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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
129/206

129GF カーン強行戦 その4



 一方、アトスもアトスで大量の人造人間を相手にしていた。大量の人造人間が降り注ぐこのカーンを、アトスの能力で殲滅するのには無理があった。



 (俺1対1しかできねぇんだよ……)



 屋根に着地したラファエルは、アトスの殲滅に不向きな能力を見た瞬間、呆れた顔をしてアトスに話しかけた。



 「1対1がご希望なんですか?」


 「ああ。だが、こいつらが邪魔すぎてお前と戦おうも戦えん」



 すると、ラファエルは天に左腕を伸ばし、更に人差し指を伸ばした。人差し指の先端からは小さな水の球が生成され、次々とラファエルの周囲に小さな水の球が生成された。



 (こいつ……、何をする気だ……?)



 アトスは再び屋根の上に登って警戒し、戦闘態勢に入った。ラファエルはアトスに対して右腕で戦闘態勢をやめさせるようなジェスチャーをしながら言う。



 「落ち着いてください。私は今、あなたを攻撃しません」



 すると、水の球は形を一気に変え、周囲にいた大量の人造人間を一斉に殲滅した。アトスには飛ぶことがなく、アトスは一安心した。

 攻撃を終えたラファエルは、水を回収すると共に、攻撃に使った水を剣状に変形させた。両手に1本ずつ持ったラファエルは、再びアトスに聞く。



 「双剣で相手しましょう」


 「舐めてんのか。自分の得意な戦法で戦え」



 アトスは「舐められている」と思った。だが、ラファエルは当たり前かのように言う。これまでの行動から、アトスは少し考え方を改めた。「舐められているのではなく、ただの器用貧乏なだけだ」と。



 「では双剣で戦います」


 「……双剣が得意なのかよ」


 「ええ」



 すると、ラファエルは踏み込むと共にアトスに向けて右に持つ剣で突いた。アトスは剣先をビタビタに合わせた突きでラファエルの勢いを殺すと、ラファエルは一旦距離をとるために剣を押した反動を使って後ろに下がった。



 (この見た目で結構手練なのかよ……。多分だが、向こうの方が身体スペックとか能力、ロストエネルギー総量は上。技量で上回るしかないのか。なら、俺は積極的に技量勝負に持ち込むしかないってことか)



 アトスは屋根の上を走って近づき、飛んで上から剣を振り下ろした。ラファエルは下から斬り上げるように剣を降って剣同士を打ち合わせた。ラファエルは瞬時にもう一本の剣を(コア)めがけて、下から突き上げるように突いた。その動きを読んでいたアトスは、もう一本の剣を屋根に突き刺し、その剣を押す反動で体を後ろへ下げた。

 地面に着地したアトスは、さっき使っていた剣を消し、新たな剣を生成した。



 (経験から避けることはできたが、剣の打ち合いなら普通にパワー差で負ける……)



 ラファエルが屋根から降りてきた。アトスとの距離はおよそ50m。一般的な路地なため、横幅があまりない。そのため、剣の技量が必要となる場面だった。そこをアトスは選んだのだが、アトスの作戦にはひとつ、懸念点があった。



 (あいつの能力は恐らく水。操ったりする感じだから生成はできないと見た。じゃあ、あの剣は水の形を変えたもの。触った感じ液体を空気の膜で覆って剣状にしているって感じか)



 ラファエルは水を使っていたため、アトスは水を操る能力だと見た。恐らく、水蒸気から水を集めて使用しているのだと思われるのだが、ラファエルの手中にある水は蒸発しない。そのため、1度自分が手に入れた水は、自分が手放すまで自分の水として使用可能というものだろう。と、アトスは予想した。



 (でだ、水ってことは自由に形を変えれるはず。それに応じて空気の膜も変えれるってことだ。つまり、狭かったら剣の形を変えて対応することができるってことだ)



 水は入れ物によって形を自由に変える。球形のツボに入れば、水は球に見える。三角錐のツボに入れれば、三角錐に見える。つまり、剣の形を自分の思うように変えれば、それに応じて水の形も変わるということ。それが瞬時にできるのだとしたら、この路地は自分が逆に不利になるということだ。



 (賭けだな)



 アトスは剣を構える。ラファエルはそれを見て、剣を構える。互いに勢いをつけた状態での突きを予想させるような構えをとると、同じタイミングで地面を蹴って走り出した。剣先は互いにぶつかり合い、そこから激しい剣の打ち合いが始まった。



 (向こうが俺の突きに合わせてきた……。さっきのだけで理解して覚えれるのかよ。化けもんじゃねぇか)


 (彼はパワーがないものの、技術は確かにある。だからこの激しい打ち合い、パワーを必要とするこの状況なら私は有利になれる)



 ラファエルの読み通り、アトスは徐々に押されていた。そこで、アトスは剣を持つ力を完全に抜き、斬撃を躱すことを優先した。片方の力が予想以上にかかったしまったからか、ラファエルに少し隙が生まれた。これを狙ったアトスは持っている剣を手ごと斬り落とした。



 (これでこいつの手中から外れた……)


 「残念でしたね。私は「範囲100m以内の水分を自在に操る」能力です。打ち上げた水はまだ100mに達していない」



 形を変えた1本の剣で2本の剣を一瞬封じたラファエルは、後ろに飛びながらさっきまで持っていた剣を水に戻し、宙に舞った剣を小さな水の槍に変え、アトスに向けて発射した。



 (……嘘だろおい)



 上を見上げたアトスは、目の前にある大量の水の槍を見ていた。アトスは前進することで水の槍の落下範囲外に出たのだが、正面からはラファエルが迫っていた。



 (打ち合いか……)



 アトスは打ち合いを強いられ、再び激しい打ち合いに入った。金属音が周囲に鳴り響き、剣を振ることで風が発生し、周りには埃が舞っていた。



 「どうするんですか?」


 「どうするもクソもねぇよ」



 アトスは打ち合いをしながら、ラファエルに無理矢理隙を作る方法を考えていた。



 (さっきやったフェイントは多分通じない。……自傷フェイント。やるだけやってみるか)



 アトスは「自傷フェイント」という謎の作戦を思いつき、それを実践するために早速行動に移そうとした。だが、目の前には自分と打ち合っているラファエル。攻撃の手が止むことはなく、ただタイミングを探すしかなかった。



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