123GF ケルン事変 その4
「やってやろうじゃねぇかァ!!」
ケセドがそう叫ぶと同時に両手を大きく広げ、能力を発動した。雷風の四方に、雷風に噴出口を向けた状態の火山を生成する。生成した瞬間、その噴出口から大量の炎が噴射して雷風を襲ったのだが、雷風は上に飛んで回避した。
(やっぱりそこしかねぇよなァ!!)
ケセドは雷風の動きを限定し、それに合わせて飛び蹴りをみぞおちに当てた。その状況に直面した雷風は、咄嗟に打開策を考えて実行した。まず、ケセドの右脚を細切れにし、大きく勢いを殺すと共に少し間を開けることに成功した。
コクマーはその2人の動きを見て、雷風の体に合わせて地面を勢いよく隆起させた。隆起させた地面は雷風の腰に直撃し、上へ吹き飛ばされた。雷風が隙間を空けたことを利用し、ケセドが地面にぶつかる時に地面を液状化させ、ケセドにできるだけダメージが行かないようにした。
地上500mまで飛ばされた雷風は、刀を鞘にしまった。そこから雷風は、鞘ごと刀を腰から抜く。
(刀を改造してて正解だったな……。アトミックアニーにちょっと構造が似てるが、俺にしか使えんようにしてるから、これから溢れ出る光線は次元が違うぞ。名前は……、大和でいいか)
雷風は大和にロストエネルギーとラーシエンを込めると、鞘と鍔の部分が連結すると共に鞘の部分にトリガーが現れる。雷風は躊躇なく、地面に向かってトリガーを引いた。鞘の先から放たれた光線は、ケルンの住宅街にいた人の家がギリギリ入らないくらいの半径であり、およそ5kmは離れていた。つまり、半径5kmの円形の光線が地上に降り注いだということだ。
(奴らはまだ死なねぇだろう。だが、どのくらいの実力なのかはだいたいわかった)
雷風は実力を図ることができたのか、本気で殺す目をして降下を始めた。降下している途中に大和を腰にしまった。
着地すると、ケルンは更地と化していた。建物は消え、隆起させていた地面も消え、液状化すら無効化して。雷風は大和に再びロストエネルギーとラーシエンを込め、抜刀する。
ケテルとコクマーは更地の中、満身創痍で立っていた。光線によって負傷した体を修復しようと、覚醒コマンドを解除してロストエネルギーを回復に全て回している。
(なんだよあのバカ火力は……)
コクマーは雷風の馬鹿げた強さを、本部に連絡しようと無線を繋いだ。その少しの仕草を雷風が見逃す訳もなく、アクセルモードに入ってコクマーの頭上へ飛び、頭ごと核を大和で突き刺した。もちろんコクマーは即死し、雷風は消えていくコクマーの体から無理矢理大和を抜く。右手で頬に流れる1粒の汗を拭うと、アクセルモードを解除した。
ケテルは自分の体を回復させるのに集中しており、コクマーの死ぬ瞬間を見ることができなかった。突き刺した時に生まれた鈍い音を聞いた瞬間、ケテルはコクマーのいた方を向いた。すると、そこに立っていたのは雷風で、雷風の足元からは塵となっていくコクマーの姿が。
かつての戦友があっという間に殺されたその瞬間を見てしまったケテルは、我を忘れるかのように無理矢理体を全回復させた。
「覚醒コマンド、18150410」
ケテルは覚醒コマンドを唱え、体内にあるムドゲアリムス機構の活動を活性化させた。それによって生まれるロストエネルギー量は、さっきの量とは比べ物にならないほど多かった。だが、このロストエネルギーを量を見た雷風は冷静だった。
(俺よりまだ少ねぇわ)
雷風はケテルが放出している量から察して、ロストエネルギー総量を「推定5万GF程だろう」と予測した。だが、雷風のロストエネルギー総量は約10万。たかが1体の人造人間が本気を出しても、ネイソンが生み出した人造人間の王、真祖には適うわけがなかった。
ケテルは雷風を火山の中に入れるように火山を生成し、噴出口を全て雷風に向けた状態の火山を大量に生成した。そこから間髪入れずに炎を勢いよく噴射する。だが、炎が雷風に届く前に火山が全て綺麗に斬られ、崩れ落ちていく。
(どこでも生成できるって感じだろうな)
雷風は火山を斬った瞬間に、ケテルの元へと近づこうと地面を蹴って走る。そんな雷風を見て、ケテルは雷風の進行方向から火山を生成し、雷風に噴出口を向けて炎を噴射させる。だが、雷風はそれを全て予測したかのように大和を回転させて擬似的な盾を作り、速度を落とさず進む。そして、作った火山はすぐに消えていく。
(こうなったら……)
ケテルは自分の背中に火山を生成し、空中に逃げようとした。地面に噴出口を向け、噴出口から勢いよく炎を噴射することで体が吹き飛ばされ、空中に逃げることに成功した。
雷風は空に飛ぶケテルを見る。
(大和はちょっとタイムラグがある。……じゃ、あれだな)
雷風は大和を鞘に入れ、居合の姿勢に入る。そして、風月のフェイルチーターを触り、抜刀した。見えない斬撃はとてつもない速度で飛び、かなり離れたはずのケテルの核を一撃で仕留めた。瞬きする間にケテルを仕留めた雷風は、ロストエネルギーを使った探知を1度行った。
(敵はいない。よし、次の街行くか)
雷風はケルンを後にし、ドイツの奥地へと足を進めた。
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ドイツ軍最高司令本部にて、突如「ケテルとコクマーが何者かにより殺害された」という情報が入った。その情報を聞いたマルクトは、冷や汗をかきながら悩んでいた。
「人造人間による暴走がトリガーになったか……。いや、あの2人を倒せるとなったら強くなりすぎだ……。そこまでの潜在能力があれば流石に馬鹿でも気づく。まさか……」
マルクトは現在、暴走させたイギリス暗部による犯行だと考えていた。
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一方、自分の防衛地域にいたビナーは、雷風が近くにいることを第六感で感じていた。急に振り向いたため、近くにいたビナー軍の人造人間は焦っていた。
(雷風……?)
「あの……、どうかしました?」
「あっ……、何もないよ」
現在、10月1日、午後8時2分。




