132GF パリ臨時急襲戦 その1
10月2日、午前10時30分。フランスのパリにて、風月が西北西方向から飛翔して迫る2体の人造人間を確認した。風月は盾羽、ポルトスに連絡を入れ、同タイミングに確認したミカエルとラファエルは即座に戦闘体勢に入り、交戦を開始した。
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パリ上空、ミカエルは大量に火の球を生成し、パリに向けて投下した。投下している間にミカエルとラファエルは、分担して敵を攻撃しようという話の上で、誰が誰と戦うか決めていた。
「私はあのでっかいやつと戦います」
「おおぉー、いつもは私から言うのに積極的だね」
ラファエルが積極的に発言したため、ミカエルはいつものラファエルと様子が違うのか、驚いていた。だが、話を聞くといつも通りのラファエルだった。
「ミカエルさんは絶対に「私は断罪者2人相手するわ」って言うので、先手を打っただけです」
「……いつも通りだった」
風月は居合の型に入ると、そこから能力を発動しながら一気に抜刀する。斬撃は空気を裂きながら進み、大量にある火の球を空中で切り裂くと、斬撃からまた斬撃が発生し、ほとんどの火の球を一気に消した。
盾羽は残っていた火の球を、盾を生成して火の球に向けて飛ばす。盾は残っていた火の球に全て当たり、火の球は爆発すると共に原型を残さず消滅した。
「そっちはそっちで頑張れ」
「わかりました」
ミカエルはラファエルにそう告げると、ミカエルは地上へ降下した。それを見たラファエルは、8mにまで巨大化していたポルトスの方を向いた。
「四大天使の誰だ?」
ポルトスはその巨体から出る大きな声でラファエルに聞く。ラファエルはアトスと戦った時に見せた顔とは違う、本気で戦う時に見せる殺意の籠った顔をしていた。
「ラファエルです」
それを見て聞いたポルトスは口角を上げ、狂気に染まった顔をして返事をした。
「いい顔してるじゃないか」
ラファエルは能力を発動し、水の光線を放ちながらポルトスに接近した。ポルトスはラファエルが近づきてきた瞬間、能力を発動して自身の身体能力を底上げした。身体強化したポルトスの体に水の光線はいとも簡単に弾かれ、ラファエルがポルトスの射程範囲内に入った瞬間、ポルトスは1歩前へ踏み込んだ。
「だが、フィジカルが足りん!!」
ポルトスはラファエルの胴体に強烈なアッパーを入れ、上空まで吹き飛ばした。ポルトスはそこからラファエルを吹き飛ばした高さまで跳び、ラファエルを回し蹴りして地面に叩きつけた。
(フィジカルでどうにかなる次元じゃない……!!)
ポルトスはあの後、自身の能力を雷風に研究してもらっていた。能力である体格操作という能力を、どうにかして活かせないかと。そこで雷風は「でっかくした体を圧縮しろ」と、ぶっとんだ発想を提案した。するとポルトスは見事、それを成功させた。つまり、ポルトスが言うフィジカルは、自身の能力によって30mまで大きくできるはずなのを、8mにまで抑えている分、余った22m分のポテンシャルを8mに全てつっこんでいるということになる。簡単に言うと、前の8m時の身体能力の2.75倍の身体能力が、今のポルトスの身体能力ということである。
通常の2.75倍の蹴りを喰らったラファエルは、パリの建物を貫通して吹き飛ばされていた。ラファエルの視界の先には、着地して追いかけてくるポルトスの姿があり、抵抗することができない体勢だった。
(1回蹴っただけでこの破壊力……)
地面に叩きつけられたラファエルは、立ち上がろうとしたが目の前には既にポルトスが立っていた。ポルトスはラファエルを空へ振りかぶって投げ、すかさず跳んでオーバーヘッドキックの要領でラファエルを蹴り飛ばして、また地面に叩きつけた。
(流石に、俺も同じ土俵で戦った方がいいか)
このままでは自分の納得した戦いができないと感じたポルトスは、自身の能力での最小サイズである248.7cmにまで体を小さくした。
地面に叩きつけられたラファエルはすぐに立ち上がり、さっきよりも威力が強い水の光線を、首を掻くポルトスに向けて一気に放つ。だが、その時既にポルトスは自身の体を強化していたため、また弾かれてしまった。
(あの体……、どれだけ硬いんですか……)
フィジカル厨のミカエルの体でさえ貫く水の光線を、何事もなかったかのように弾くポルトスの体をおかしいと思ったラファエルは、自身のロストエネルギーを大量に込めた水を使って剣を生成した。
「お前、「何とかして俺を倒したい」って思ってるだろう?」
いきなり、ポルトスはゆっくりと歩きながらラファエルに語る。ラファエルは警戒しながらもポルトスの問いに答える。
「ええ。それが私たちの任務ですから」
「……はっきり言おう。今のお前では俺に勝てん」
そう言いながらポルトスは首の骨を鳴らす。少し痛そうな顔をしながら骨を鳴らして言う一言は、ラファエルがイラッと来るものだった。完全に舐めているように見えた。
「なら、数で撃ち破る!!」
周囲にある水分を吸収し、自分の水にする。殺意の籠ったラファエルが展開する水の球は、ひとつひとつに大量のロストエネルギーが込められている、さっきより威力が強い水の光線を放てるようなものだった。
「まあ、そこそこ面白ぇ」
ポルトスは首を軽く搔くと、前傾姿勢に入った。不気味に笑った顔をラファエルに見せて、その場に漂う殺意を狂気で相殺する。体から自然に溢れ出てくるロストエネルギーを、ポルトスは認識している。だが、そのロストエネルギーの放出を止めようとはしない。それは、自身の気分の高揚を止めるのと同じように感じたからだった。




