12GF 人体実験という苦痛
「君が応募してくれた鬼頭 風月で合っているかい?」
風月は待ち合わせ場所で待っていると、白衣を着た者が複数人いた。
「はい」
「ではついてきてください」
白衣を着た者達についていく風月は、ある建物についた。
「ここが我らの施設です。風月さんは、この奥にある装置に入ってもらいます」
風月は白衣を着た者達に連れられ、施設の奥へと進んでいった。すると、そこには巨大な装置があった。
(これが……、人体実験の装置……)
「風月さん、君にはここに入ってもらいます」
巨大な装置の中央部分に、風月は無理矢理入れられ、体を器具で固定された。
「では、始める」
その合図と共に、風月が入っている装置の中に特殊な液体が入れられた。
「体内にロストエネルギーを注入」
その言葉と共に、風月の首元に針が刺さった。そして数秒が経った後、風月の体内にロストエネルギーと呼ばれるエネルギーが流れた。
「ア、ア''ア''ア''ア''ア''ァァァァァァァァァァ!!」
風月の体に激痛が走った。その痛みに風月は叫び声を出し、悶絶躃地しようとした。だが、体は固定されているためうずくまることもできず、体を固定されながら痛みに耐えていた。
「完了」
「次、三日月宗近との接点の設定」
風月の眉間、両肩、両肘、腰、両膝、そして両足の10箇所に、一瞬だが激痛が走った。
「ア''ア''ア''ッ''……」
だが、風月の感覚は既に麻痺していたため、さっき程の痛みは感じなかった。
「完了」
「最後、三日月宗近との融合」
(……最後?)
風月はその言葉を聞き、少し安心した。
「被験者が安心している。すぐに開始しろ」
その指示により、最初に入れられた液体を風月の体の中に入れることで、風月の体は無理矢理19歳まで成長させられた。その時の激痛は果てしない程であり、体を無理矢理引き伸ばされる、つまり「筋肉がつる」、「骨が成長する」ということが、風月の体で10数年かかるはずが、それをたった数秒で終わらせてしまうのだ。
「ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
体には相当な負荷がかかった。だが、風月は意識を失うことはなかった。それは、「雷風を助ける」という確固たる意思があったからだ。
「現在、被験者の身体年齢は?」
「19歳。達成しました」
「では、三日月宗近と被験体の融合を開始する」
その言葉と共に、風月の入っている装置の中にあった三日月宗近が液体となり、風月の体の中に入っていった。その際、穴を空けた首元から入っていき、次第に体の中に核を形成していった。
「ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ア''ァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
また、その際に襲う痛みは、他の全てのプロセスで生じた痛みを遥かに越えており、人間が負ったら死ぬとされている痛み。つまり痛みの限界値を越える痛みを風月は受けていた。だが、風月は気絶することなく痛みに耐えており、その際に出す声は悲鳴という域を越えていた。
「実験は成功した。これにて終了する」
そう言った瞬間、風月を固定していた器具のロックは解錠され、装置のドアも開かれた。
「……。終わっ……、た?」
風月は立つと、視界の高低差に驚いた。
「視界が高くなってる……。胸も大きくなってる……。体を無理矢理成長させたんだ……」
風月はそう思い、自宅へと帰った。
風月が家に帰ると、雷風が玄関まで急いで来た。
「おかえ……、り……?」
雷風は一瞬、目の前にいるのが誰なのかわからなかった。だが、本能で風月だと思った雷風は、ジャンプをして風月を抱きしめた。雷風は、顔を風月の胸に押し付け、そこで泣いていた。
(雷風……)
複雑な感情を持っていた風月は、とりあえず雷風を抱きしめて部屋へ戻った。
(雷風……、絶対に私が守るよ)
それ以降、風月は雷風に深い愛情を持つようになった。それは、世界のどの愛よりも深いと。風月はそう自負していた。




