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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
144/206

144GF ストラスブール侵略作戦 その1



 2018年10月3日、午後7時25分。マルクト軍とダアト軍がストラスブールに侵攻。ダルタニャンは能力の影響でその事がわかったため、先んじて慧彼、盾羽、アラミスをストラスブールに向かわせていた。マルクト軍とダアト軍がライン川付近に到着したことを目視で確認した慧彼、盾羽、アラミスは、ストラスブールに流れているライン川の中にある森林保護区で迎え撃つこととなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ドイツとフランスの国境となっているライン川。そのドイツ側に、マルクト軍とダアト軍はいた。ダアトはロストエネルギーによる探知を行いながら移動していたため、カールスルーエにいた時くらいには慧彼、盾羽、アラミスの存在を確認していた。



 (森林保護区……。戦いづらい場所を選ぶ……)



 ダアトは森林保護区に落下地点を絞り、大気圏外に隕石を2つ生成した。隕石は大気圏内に入ることで空気を押し潰し、押し潰された空気は高密度の空気と化して隕石に纏わりつく。その温度は1万を超えており、同時に重力を感じてとてつもない速さで降下を始めた。

 その隕石を森林保護区内で確認した慧彼は、盾羽とアラミスに隕石を生成した者がどこにいるのか探させた。その間に自分は隕石の破壊を試みた。



 (急に現れたということは、恐らくあの隕石はロストエネルギーでできている。ってことは、あの隕石を構成するための(コア)が少なからず存在する。……一旦試してみるか)



 アンバーの瞳をマルーンの瞳へと変化させた慧彼は、2つの隕石に標的を絞って能力を発動した。



 「串刺し」



 その言葉を発して能力を使用するが、その隕石の(コア)に攻撃は発生しなかった。考えられる可能性は2つ。1つ目は、あの隕石は自然生成されているもの。視認できる状況になったから急に現れたとなれば、自分たちの感覚も間違ってはいない。ひとつの錯覚のようなものだ。だが、これは絶対に違う。



 (標的を絞れるってことは、ロストエネルギーはある……)



 慧彼の使う能力の1つ、「視界内にいるものを自動で殺す」というものは、「自分の中にあるロストエネルギー総量の3分の1以下に相当する、ロストエネルギーを内蔵または纏っているものの(コア)を自動で破壊する」というものだ。殺すとあるが、物にも適応はされる。ちなみに今の慧彼のロストエネルギー総量は35280GFである。1つ目の可能性であれば、ロストエネルギーがなければ標的として絞ることができない。だから、1つ目の可能性は違うということになる。2つ目の可能性は、3分の1以上のロストエネルギーが隕石にある。こちらは普通に考えられる可能性であり、慧彼が考えた結論だった。そして、それに対抗する策もしっかりと考えてあった。



 (射程はギリギリだけど……、射出の初速さえめちゃくちゃ上げれば行けるし……)



 慧彼は槍を複数生成し、それらを降下する隕石に向かって射出する。槍は生成して射出するを繰り返して行い、隕石にぶつけて隕石を生成するロストエネルギーを削ぐことで、ロストエネルギー総量を減らしていた。



 「……来た」



 慧彼は槍が当たった時の感覚でロストエネルギー総量を把握していた。それがその値にまで減少したことを目安だが算出した慧彼は、言葉を発する。



 「串刺し」



 その言葉と共に2つの隕石の上に黒い天使の輪っかのようなものが現れ、輪っかの内部が黒く染まった。その輪っかから巨大な槍が射出され、(コア)を貫く。その隕石は巨大な爆発を起こし、周囲に爆音を轟かせて空を爆発の光で覆う。地表には爆風を注ぎ、核でも爆発したかのようなものだった。それは、高度30km地点で起こった出来事だった。

 一方、ダアトは森林保護区内に侵入し、大きな隕石を地表にそのまま生成した。森林保護区内に大きな岩が誕生した瞬間である。ダアトはその上に乗り、能力を応用し刀を生成する。



 「来たか」



 盾羽は槍を持った状態で岩の下に前傾姿勢でいた。そのまま盾羽は岩に飛び乗るように跳躍し、ダアトが視界の正面に来た時に持っていた槍を投げた。



 (武器の生成がこいつの能力か……!?)



 ダアトは思考とは裏腹に、冷静に槍を弾くと居合の体勢に入った。盾羽は冷たい眼差しをダアトに向けながら、空中に盾を踏み場として生成した。槍を投げた時に上半身を前に倒す。それは回転の要領で倒していたため、下半身は少し浮き上がる。浮き上がったその足を伸ばし、盾を蹴ったのだ。それと同時に右手に刀を生成し持つ。その一連の動作を一瞬で行い、ダアトとの距離を一気に詰めた。盾羽は上から振りかぶり、ダアトは居合のように横から振る。2人の持つ刀は激しくぶつかり、盾羽は刀がぶつかる瞬間にロストエネルギーを刀に注いだことで、ダアトの力に勝って刀を地面に叩くように振り下ろした。



 (下がった……?)



 盾羽はダアトの判断に驚いていた。刀がぶつかった時に刀から手を離し、その後の攻撃を回避するために後ろへ下がっていたのだ。

 ダアトは10m程後ろに下がり、盾羽との距離を作った。それと同時に盾羽は岩の上に着地した。



 「何故単独行動を?」



 見渡す限り、ダアトの近くに人造人間の軍隊は見当たらない。それを何かの策略かと考えた盾羽は、その意図をダアトにダメ元で聞いてみた。すると、意外とまともな返答が帰ってきた。



 「人造人間を使って時間稼ぎをして生まれる時間より、時間稼ぎに使う人造人間を形成するロストエネルギーの方が価値が大きいからだ」



 ダアトは盾羽にそう説明すると、さっき作った刀と鞘を消し、新たに刀と鞘を生成した。



 「お前程俺は武器の生成に秀でた能力じゃない。だからこのように、集中しないと武器を生み出せない」


 「……それがどうしたんですか?」



 盾羽は刀を構えながらダアトに聞く。ダアトも刀を構えながら、盾羽の質問に返答する。



 「お前の土俵に合わせる、ということだ」



 ダアトは盾羽を舐めていた。



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