表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
138/206

138GF パリ臨時急襲戦 その7



 ミカエルは足を後ろに下げ、少し体を前に倒す。後ろに下げた足が地面に触れた瞬間、盾羽と風月に向かって走り出す。走りながら炎の剣をもう一本生成し、上から勢いよく振り下ろす。炎の剣に炎を付与した状態で振り下ろしたため、炎の剣の形がわかりづらくなっていたため、盾羽と風月は炎の剣を1本ずつ防いだ。



 「それで止められるとでも……!?」



 ミカエルは炎の剣を強く握り、盾羽の槍と風月の刀ごと地面に叩きつけようとする。力の増幅具合を感じとった2人は、炎の剣を擦りながらそれぞれの武器を炎の剣の軌道から抜く。



 (今の瞬間的な力の増幅……。能力によるものではなく、ロストエネルギーの循環を加速させたもの……。これからが本気ということですか)



 盾羽はそう感じ、風月にそれをまとめて伝えた。



 「ここからみたいです」


 「マジか……」



 後ろに下がって様子を見ようとする盾羽と風月だが、それを逃がさまいとミカエルは2人を睨む。振り下ろした時のエネルギーを利用して、前宙をして盾羽と風月に近づきながら、炎の剣の刃が盾羽と風月に向いた瞬間に能力を発動し、炎の剣に付与した炎を風月の斬撃のように飛ばす。そのような芸当に、風月は驚いていた。



 (擬似的に私の能力を使ってる……!?)



 風月が斬撃を弾き飛ばした時、炎の斬撃は少し形が変形した。斬撃は削れ、キィンと音を鳴らして吹き飛ばされて消滅する。それが、風月の出す斬撃とミカエルの出す炎の斬撃の違いだった。

 風月の出す斬撃は、「斬撃そのものの物質化」。つまり残像をロストエネルギーを用いて実像として顕現し、それを飛ばす。それに対してミカエルの出す炎の斬撃は、「斬撃の際に生まれる炎のうねりを物質化させたもの」であり、厳密に言えば斬撃を飛ばしているわけではない。原理としては同じだが、風月の出す斬撃は、あくまでも残像をロストエネルギーで無理矢理実像として物質化させているため、音が鳴らない。厳密に言えば微細な音は出ているが、無音と同義だ。それに対してミカエルの出す斬撃は炎のうねりを物質化させているため、空気抵抗が大きくしっかりと音が鳴る。しかも炎という曖昧なものを物質化させているため安定性が足りなく、耐久性が弱い。それでも体は余裕で貫けるが。

 その炎の斬撃を受けた風月は、この攻撃がフェイクなのだと瞬時に理解した。同じく盾羽も、炎の斬撃の火力の低さを感じた瞬間にフェイクだと理解し、周囲への警戒をより強めた。



 (この攻撃はブラフ。あえて私の手から離れた制御の弱い斬撃を放つことで注意を誘い、後ろからの炎の球に気づきにくくさせる)



 盾羽と風月の背後に地道に生成していた炎の球を一斉に放つ。風月がそれにいち早く気づいて処理し、盾羽はそれに気づいて後ろを振り向かずにミカエルに対しての迎撃態勢に入る。



 (まずはお前から楽しませてもらおう。護神 盾羽!!)



 着地すると同時に走り出し、炎の剣を1本消す。身動きが取りやすくなったミカエルは、地面を蹴って加速する。炎の剣を振り下ろせるように構えながら走って、跳ぶ。

 盾羽は自身の周囲に剣、刀、斧、槍の4種類13本の近接武器を地面に疎らに突き刺し、自身の手には薙刀を装備した。



 (さっき突き刺した時に対抗された瞬間のことを考えると、強度は操作できるみたい……。ならあの剣は相当な強度。なら……)



 盾羽は薙刀にロストエネルギーを込め、自身の体からロストエネルギーを放出した。目の前には炎の剣を振り下ろすミカエルの姿があった。刃が迫る瞬間、盾羽は足を1歩後ろに下げて前傾姿勢を作る。そのまま盾羽は正確に刃の中心を、薙刀の剣先で勢いよく突くことで炎の剣の進行を止めた。



 (ここで押す!!)



 盾羽は持っていた薙刀の石突を手のひらで支え、柄の中腹部分を持っていた。支えていた手の肘を素早く伸ばし、薙刀を押し飛ばした。炎の剣を持っていたミカエルも、薙刀ごと空中に飛ばされた。

 空中で翼を横に広げて空気抵抗を大きくし、吹き飛ばされる最低限の距離で勢いを止めた。頭を下に向けて飛ぶことで速く降下し、後ろから斬撃を飛ばそうとしていた風月よりも速く着地した。



 (遅れた……? いや、向こうが速くなったのか!!)



 風月は着地する寸前を狙って斬撃を放ったが、ミカエルが降下する速度を上げたことで着地してから斬撃を放つことになってしまった。それでも、ミカエルは炎の剣を生成し、斬撃を防ぐ時間はそうそうなかった。だが、ミカエルは炎の剣の形を予め決定、一定量のロストエネルギー量を込めることで強度の設定を予め決定することで、イメージの思考時間の短縮を行っていた。ミカエルはそれを行っていたため、体に接触するギリギリで斬撃を防ぐことに成功していた。

 だが、その攻撃はブラフであった。斬撃を当てるために姿を消したと思われていた盾羽だったが、本題は盾羽の攻撃を当てるために風月が斬撃を発生させたのだった。

 盾羽は地面に手を付きながら回転し、ミカエルのいる方向を向いた時に地面を強く蹴り、前傾姿勢を保ったまま走る。盾羽の走る後ろに、4種類13本の近接武器は飛びながら着いてきており、攻撃する準備は万端だった。



 「ここで斬る……っ!!」



 心の底から溢れ出た盾羽の声を、ミカエルは斬撃を弾き飛ばした炎の剣を向けながら盾羽を見て、心の底から溢れ出た声で返す。



 「やってみろ!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ