153GF 円卓壊滅作戦 その4
(惜しむ必要はない。種が割れる前に潰せばいいだけだからな)
剣を生成したボールスと剣と巨大な盾を生成したベディヴィアは、ビルの屋上から飛び降りて雷風の様子を見ていた。いつ、どこから、どのように攻撃するのか。それをまだ掴むことができていない2人は、隙がないこの状況で無闇に攻めることはできなかった。
雷風は大和を天に掲げる。大和にロストエネルギーが込められた。その時、雷風の目は漆黒の瞳からマルーンの瞳へと変化した。
「貫け」
その一言で、天には黒の円形の空間が大量に生成された。その空間から姿を現す槍の先端。槍は2人をただ見続ける。槍はその空間に少し戻ると、視線は殺意となり降り注いだ。
巨大な盾を生成していたベディヴィアは、槍を防ぐために上に向けた。槍が当たる時に発生する衝撃は、並の衝撃ではなかった。音を超える速度で降り注ぐ槍は、衝撃波を持って攻撃する。その時に発生する衝撃力は100tを超えており、それが雨のように降り注いでいた。腕に溜まる疲労をロストエネルギーによる回復では補えきれず、徐々に限界が近づいていた。
ボールスは剣を上に向け、剣先で円を描くように回転させることで擬似的な盾を作っていた。その盾は0.001秒の間隔で降り注ぐ盾を、1本残さずに全て弾き飛ばしていた。だが、ベディヴィアと同じく限界が近づいていた。
(この威力……、おかしいだろ……!!)
ボールスとベディヴィアは、ただただその攻撃に耐えるしかなかった。
3秒後、2人に限界が近づいているであろうと予想した雷風は、槍の雨を継続させながら大和にロストエネルギーを込めた。自分の前後にいる2人に向けて、核だけを確実に貫けるように対象を細かく絞り、ロストエネルギーを大量に込めた小さな魔法円を1つずつ生成した。その時、雷風は2人に鋭い視線を向けた。
魔法円を生成した瞬間に光線を発射したため、鋭い視線にいち早く反応したベディヴィアは、自分の方へ飛んでくる光線を防ぐために、光線の進行方向に硬い材質の盾を大量に生成した。光線の破壊力は凄まじく、生成した盾を容易く貫いていた。その一方的な状況ながらも、上から降り注ぐ槍の雨を防ぎながら大量の盾を生成し、盾を生成できる幅のギリギリでなんとか光線を防ぐことに成功した。
(危ねぇ……。……ボールスは!?)
急いでボールスに視線を向ける。すると、ボールスは槍の雨の餌食となっており、核のあった部分には風通しの良さそうな穴が空いていた。体が消滅していく中、雨に打たれて消滅する速度が増していく。
「クソがァァァァアア!!」
ベディヴィアの怒号は雷風の耳には届かなかった。雷風は槍の雨を止ませると共に、ベディヴィアの目の前まで走って斬りつける。ベディヴィアは上に向けていた盾を消し、新たに盾を生成して大和を止めた。
「貴様ァ!!」
「人は皆等しく悪であると知れ。それは人造人間も同じく、な」
「黙れェ!!」
ベディヴィアは盾を使って大和を押し上げた。その隙に盾を消し、槍を生成して両手に持って雷風の核を狙って突いた。殺意を込めたその一撃だったが、その攻撃を読んでいた雷風には届かなかった。
(甘いな)
雷風は大和にロストエネルギーを込め、マルーンの瞳を漆黒の瞳へと戻すと、槍の先端に向けて盾を生成して、下から突き上げるように発射した。それによってベディヴィアの体勢が崩れた。
「送ってやる」
雷風は前に踏み込むと、押し上げられた大和を回転させながら投げた。綺麗な円を描きながらベディヴィアの核めがけて放たれた大和を、ベディヴィアは止める術はなかった。盾を生成しようにも、生成しようとした瞬間には既に体が真っ二つに切断されていたからだ。
雷風は鞘に取り付けていたパネルを1度触れると、大和は回転を即座にやめて一瞬のうちに鞘の中に入っていた。
(後、一体)
雷風はランスロットのいる方を向く。確かな殺意を感じたランスロットだったが、アロンダイトに込めていたロストエネルギーが一定以上溜まった。そのため、ランスロットはアロンダイトを上へ突き上げ、振り下ろすように構えた。
「消えろ」
その一言と共にアロンダイトを振り下ろすと、アロンダイトを振った時に生まれた残像からとてつもない規模の光線が放たれた。それを見た瞬間、雷風は光線の規模に驚いていた。
(どうなってんだよこの光線……。この街がどうなってもいいってことかよ……)
雷風はその場で跳躍し、光線による攻撃を回避すると共に大和にロストエネルギーを込め、5つの魔法円を生成した。魔法円から放たれた光線はランスロットの核に向かう。ランスロットはアロンダイトを用いて、4本の光線を順番に弾いた。そして、最後に飛んできた光線を宙返りして避けたのだが、その時既にランスロットの核には大和が触れていた。
(いつの間に……!!)
雷風は大和を振り抜き、ランスロットの核を斬った。雷風はランスロットがいた建物の屋上に着地すると、アロンダイトから放たれた光線によって抉られた地面を見ていた。
(被害がこの程度でまだよかった……。とりあえず、霞が寄ったリヴァプールに向かうか。何かあるかもしれない)
雷風はゆっくりとだが、リヴァプールに向かうためレンタカーを借りに歩いて向かった。




