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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
143/206

143GF ブルゴーニュ=フランシュ・コンテ地域



 時は遡り3時間前、ネツァク軍とゲブラー軍がブザンソンを占領していた。占領といっても、ドイツ軍にとって人間の存在は邪魔そのものであるため、占領下にある場所の人間を殺し尽くしている。今、ネツァク軍とゲブラー軍は占領地内にいる人間を隈無く探し、圧倒的な力で殺し回っていた。

 逃げている人の頭を炎で焼き払っていき、心臓を持っていた剣で突き刺して殺すネツァク。空気を圧縮して切れ味のある風を作り、それで逃げている人の足を斬り落として機動力を低下させ、持っていた剣を心臓に突き刺して抉るゲブラー。この2人には躊躇いがなかった。何故なら、占領地内にいる人間を殺すことは「作業」の一環として考えているからである。



 「これが終わったら次はディジョンか」



 ネツァクとゲブラーは合流し、ネツァクは念の為にゲブラーに確認した。ゲブラーはネツァクの目を見て頷き、ネツァクに伝えておきたかったことがあったため話した。



 「ああ。それと、人間の気配がなくなったら連絡よこしてくれ。こっちも終わったら連絡する」


 「わかった」



 ネツァクはそれに合意し、2人はその場から一瞬で姿を消した。それを物陰から隠れて見ていた1人の子供は、息を殺してそこに潜んでいた。視線を消し、殺意を消し、この世からいなくなったかのように気配を消す。



 (人間の気配。……だったら僕もなのか?)



 その子供は、心の中で不安感を言葉として零していた。ただ、気配を消したままである。耳を研ぎ澄まし、周囲から足音が消えていっていることを確認し、体全体に入れていた力を少し抜いた。



 (いなくなった……。なら、どうやってここから抜け出す……? いなくなったとしても、ブザンソンには一定数の人造人間は残るはず……)


 「発、見」



 幻聴だろうか。にしてはハッキリと後ろから聞こえた。恐る恐る、その子供はゆっくりと後ろを向く。するとそこには、自分の体を覆い尽くすほどの体を持ったゲブラーがいた。その子供は顔の色が徐々に青ざめていき、涙を流し始めた。



 「ガキ、お前がこの町最後の人間だ」



 しゃがんで子供の目線に顔を合わせたゲブラーは、その体勢のまま子供の頭頂部に剣を突き刺した。突き刺した時に飛び散った血はゲブラーの頬に付いたが、それに全く反応しなかった。そのままゲブラーはネツァクに無線で連絡を行った。



 〔こっちは終わった〕



 すると、ネツァクは驚いたようなリアクションをした後に返答した。



 〔おおぉ。こっちも今丁度終わったところだ〕


 〔奇遇だな。じゃあ、休憩なしで行くか?〕



 ゲブラーはこのまますぐに終わらせたかったが、一応ネツァクにも意見を聞いておこうということで聞いてみた。



 〔いや、少し休憩してから行こう。人間殺すの疲れるし〕



 ネツァクは人間を殺すことが少し疲れたようで、少し休憩してから行きたかった。ゲブラーはそれを了承し、両軍に一旦の休息を指示した。

 ネツァクとゲブラーは合流し、殲滅された人の死骸が作る道を歩きながら、情報共有と謳って雑談をしていた。



 「人間を殺すのってさ、簡単だけど作業みたいだから疲れるんだよ」


 「まあそうだな。だが、そこに楽しみを見出してみたらいいじゃねぇか。俺はそうやって人間を殺すことに楽しみを見出してる」



 それからかなり楽しそうに会話をしていると、聞き覚えのある声が前から聞こえてきた。2人は正面を見ると、そこにはビナーがいた。



 「何してたんですか?」


 「休憩中のたわいもない会話だよ。ここ占領したからちょっと休憩がてらにな」



 ネツァクはビナーにそう話す。ビナーは納得したような顔をすると、何かを思い出したかのように話しだした。



 「マルクト様が「17時24分までにはブルゴーニュ=フランシュ・コンテ地域全域を占領しておけ」と言ってました。……行けます?」


 「……キツいな」



 2人は口を揃えて言う。すると、ビナーは2人に対して助け舟を出した。



 「……では、私の軍も手伝います。なんとしても17時24分までには占領させなければいけないらしいので」


 「わかった」



 ネツァクとゲブラーは人造人間を集め、ブルゴーニュ=フランシュ・コンテ地域にいる人間の殲滅を命令した。それと共にネツァクとゲブラーもその地域にいる人間の殺害に向かった。



 「行かなくてもいいんですか?」



 ビナー軍の上級階級の者がビナーにそう聞く。ビナーは右肘を左前腕の上に置き、右手を顎に持ってきて考えているポーズを取っていた。そしてとても難しい顔をしており、とても迷っているようだった。それを察したその人造人間は、ビナーのことを気遣って労いの一言をかけた。



 「何があっても、私達ビナー軍の者達はビナー様を裏切りませんよ」


 「あ、ありがとう……」



 ビナーは部下に恵まれたと感じ、静かにその場を去ってドイツへと帰った。だが、ビナー軍はその場に残り、その地域の人間の殲滅にあたっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 2018年10月3日、午後17時20分。フランス東部のブルゴーニュ=フランシュ・コンテ地域全域の占領に成功した。それに伴ってドイツ軍が大きく動き、それを能力で予感していたフランス軍のダルタニャンは、ストラスブールに慧彼、盾羽、アラミスを急いで向かわせた。



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