159GF 円卓壊滅作戦 その6
「絶対に殺す。命に替えても」
モードレッドはそう言うと、狙いを雷風の核に定めて突きの姿勢に入る。そんなモードレッドを、雷風は蔑むような目で見る。すると、蔑む目は哀れに見る目へと変わり、笑い出した。
「ハッハッハッハッハ!!」
腹を抱えて笑う雷風に、モードレッドは怒りが湧く。モードレッドはその笑いを、仲間の死に対する冒涜だと捉えたのか、ロストエネルギーの放出量が更に増す。ロストエネルギーは凝縮され、波打つだけで多少の衝撃波が生まれる。だが、雷風はそのロストエネルギーを見ても驚く気配は無い。逆に、余裕の笑みを浮かべていた。
「やってみろよ」
「殺す……!!」
モードレッドは正面から走ってくる。走るだけで衝撃波が生まれるほどの速度で。モードレッドは雷風の核を捉え、鋭い突きを放つ。だが、そこにいたのは残像であった。手応えがない。モードレッドは手応えがないことを脳が認識した瞬間、雷風がどこなのか探そうと前傾姿勢のまま着地した。
(アホが……)
着地した瞬間、モードレッドの核を背中から貫く大和を、モードレッドは目でしっかりと捉えた。その際、モードレッドはクラレントを強く握り締めていた。
(討伐完了。後は10体か……?)
雷風はモードレッドの体の上に乗り、上から核を大和で貫いていた。核を破壊したことを手応えで確認した雷風は、大和を引き抜いて後ろに跳び、モードレッドの体の様子を確認する。
(ん……? なんだ?)
人造人間の体は、核が破壊されると徐々に消滅していき、最終的には灰すら残らず完全に消滅する。完全に消滅すると、その場にロストエネルギーを残さない限り、ロストエネルギーの残穢すら残さず消える。逆に、ロストエネルギーをその場に残すと、短時間かつ少量だが残穢を残すことができる。
モードレッドの体から、大量のロストエネルギーが放出される。それは核を貫く寸前に雷風が観測した、モードレッドのロストエネルギー総量の半分の量、20485GFが放出していた。
(体が消えない……? ……能力か!!)
「Mordred died four times」
クラレントから音声が流れる。それは「モードレッドは4度死んだ」という意味を英語で言ったものであった。
(とりあえず、あいつは今回で4回死んでいるってことか……。ということは、俺がこのまま攻撃し続けても勝つことはできない)
「何考えてんだよ!! 三下がァァァァアア!!」
モードレッドはロストエネルギー総量までロストエネルギーを高速で回復し、再び攻撃を開始する。雷風の目の前まで走ってきたモードレッドは、下から上へクラレントを振る。その際、上半身も下から上へ上げることで遠心力を強めていたことで、このまま攻撃を喰らえば確実に体が両断されると判断した。だから、雷風はクラレントの刃のない側面を左足で蹴り、逆手で大和を持ち替えることで、蹴った勢いのままモードレッドの首を刎ねた。
(クラレントがカウントするってことは、モードレッドの能力をクラレントは正確に把握しているってことか。そんなこと、できるのか……?)
雷風がクラレントを蹴ったことで、モードレッドが予定していたクラレントの軌道がずれ、体勢を崩してしまった。
(……そういうことか。こいつの能力はクラレントを生成する能力。復活したのはクラレントの能力……!!)
仮説だが、モードレッドはクラレントという剣を生成する能力を持っている。そして、クラレントは所有者のロストエネルギー総量の半分を使用し、所有者を蘇生する。だから、死んだ時に剣を強く握り締めていた。所有者の概念は剣を持っていること。恐らく、モードレッドは俺にクラレントを奪われることを恐れ、核に注力すべき防御力を腕に集中させ、核のある胴体から切り離したくなかったのだろう。
「大和、駆動」
雷風はアクセルモードに入り、更にアナイアレーションを発動した。雷風はモードレッドが手に握っていたクラレントを腕ごと切り落とし、大和で粉々に切り裂いた。
(保険は排除……)
雷風は口角を不気味に上げると、胴体を輪切りのように両断する。その際、雷風の後ろにモードレッドの体があるような状態となっていた。振り向きざまに雷風は走り、ほんの瞬きにも満たない間で四肢を切断、切断した四肢を細切れにした。雷風は振り向くと、正面にはモードレッドがこちらを向いている。
(そろそろ終わらせるか)
雷風はモードレッドの残った部位全てを切り裂いた。それは核も例に漏れず。モードレッドの体はみるみる肉片と化していく。かろうじて核の残骸が原型を保っているだけであり、それ以外は完全に空気と同化していた。雷風は踏み込み、前へ全力で跳ぶ。それと共に核の残骸を更に細かく切り裂く。
雷風は跳んでいる最中にアクセルモードを解除した。すると、モードレッドのロストエネルギー反応は一瞬でゼロと化した。だが、クラレントに込められていたロストエネルギー反応はまだあった。
「……Biological reaction burnout. Suspension of activities」
無機質な音声は虚無に包まれた夜に消え、ひとつの狂気の耳にも届くことなく消滅した。
(まさか……、あの剣が本体だとは思いもしなかったな)
消えていく体に背を向け、宿に帰っていく雷風だった。




