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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
166/206

166GF ルーアン市街地戦 その2



 精神世界内では、ビナーはどこから現れたか分からない鎖で体を縛られており、視界の先には背を向けて立つマルクトがいた。



 「お前の能力を使えるくらいにまでは支配が進んでいる。どうせお前は、あの真祖に支配核(ルーラーコア)を的確に破壊してもらおうと考えていたんだろう?」


 「ええ」


 「……ハハハハハハハハハハハ!!」



 すると、マルクトは後ろ姿でもわかるくらいに大袈裟に笑った。ビナーは何故、マルクトがそのように笑うのか全くわからなかった。



 「何がおかしい」



 ビナーは真剣に聞く。すると、大袈裟に笑っていたマルクトは態度を急変し、気づく頃にはビナーの目の前でしゃがみ、顔を合わせて恫喝するように話す。



 「真祖ってのはな、最高解放状態でも真祖の姫と同スペックになるようになってんだよ。それに、真祖と真祖の姫の解放状態はリンクしてるから、身体能力、ロストエネルギー総量、能力発達段階が同じ状態だ」



 マルクトはビナーの前髪を鷲掴みにし、ビナーは必死に抵抗の素振りを示す。だがマルクトには関係なく、当たり前のようにそのまま話を続ける。



 「言いたいことはわかるか?」



 超低音で脅すように聞くマルクトを目の前にして、ビナーは恐怖を感じた。言っていることはわかる。けど、それを私は信じたくない。雷風には曖昧だけど託したように言った。けど、本当の私は死にたくないって思ってるんだと思う。心に嘘をつく私は、本当はなんて思いたいんだろう。心のままの自分でいたら、こいつは当たり前にそれを利用する。だから、私は虚実を演じてきた。演じても、演じなくても、嘘をついても、嘘をつかなくても、結局は同じだった。けど、私は身勝手だから死にたくないって思った。表と裏の境界が溶け落ちていく……。私は何を思っているんだろう……。私は何を信じればいいのだろう……。



 「自分を見失っている。そんな様に見えるぞ」



 マルクトは私の思ってることを理解できる。けど、それは私の体を支配して、更に私の精神世界に入ってくるから。雷風ならどう思うんだろう……。雷風なら私の思ってることを理解できるのだろうか……。



 「自分を殺してでも、俺の支配から解放してほしい。そう思っていた。だが、それは違うんだろう?」



 マルクトは手を離し、立ち上がりながら言う。



 「お前は自分が助かりたい。真祖……。いや、『雷風』に頼めばなんとかなる。そう思ってんだろ?」



 お前……。お前……!! お前ェェエエェェ!!



 「お前が雷風のことを口にするな!!」


 「そんなにキレんなよ。短気な姫を持った『雷風』君は可哀想だなぁ?」



 マルクトは煽るように言う。それは、沸点ギリギリのところでなんとか留まっているビナーにはとても効いた一言だった。



 「貴様ァァァ!!」



 激昂するビナーの顔を思いっきり蹴るマルクトは、再び後ろを向いて笑い始める。



 「どうやら、お前を思う目の前の男は綺麗に支配核(ルーラーコア)を斬るようだぞ。不可能だと言うことに気づかんのか? このバカは」



 すると、怒りに溢れたビナーの顔が一瞬にして安堵の顔へ変わった。そして、マルクトに願望混じりの予想を伝える。



 「……雷風ならできるよ。覚醒コマンドを発動したケテルとコクマーを一方的にボコボコにできるんだから」



 すると、マルクトはビナーに聞く。



 「……ひとつ聞こう。お前は真祖、真祖の姫に与えられた能力の詳細を知っているか?」


 「まあ……、サラッと見た程度だけど……」



 すると、マルクトは痰を出すかのように1度咳払いをし、説明を始めた。



 「真祖の姫の能力は他ならぬお前の能力だ。自然を操る能力だな。しっかり人造人間の女王として君臨できるレベルの能力だ。だがな、それに対して真祖の能力は危機感知だけだ。何がすごいのか全くわからん」



 マルクトは知らないと言わんばかりのジェスチャーをしながら言う。それに対しビナーは、マルクトの放った意見に対しての自分の意見を述べる。



 「けど、そのよく何がすごいのか全くわからない能力であの2人を圧倒したんじゃないの?」


 「黙れ!!」



 マルクトはビナーの右頬を力強く足の甲で蹴り、更に右足の踵で脳天に向けて大きく振りかぶってから落とす。流石に精神世界で痛みが感じにくても強烈な痛みを感じたビナーは、痛そうな顔をマルクトを睨む。



 「お前の意見は求めていな……!! その顔……!! イラつくんだよ!!」



 頭を足裏で何度も踏みつけるマルクトはビナーの顔を更に蹴り、イラつきながら振り向く。



 「まあいい。性交渉か(コア)を完全同機させない限り、お前が(コア)を破壊されたら死ぬんだからなぁ」


 「……お前の体は俺が握っている。だから、死にそうになったらしっかりと死んでこの体を放棄する。放棄してしまうのは癪だがな。お前は俺に支配された時点で死ぬことは確定しているんだよ」



 それでも……、私は信じたい。身勝手だと思うけど、私は雷風を信じたい。信じてみたい……!!



 「可能性などない。その未来など、へし折ってやる」



 そう言い、マルクトの姿は精神世界から消えた。ビナーは鎖で縛られていたため、動くこともできずに、戦いを見ることすらできない。そんな状況の中でも、ビナーは雷風が助けてくれるのではないかと言う一筋の光に賭けていた。



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