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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
146/206

146GF ストラスブール侵略作戦 その3



 「いつの間に……」



 盾羽の合図があればすぐに動けるようにしていた慧彼とアラミスは、マルクトがその場にどうやって現れたのかわからなかった。瞬間移動をして現れたという表現よりかは、「移動スビードが桁違いに速い」という表現の方が近い。そんな感じだった。



 「アラミス、あいつどうする?」



 慧彼は槍を生成し、マルクトに向けて操車しながら話しかける。すると、アラミスは能力を発動した状態でロストエネルギーを纏う。無線を繋ぎ、盾羽が聞こえる状態で慧彼の質問に答える。



 「私と盾羽であいつを殺る。盾羽と戦ってたやつは慧彼が」


 「わかった」


 〔了解〕



 盾羽はその時既に攻撃に移していた。盾を生成してダアトに向けて一気に放ち、自身も跳んで一緒に距離を縮める。ダアトはそれにちゃんと順応し、盾を全て弾いていた。その状態での通信だったため、盾羽は一旦攻撃から手を引くことを最優先とした。ちなみにマルクトは、その横で慧彼が発射している槍を片手で、無表情で息切れせず全て弾き飛ばしていた。

 ダアトは盾を弾いた後、そのまま盾羽を攻撃しようと刀を振った。それを使って地面に着地しようと考えた盾羽は、まず向かってくる斬撃を防ごうと刀を振り、ダアトの振る刀に当てた。だが、ダアトは盾羽の振った刀に触れる瞬間にロストエネルギーを集中させ、刀を強く握って鍔迫り合いになる前に、盾羽の持つ刀を弾き飛ばした。



 (上手くいった)



 ダアトは回転しながらバタフライジャンプを行い、盾羽の頭頂部の上に足の甲が来るように跳んだ。そしてそのまま力強く足を垂直に下ろし、頭をゴツゴツした岩の上に強く叩きつけた。そのまま回転を続き、盾羽の体が浮き上がっていることを睥睨すると、叩きつけた足を軸足にしてもう片方の足の踵で盾羽の頭を蹴り飛ばした。



 (強い……。けど、慧彼なら潰せます)



 盾羽は慧彼と風月のいるところに蹴り飛ばされ、能力発動可能時には体が地面に当たりそうだった。そのため、発動可能になった瞬間に柔らかい盾を背中と地面の隙間に生成し、衝撃を最小限に抑えた。

 盾羽は盾に衝撃を抑えてもらうとすぐに立ち上がり、慧彼にダアトのことを話した。



 「普通に強いです。なので、手数の多さを意識して戦ってみてください」


 「手数か。確かに、そういうの私が一番得意だし」



 慧彼はこれまでと同じように、串刺しと同じような空間から槍を取り出すように生成し、銅金の部分を持つと一気にその空間から引き抜いた。引き抜いた槍を少し回転させながら振ると、槍を片手で持って剣先をダアトに向ける。その状態のまま、盾羽に言う。



 「任せといて」



と。慧彼はカッコつけたかった。

 ダアトは慧彼に槍の剣先を向けられる。マルクトは慧彼とダアトが戦うのだろうと瞬時に理解し、岩から飛び降りて地面に着地した。ダアトもまた、慧彼に喧嘩を吹っかけられたため、その喧嘩は買う気でいた。そのため、ダアトはマルクトに感謝していた。



 (ありがとうございます。マルクトさん)



 慧彼はダアトが自身に明確な殺意を向けたことを感じると、ダアトと同じ目線になる高さまで跳躍した。ダアトと同じ目線に近づくほどスピードはゆっくりとなり、同じ目線になると最高到達点に到達し、それ以上上には行かなくなる。慧彼は足元に2本の槍を生成し、その上に乗りながら剣先でダアトの(コア)を狙うように槍を構える。



 (見え見えだぞ……?)



 ダアトは盾羽とは違い思惑が丸見えな攻撃をしようとする慧彼を見て、敵ながら少し心配していた。だが、同時にそれだけの自信があるということ。だからわざわざ「攻撃しに行くぞ」と言わんばかりの挑発を行ったのだろう。ダアトもそれに合わせて構え、攻撃を弾く準備を行った。



 (これは見え見えな攻撃だ。私は近接戦になれば毎回毎回見え見えな攻撃をしてしまう。けど、そんな見え見えな攻撃だからこそ、その攻撃の方向以外からの攻撃は当てやすい)



 盾羽から言われた手数の多さ。それは私にとって1番の長所。この短時間で私なりに手数の多さを有効活用する戦略を考えた。それは、「攻撃の時に生まれた隙にすぐさま攻撃する」ということ。見え見えな攻撃をすれば、それに対策する手段も私にもわかる。だから、その対抗した手段の隙を突きまくる。槍だけに。

 慧彼は足場にしている2本の槍を発射し、慧彼を運びながら音速を超える速度でダアトに近づいた。ダアトは刀を振り上げると一気に振り下ろす。それは、慧彼が移動しながらダアトの(コア)に向かって槍で突こうとしていたからだ。



 (そう簡単に当たるかよ!!)



 刀と槍がぶつかる。その際、込められていたロストエネルギーの量が膨大だったために、大きな橙赤色の火花が散っていた。



 (やっぱりこれだけじゃ諦めてくれないか!!)



 慧彼は力を入れて刀ごとダアトを押し込みながら、ダアトの前方から大量の串刺しと同じような空間から射出するように槍を生成し、ダアトに向けて大量に放った。



 (デタラメだが、数多すぎるだろ!!)



 槍の先端が慧彼の横から大量に現れ、一気に景色を塗り潰した。その状況に驚きと怒りを感じながら、それを一気に慧彼に向けて言葉にした。



 「デタラメ女がァ!!」


 「悪かったね!! デタラメでェ!!」



 ダアトは力を込めて槍を押した。その反動で自分は50mほど後ろに跳んだ。だが、目の前には着地した慧彼と、数え切れないほどの大量の槍。ダアトは瞬間的だがもう1つの刀を生成し、鞘は生成しなかった。



 (やってやりゃあ!!)



 ダアトは目の前に迫る大量の槍を全て弾くつもりだった。生成した慧彼曰く、その槍の総量は1472本とのこと。それが今、ダアトの目の前にあり、慧彼は更に槍を生成しようとしていた。



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