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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
130/206

130GF カーン強行戦 その5



 ラファエルは激しく、強くアトスに斬撃をぶつける。アトスはそれを剣で受け止めるのに精一杯で、ラファエルは更に攻撃の威力を強く、速度を速くしていっていた。

 ラファエルの蒼眼はアトスに対し強烈な威圧を放っており、そこから更に放たれる殺意は、アトスにおぞましいと感じさせるものだった。アトスはそんな状況の中、必死に反撃のタイミングを見計らっていた。



 (理想の斬撃方向は右と下から。これなら意識外のフェイントが取れるんだがな……)



 アトスは受け止める方向を、ラファエルに気づかれないように誘導する。気づかれる可能性は十分にあるが、アトスは覚悟の上だった。

 アトスは右に持つ剣で左から右に剣を振り、それと同時に左に持つ剣で上から下に剣を振る。ラファエルは咄嗟にアトスの攻撃に対抗するため、右と下から大きく剣を振る。



 (やっぱり来るか)



 アトスは振っていた剣を消滅させ、手を引っ込める。ラファエルはアトスの罠にハマったと思ったが、このまま体を切り裂けるとも思った。 そのため、ラファエルは振る速度を上げ、アトスを切り裂こうとした。だが、アトスは既に次の行動に移すための動作を終えており、短い助走を作ってラファエルに飛び蹴りを放つ。ラファエルはアトスの足を斬り落とすが、アトスは再生ではなく、能力を使って足にバネとフォルティスを生成し、飛び蹴りの勢いとバネによる伸縮の勢いを利用してラファエルを吹き飛ばした。



 (今のは……!?)



 ラファエルはアトスの攻撃を食らった瞬間には、攻撃の原理を理解することができなかった。斬ったはずなのに、再生する訳でもなく攻撃を食らった。



 (生成するのは剣ではなく、剣を構成している物質そのもの!?)



 体勢を崩したラファエルの目の前には、足を再生して突きの予備動作を終えて走っているアトスがいた。このままでは避けることができないと思ったラファエルは、翼を盾代わりとして使った。翼に当たった剣は翼を貫通したが、剣のガードの部分がつっかえたためラファエルには届かなかった。



 (マジかよ……!!)



 アトスはラファエルに攻撃を食らうと予測し、すぐに後ろに下がった。ラファエルは盾に使った翼を斬り落とし、再生すると共に翼を使って空へ飛んだ。

 アトスは地面に着地し、剣を再生する。その瞬間、ラファエルが水を使った斬撃を空中から飛ばしてくる。その威力はさっきの打ち合いとは比べ物にならないほど強く、アトスは勢いになんとか耐えていた。足の踏ん張りが足りず、勝手に後ろに下がる。だが、体勢は崩さずに耐えていた。

 ラファエルは、アトスが体全体からロストエネルギーを放出し、水の斬撃を弾き飛ばした瞬間、垂直方向から降下して、降下した時にできた運動エネルギーを利用して強烈な蹴りを放った。すぐに地面に叩きつけられたアトスは、地面に叩きつけられた時の反動で体が浮き上がった。それを計算に入れていたラファエルは、足にロストエネルギーを集中させてアトスの胸に強烈な蹴りを放つ。



 (これが四大天使か……)



 アトスは壁に叩きつけられ、ラファエルに戦闘不能と見られた。ラファエルはミカエルに無線を介して連絡した。



 〔こちらは終わりました。そちらは?〕


 〔あー、終わったよ〕


 〔では、今からそちらに行きます〕


 〔いいよ、私今飛んでるし〕


 〔そうですか。では私は空中でホバリングしておきますね〕


 〔わかった〕



 ラファエルは空へ飛び、ミカエルに見つかりそうな場所で待っていた。すると、ミカエルはラファエルを見つけると共に声をかけながら近づいてきた。



 「そっちは強かった?」


 「まあ、そこそこ強かったですね。三銃士でしたけど」


 「私は断罪者と戦ったよ。能力的に近接戦向きじゃないのにさ、近距離戦割と強いんだよ。攻撃結構食らったよ」



 楽しそうに語るミカエルと、パリの方向を見るラファエル。ミカエルはラファエルの冷静な表情を見て、肩を回していた。



 「次はパリか」


 「そうですね。というか、この作戦の意図ってなんなんですかね」


 「確かに。僭越の軍を始末したいんだったら直接潰した方がいいのに。なんでわざわざ僭越の敵国を攻撃するんだろう」



 それが気がかりだった。オリバーの意図はいつもわからないのだが、今回はよりわからない。同盟国としてそれなりの行動をしなければならないのか、それとも気まぐれなのか。



 「意図くらい説明してくれてもいいんだけどなぁ……」


 「まあ、とりあえず行きましょう」



 すると、ミカエルはカーンの街を見る。そして一言。



 「人造人間、全滅じゃん」



 2人は翼をはためかせ、ゆっくりとだがパリへ向かった。

 一方、雫は無線を介してパリの防衛をしていた風月と連絡を図った。さっきの攻撃でも無線は壊れていなく、無事に会話することができた。



 〔ごめん。私とアトスはカーンでの迎撃に失敗した。けど、取り巻きの人造人間は基本倒しきったよ〕


 〔ありがと。後はこっちに任せといて〕



 少し間を置いて、雫は風月に質問する。



 〔そっちにいるのって誰なの?〕


 〔私と盾羽とポルトスだね〕


 〔ありがと〕



 風月はそう答えると、感謝の言葉を告げて雫は無線を切った。建物にもたれかかりながらパリの方向を見た雫は、静かに「倒さなくてもいいから撤退させてくれ」と願っていた。



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