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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
149/206

149GF ストラスブール侵略作戦 その6



 アラミスは、何故マルクトが自身の速度に反応して刀を動かせれているのかわからなかった。前に戦った時もそうだが、光の速度に到達している自分は、言わば光速で移動しているということ。光速の世界に到達している斬撃を、ただの一振で防げるはずがない。そして、並大抵の衝撃波を生み出しているわけでもなく、普通なら空間に影響を与えるレベルの衝撃波である。マルクトは、その規模の攻撃をたった一振で耐えていたのだ。



 「どれだけ速く動こうが、俺には関係ないことだ」



 マルクトは、アラミスがどれだけ速く動こうが関係ないと言う。アラミスはマルクトがどんな能力を持っているのかは知っているが、何故どれだけ速く動いても関係ないのかわからなかった。



 (マルクトは確か「支配」という能力を持っていたはず。では何故、速く動いても意味がない……?)



 アラミスは、速く動いても関係なく対処されてしまう理由が、マルクトの能力である「支配」に関係すると考えていた。ロストエネルギーによる感覚強化なら、どれだけ速くても光速には到達することはできない。精々音が限界である。なら、支配に関係する何かの効果なのだと結論付けるしかない。

 盾羽もまた、マルクトの発言について考えていた。だが、盾羽はマルクトの能力について何も知らない。そのため、アラミスにマルクトの能力について聞くことにした。



 「アラミスさん。マルクトの能力って……?」


 「支配っていう能力。能力の限界はわかんないけど」


 「なるほど……」



 盾羽は、マルクトの能力の限界を考察することにした。どこまでを支配することができるのか。それは支配できる最小サイズから、最大サイズまでの「大きさ」という観点と、体という物理的なものから、感情や記憶という概念的なものまでの「物体、非物体」という観点の2つの観点である。



 (恐らく、支配しているのは概念的なものではなく、物理的なもの。支配というのだから、概念的なものもできるのだろうが、光速に達した速度に対応できているのだから概念的なものは考えられない。となれば、考えられるのは物理的なもの)



 となれば、考えられる可能性は大きさということになる。とても大きな何かを支配しているのか、それともとても小さなものを支配しているのか。はたまた、支配という能力に何かしらの追加効果があるのか。



 「考えているのか。いいだろう。時間をやる」



 マルクトは種が割れることを全く気にしなかった。それに加え、マルクトは2人が考えているところを少し楽しそうに見ていた。俺の能力は種が割れたところで脅威ではない。なんなら深く考えさせれるからな。

 盾羽は、ひとつ引っかかったところがあった。それは「支配という能力を発動した者に関係する能力を、何かしらの形で自由に使用することができることが、光速に対応できることに関与しているのか」というところだった。



 (ダメ元ですけど、聞いてみる価値はある……)


 「支配という能力ですけど、その能力を能力持ちの人造人間に発動した場合、発動した相手に関する能力を、何かしらの形で自由に使用することができることが、光速に対応できることに関与していますか?」



 盾羽はマルクトに質問してみた。まともな回答が返ってこないことは既に悟っているかのように。すると、マルクトはまともに返答した。



 「していない」



 すると、盾羽はひとつの結論に辿り着いた。その考えを、マルクトに答え合わせのような形で話す。



 「ならわかりました。まず、支配という能力で自身の細胞ひとつひとつを個別に支配している。脳からの命令と、能力による命令によって反応速度が格段に上昇し、更に体に纏わせているロストエネルギーによって擬似的な光の速度で対応するということを可能としている。ということですか」


 「正解だ」



 ロストエネルギーは、地球の(コア)から抽出した電気のような物質。光のような物質となっているが、ロストエネルギーを構成する異質な原子は全て光の速さで動いており、まとまりとして考えられているロストエネルギーも、ひとつひとつ光の速度で移動している。しかも、大半がロストエネルギーで構成されている人造人間の中だ。能力を発動したロストエネルギーは光の速さで伝わり、光の速さで纏っているロストエネルギーへと移動する。これをマルクトは応用し、アラミスの速度へと対応していたのだ。

 盾羽はアラミスの顔を見て、頷く。アラミスも盾羽の顔を見て、頷く。それが何を意味するのかは本人にしかわからないが、何かしらの戦略の戦う合図なのだろう。2人は改めて戦闘態勢に入り、マルクトの無防備な姿を見る。

 アラミスは体にロストエネルギーを纏わせ、纏わせたロストエネルギーに能力を発動させる。光の速度へとすぐに到達したアラミスは、再び構えて走り出す。



 (わかってる。わかってる。なら、違う考え方で攻めればいい)



 目の前に現れたアラミスが放つ突きを、マルクトは刀を使って防ぎながら体を逸らし、アラミスの勢いをそのままにして自分は動かずに距離を取った。

 アラミスは地面に着地すると、そのまま再度能力を使用した。振り返ると後ろを向いているマルクトがいたため、アラミスはそこに走って斬ろうとする。



 (能力は1つしか使ってないが、能力によって得られる効果は2つ同時に使用することはできる)



 マルクトは危険察知の能力を使用し、背後から攻撃してくるアラミスを察知した。すぐに刀を振ってアラミスの攻撃を止めた。一方のアラミスは、背後からの防御不可能な攻撃を防がれたことに驚きを隠せなかった。



 (能力の同時使用……!? いや、擬似的になのか……)



 アラミスは3回ほど様々な角度なら攻撃を仕掛けるが、マルクトはそれを全て止める。アラミスは1度盾羽の元に戻り、体制を改めることにした。



 「2人共近接戦で攻撃しましょう」


 「2人共ですか……?」



 アラミスの提案を一瞬受け入れられず疑問に思ってしまったが、逆にそれが効果的な可能性があるのでは? と考えた。そのため、盾羽はそれを受け入れた。



 「わかりました。連携を意識しましょう」


 「了解」



 盾羽は戦闘態勢に入り、マルクトは左腕を上に伸ばした状態で振り、勢いよく振り下ろす。



 「次は2人か。楽しませてくれよ?」



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