13GF 改造という想い
人体実験を行った日から半年が経った。風月は成長しきった体にも慣れ、雷風もその姿に慣れていた。
「雷風~」
風月は雷風を呼んだ。
「どうしたの?」
「銀座行かない?」
風月は一度、雷風と外出したことがあるのだが、その時に雷風が着ていた服を見て、ファッションセンスが無さすぎると思った。そのため、銀座で服を揃えるのだ。
「僕まだ子供だよ? 銀座って……」
「まあいいじゃん」
風月はそう言い、雷風を連れて家へ出た。
雷風は、風月に連れられ銀座へ来た。
「仕事で使う服が欲しい」
「わかった。けど私服も買おうか。雷風ってファッションセンス全くないし」
「酷くない?」
風月は、雷風の服を少し掴んで言った。それにツッコミを入れた雷風だったが、自分の服を見た瞬間、ちょっと首をかしげた。
「……そう?」
「うん。すっごくダサいよ」
「酷いよ姉さん」
「ごめんって」
そのような会話をしながら銀座のとある店に向かっていると、目の前に黒服の者がいた。
「そこの親子。いや、姉弟か」
「……私達ですか?」
周りを見渡して風月はそう答えた。
「そうだ。その姉の方に用がある」
その時、風月は黒服の者に違和感を感じた。それに理由はなく、世間でよく言われる「女の感」というものだ。その違和感を感じ取った風月は、雷風にその事を小声で伝えた。
「雷風」
「何?」
雷風がそう聞き返すと、風月は雷風に指示を出した。
「この建物の屋上まで行ける?」
「行けるけど……。何かするの?」
「何もしないよ。ちょっと話すだけ」
「う……、うん……」
雷風は上に飛び、その建物の屋上まで飛んだ。
「さて、いったい私をどうするの?」
「察しがいいな」
その瞬間、黒服の者達が周りから現れた。
「私達は『ビルド』。お前を人造人間にした科学者がいた組織だ」
「あの科学者さんはどうした」
風月は1ヶ月に一度、科学者のいる研究所へ行き、メンテナンスという名の身体検査をしていた。そのため、1ヶ月ごとに生存確認ができていた。
「奴は昨日始末した」
「そう……」
「ついてこい」
風月は黒服達についていき、銀座にある施設に入った。その瞬間、風月は黒服達に「人造人間に対して即効性のある麻酔薬」を注入された。
「人造人間の記憶を抽出する」
風月はその言葉を最後に、今までの記憶がほとんど消えていた。
だが、その中で雷風に関する話をビルドの者から話されていた。
「貴様の弟である鬼頭 雷風。あの者は暗殺者で最強を決める戦いで優勝した」
「……」
「返事はないか。まあ、話しかけたらこちらを向く程度、あまり外に出す環境てはないか……」
これが、風月の全ての記憶である。
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「っていうこと。まあ、雷風のことは多少わかるの。全ての時間軸に存在する雷風は、私のことを想い続けてくれてた。だから、私は雷風の想いに答える。この意味があなた達にわかる?」
風月の記憶を全て語った時、慧彼達は唖然としていた。
「それじゃ、寝よう」
霞は慧彼達に言い、各々の部屋へ戻った。
(ロスト……、エネルギー……)
盾羽は「ロストエネルギー」という単語に疑問を覚えた。
「あの……、話の中で語られていたロストエネルギーというのはいったい?」
「ロストエネルギーね、詳細は私にもわからない。けど、人造人間の体の中に入ってること位はわかる」
「なるほど……」
風月は、盾羽の質問に対してある好奇心を覚えた。
「なんでロストエネルギーっていう単語に疑問を覚えたの?」
「それは……」
その瞬間、風月はあることに気づいた。
「自覚はないんだ」
「は、はい……」
「……」
風月は、度々話していたビルドの話を思い返していた。
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「おい貴様、起きろ。話をしてやろう」
「……ん?」
「礼儀がない奴め。まあいい、アルクイマ実験は成功した。そのために被験者を4人増やした。無論、6歳の女児だがな」
「……女児?」
「そう。女児だ。女児を4人追加したのだ」
「その名前は?」
「教えてやる義理はない」
「そこをなんとか」
「……では特別に教えてやる。だが、女児の名前を教えるのみだ。それ以上は教えん」
「あざっす」
「無礼な人造人間め……」
「まあまあ……」
「学ぶ脳はないのか。実験で脳が壊れたか?」
「冗談が上手なようで」
「黙れ。教えんぞ?」
「あっ……、すみません……」
「それでいい。女児の名前は、瑠璃 霞、護神 盾羽、裁断 慧彼、満月 白夜だ」
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(そうか……。この子達もまた、私と同じ苦痛を味わい、雷風に魅せられた人造人間達なんだ……)
「あの……、どうかしたんですか?」
「いや、何もないよ」
「そうですか……。では、おやすみなさい」
「うん。お休み」




