即座に理解し、水の斬撃が来た瞬間に避ける。その瞬間に、ガブリエルは物体の正体が水だということを理解した。

 一方、霞はミカエルとガブリエルの両方に狙われている雫を見て、即座に能力を発動して水の滑走路を2本生成し、ガブリエルの首元に通した。背中には滑走路を滑り抜ける翼を生成し、水の原子構造を一部変更させることで、電子を一箇所に集中させ、マイナスの電気同士で発生させる磁場の反発を利用し、高速の滑走を行うことができる。それを利用した霞は、ガブリエルの元へ瞬きをする間より早く到達した。そこから繰り出される絶大な破壊力を生む一撃は、ガブリエルによって簡単に躱された。



 (うっそでしょ……? 反射神経ハエかよ……)



 霞は翼と滑走路を消すと共に着地し、ガブリエルから100mほど距離を取る。



 「ちょっとは力、出しますか……」



 自身の周囲50mを一気に巻き込む程の、勢いの強い上昇気流を発生させ、周囲の建物を破壊しながら上へ飛ぶ。飛んだ瞬間に両腕にロストエネルギーを集束させ、能力を発動させて暴風の力を拳に集めた。

 雫は残っているロストエネルギーを使い、ガブリエルの動きを正確に捕捉する。ガブリエルは遥か上空から急降下を始め、翼を使用することで降下速度を更に速くしていた。音速を超える速度で降下するガブリエルは、降下しながら殴る予備動作に入る。

 タイミングがズレれば大きな隙が生まれる上に、拳をもろに食らう可能性が非常に高い。そのため、雫は極度の集中状態に入る。



 (……ここっ!!)



 極度の集中状態に入った雫は、ガブリエルが振るう拳を避けながら、右足で横腹を蹴って大きな隙をガブリエルに生ませる。その間に雫は右拳にロストエネルギーを集中させ、体の動きが一瞬止まったガブリエルの鳩尾に右拳のストレートをぶつける。



 (うおっ。残ったロストエネルギーでこんな芸当ができるのか……)



 ガブリエルが気づいた時には、既に着地していた。雫とは200m程離れており、再び距離を詰めようとした時だった。自身の周囲には水の滑走路が蜘蛛の巣のように張り巡らされており、身動きを取ることは容易ではなかった。水の滑走路の上を物凄い速さで滑走する霞を見て、いつ攻撃をするのか見極めていた。



 (そこか……)



 ガブリエルは冷静に見極め、背後から物凄い速度で物凄い破壊力を持つ斬撃を放つ霞の攻撃を、暴風の力を纏った拳で相殺する。その際に生まれたエネルギーは果てしなく、上空から空爆を行うミカエルの火の球が全て消え去るほどだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一方、それを遠くから見る2人の姿があった。

 北に数十km、そこから見えるパリの姿は、火の雨が地上に降り注ごうとする姿であった。2人の刀を持つ人造人間は、それをただ見ているだけだった。



 「雷風、行ってきていい? ちょっと準備運動がてらにさ」


 「あ、ああ。行ってこい……」



 雷風がそう言うと、楓は即席で生成した腰に差していた刀を持ち、居合の体制で走り始めた。地面を蹴った音は楓がかなり離れた状態で鳴り、音を完全に置き去りにしていた。



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