表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
150/206

150GF ストラスブール侵略作戦 その7



 盾羽は体と刀にロストエネルギーを纏わせ、突きの体勢に入ると地面を蹴って走りだす。マルクトは、アラミスには劣るもののそれなりの速度で走ってくる盾羽を見て、マルクトは口角を上げて口だけで笑う。

 盾羽はマルクトの目の前まで近づき、ロストエネルギーを纏わせ強化した突きで攻撃する。それをマルクトは、ロストエネルギーを纏わせた刀を上から振り下ろして止める。



 (何がしたい……?)



 マルクトは、盾羽がアラミスと同じ戦い方をしてくることに疑問を感じた。アラミスと同じ戦い方をすれば、同じ結果が待っているだけだと。そして、マルクト自身はこの攻め方に対する対処法を知っている。何がしたいのか、理解不能だった。

 盾羽は剣先がマルクトの刀に触れた瞬間、先の尖った盾を3枚生成すると、ほぼ同時にそれをマルクトの(コア)に向けて発射した。盾羽自身は刀を押し、その反動で体が後ろに上がったことを利用して、刀の頭の部分を足で押し、更に後ろへ移動しながら回転していた。



 (武器を再度生成するか)



 マルクトは、盾羽が盾を生成する速度が明らかに速いことに気づき、武器やそれに関連するものの生成の能力だと考えた。その中でも盾は生成しやすい形として、盾の形を変えて盾のまま攻撃しているのだと自身の中で結論づけた。マルクトは1枚目の盾を刀を振って弾くと、刀を振った先に刀を持っていない方の手を持ってきていた。その手にすぐに持ち替え、2、3枚目の盾を一気に弾いた。

 盾羽は着地すると、もう一度刀を生成して手に持つ。その際、大量の盾を同時に生成しており、構えるとすぐに盾を発射する。それを追いかけるように盾羽は走り、盾と同時に攻撃を仕掛ける。



 (持ち替え……、両利きですか……!!)



 盾羽はマルクトの芸当を見て、上から刀を振り下ろした。マルクトもそれに対応するかのように刀を右手に持ち、左から外へ刀を振る。刀同士はぶつかり合って鍔迫り合いの状況になるが、隙だらけとなったマルクトの両横から大量の盾が襲う。マルクトは大量のロストエネルギーを刀に込めて盾羽の刀を盾羽ごと押し、全ての盾を一瞬にして弾く。

 アラミスはロストエネルギーを纏わせ、能力を発動する。盾羽と刀を交えているマルクトの(コア)に照準を絞り、更に細剣の剣先にロストエネルギーを込め、そこにも能力を発動させる。



 (この直線上に盾羽の(コア)がなくなった瞬間、私は撃ち抜く)



 低姿勢で突きの体勢に入っていたアラミスの静かなる殺意は、マルクトに気づかれることはなかった。光速の世界に到達しているアラミスは、盾羽が動く時間は悠久に近い時間だった。

 体感時間で言えば30分後、細剣の剣先が煌めくと共に、盾羽の(コア)が剣先とマルクトの(コア)の直線上から外れた。



 (今……!!)



 剣先に集まった光は閃光となり、マルクトの(コア)めがけて閃光は空間を駆けた。閃光を放った瞬間、アラミスは光速の世界に入ったまま走り出した。



 (盾羽はちょっとだけど右に移動してる。なら、私は左から攻撃した方がいいかな)



 アラミスは光速の世界で使用している方の能力を解除し、突きをマルクトに浴びせる。だが、アラミスの突きよりも先に、マルクトは閃光を弾いていた。



 (雑魚風情が……!!)



 マルクトは閃光を弾くと、左右から同時に攻撃しようとしてくる盾羽とアラミスの攻撃方法を見た。盾羽は右から左手で持っている斧で胴体を一刀両断するつもりで、アラミスは両断した後の(コア)を適切に破壊するために突きをしようとしている。マルクトは盾羽の攻撃を、振り上げた刀を持ち替えて斧を上から突き刺した。盾羽は新たに武器を生成しようとするが、それより前にマルクトは刀を持ちながら後ろへ跳ぶ。アラミスの突きは不発に終わり、再び睨み合う状況になった。

 マルクトはその睨み合う状況をすぐに破り、走り出してアラミスの(コア)を狙って刀を横から振る。それをアラミスは細剣で防ぎ、激しい攻防が始まった。



 「どれだけやったところで、俺には勝てん」


 「まだ……!! 終わりじゃ……!!」



 盾羽とアラミスが必死に攻防をしているのに対し、マルクトはさぞかし余裕そうに攻防を行う。2対1という不利な状況ながらも余裕そうに戦えているのには、ひとつの理由があった。それは、能力の使用による効果である「支配した者の能力を使用することができる」というものである。動体視力強化、身体能力強化、防御力強化の能力の3つを、この攻防が始まった際に上乗せし、余裕そうに戦っていた。もちろん、その3つの能力を上乗せしたことでしっかりと余裕が現れ、2人の隙を同時に生むことに成功した。



 (……ここで殺すのは勿体ないか)



 マルクトは走り出し、刀を鞘にしまうと2人の体に触れてロストエネルギーを流し込み、能力を発動した。



 「さて、死なん程度に殺し合え」



 マルクトの命令は作動し、盾羽とアラミスの目は赤く染まるとゆっくり歩いて距離を離す。ある程度離れると、前触れもなく2人は走り出し、互いの武器を使って攻撃しだした。



 (発動の手応え的に10秒か。中々にロストエネルギー総量が多いな……)



 9.5秒時点、盾羽とアラミスは鍔迫り合い状態になる。すると、そこで洗脳による効果が同時に切れ、2人は上半身を固定したまま下半身を浮かせ、盾羽は生まれた空間に盾を生成し、盾を変形させることによって反発させ、2人を高く跳躍させた。



 「こうなることはだいたいわかってたよ」



 盾羽は大量に盾を生成し、マルクトの(コア)めがけて追尾性能を加えた状態で放った。盾は様々な方向からマルクトに向かって発射され、360度から盾が来ていた。

 アラミスは盾羽に足場となる盾を作ってもらい、下向きになっている盾を使って急降下をしていた。そして、体勢を整えるとマルクトの(コア)に向いている盾に足をかけると、突きの体勢に入る。ロストエネルギーを纏うことで光速の世界に入ったアラミスは、盾を蹴ってマルクトに向かって発射されている盾の間を縫い、(コア)へ突きを放つ。



 (大量の攻撃を……!!)



 アラミスは最初の突きは弾かれたが、着地すると共に大量の突きを移動しながら放つ。それは自身でもどれだけ突きを放ったかわからないほどに。

 どれだけ突きを放ったかわからなくなって更に突きを放った時、アラミスは通常の速度へと戻した。マルクトは光速の突きに対応している状態だと予想したため、通常の速度には逆に対応できないと思ったのだ。

 盾の雨が止み、大量の針の襲来も止んだ。支配による強化(バフ)ももうそろそろ第1陣が切れる。流石に撤退するタイミングだな……。それに中々楽しめたしな。



 「そろそろ帰るとする」



 脱力したように立つマルクト。何もなかったかのように刀を持っていない手で頭を搔くのだが、それは盾羽とアラミスにとって圧倒的な強者にしか見えない素振りだった。マルクトはダアトの戻るだろう場所へ戻り、ダアトを待った。

 ダアトが戻ってくる。ダアトはかなり疲弊したような様子だ。マルクトはそんなダアトを見て、上から見下ろすように声をかける。



 「時間だ。戻るぞ」



 そう言うと、ダアトと共にマルクトはドイツへと戻っていった。

 盾羽とアラミスは、慧彼と合流していた。そして、周りを見渡していた。



 「……この岩、どうしよ」



 慧彼が独りでに言葉を零す。すると、盾羽はその言葉に返答する。



 「地道に全部壊して、環境を元通りにしないといけないですね」


 「……じゃ、やりますか」



 アラミスの言葉と共に、ロストエネルギーで作られた岩の撤去が開始された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ