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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
159/206

159GF 円卓壊滅作戦 その6



 「絶対に殺す。命に替えても」



 モードレッドはそう言うと、狙いを雷風の(コア)に定めて突きの姿勢に入る。そんなモードレッドを、雷風は蔑むような目で見る。すると、蔑む目は哀れに見る目へと変わり、笑い出した。



 「ハッハッハッハッハ!!」



 腹を抱えて笑う雷風に、モードレッドは怒りが湧く。モードレッドはその笑いを、仲間の死に対する冒涜だと捉えたのか、ロストエネルギーの放出量が更に増す。ロストエネルギーは凝縮され、波打つだけで多少の衝撃波が生まれる。だが、雷風はそのロストエネルギーを見ても驚く気配は無い。逆に、余裕の笑みを浮かべていた。



 「やってみろよ」


 「殺す……!!」



 モードレッドは正面から走ってくる。走るだけで衝撃波が生まれるほどの速度で。モードレッドは雷風の(コア)を捉え、鋭い突きを放つ。だが、そこにいたのは残像であった。手応えがない。モードレッドは手応えがないことを脳が認識した瞬間、雷風がどこなのか探そうと前傾姿勢のまま着地した。



 (アホが……)



 着地した瞬間、モードレッドの(コア)を背中から貫く大和を、モードレッドは目でしっかりと捉えた。その際、モードレッドはクラレントを強く握り締めていた。



 (討伐完了。後は10体か……?)



 雷風はモードレッドの体の上に乗り、上から(コア)を大和で貫いていた。(コア)を破壊したことを手応えで確認した雷風は、大和を引き抜いて後ろに跳び、モードレッドの体の様子を確認する。



 (ん……? なんだ?)



 人造人間の体は、(コア)が破壊されると徐々に消滅していき、最終的には灰すら残らず完全に消滅する。完全に消滅すると、その場にロストエネルギーを残さない限り、ロストエネルギーの残穢すら残さず消える。逆に、ロストエネルギーをその場に残すと、短時間かつ少量だが残穢を残すことができる。

 モードレッドの体から、大量のロストエネルギーが放出される。それは(コア)を貫く寸前に雷風が観測した、モードレッドのロストエネルギー総量の半分の量、20485GFが放出していた。



 (体が消えない……? ……能力か!!)


 「Mordred died four times」



 クラレントから音声が流れる。それは「モードレッドは4度死んだ」という意味を英語で言ったものであった。



 (とりあえず、あいつは今回で4回死んでいるってことか……。ということは、俺がこのまま攻撃し続けても勝つことはできない)


 「何考えてんだよ!! 三下がァァァァアア!!」



 モードレッドはロストエネルギー総量までロストエネルギーを高速で回復し、再び攻撃を開始する。雷風の目の前まで走ってきたモードレッドは、下から上へクラレントを振る。その際、上半身も下から上へ上げることで遠心力を強めていたことで、このまま攻撃を喰らえば確実に体が両断されると判断した。だから、雷風はクラレントの刃のない側面を左足で蹴り、逆手で大和を持ち替えることで、蹴った勢いのままモードレッドの首を刎ねた。



 (クラレントがカウントするってことは、モードレッドの能力をクラレントは正確に把握しているってことか。そんなこと、できるのか……?)



 雷風がクラレントを蹴ったことで、モードレッドが予定していたクラレントの軌道がずれ、体勢を崩してしまった。



 (……そういうことか。こいつの能力はクラレントを生成する能力。復活したのはクラレントの能力……!!)



 仮説だが、モードレッドはクラレントという剣を生成する能力を持っている。そして、クラレントは所有者のロストエネルギー総量の半分を使用し、所有者を蘇生する。だから、死んだ時に剣を強く握り締めていた。所有者の概念は剣を持っていること。恐らく、モードレッドは俺にクラレントを奪われることを恐れ、(コア)に注力すべき防御力を腕に集中させ、(コア)のある胴体から切り離したくなかったのだろう。



 「大和、駆動」



 雷風はアクセルモードに入り、更にアナイアレーションを発動した。雷風はモードレッドが手に握っていたクラレントを腕ごと切り落とし、大和で粉々に切り裂いた。



 (保険は排除……)



 雷風は口角を不気味に上げると、胴体を輪切りのように両断する。その際、雷風の後ろにモードレッドの体があるような状態となっていた。振り向きざまに雷風は走り、ほんの瞬きにも満たない間で四肢を切断、切断した四肢を細切れにした。雷風は振り向くと、正面にはモードレッドがこちらを向いている。



 (そろそろ終わらせるか)



 雷風はモードレッドの残った部位全てを切り裂いた。それは(コア)も例に漏れず。モードレッドの体はみるみる肉片と化していく。かろうじて(コア)の残骸が原型を保っているだけであり、それ以外は完全に空気と同化していた。雷風は踏み込み、前へ全力で跳ぶ。それと共に(コア)の残骸を更に細かく切り裂く。

 雷風は跳んでいる最中にアクセルモードを解除した。すると、モードレッドのロストエネルギー反応は一瞬でゼロと化した。だが、クラレントに込められていたロストエネルギー反応はまだあった。



 「……Biological reaction burnout. Suspension of activities」



 無機質な音声は虚無に包まれた夜に消え、ひとつの狂気の耳にも届くことなく消滅した。



 (まさか……、あの剣が本体だとは思いもしなかったな)



 消えていく体に背を向け、宿に帰っていく雷風だった。



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