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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第2章 過去という信念
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11GF 愛という過去



 その場にいた断罪者達は、今どのようなことが起こっているのかが全くわからなかった。盾羽はその気持ちを質問にして、雷風と話していた者にぶつけた。



 「あの……、どのようなご関係で?」


 「私は鬼頭 風月。雷風の姉です。まあ、義理なんですけどね」



 風月はそう微笑みながら話した。だが、次の言葉から一気に雰囲気が変わった。



 「雷風は元々孤児だったんです。それを私が引き取って、大切に育てました。まあ、こんなにシスコンになるとは思いませんでしたけど……」



 雷風は風月に抱きついて寝ていた。その状態で風月は雷風に微笑みかけていたが、盾羽は更に疑問をぶつけた。



 「何故風月さんは人体実験を?」


 「……それはね」



 盾羽の質問に、風月は少し間を置いてから話し始めた。



 「私が6歳、雷風が5歳の時。今から12年前、厳密に言うと11年前7ヶ月前だね。その時に私は体を色々改造されて出来た」





   「世界で初めて生まれた人造人間」なの。




 それを聞いた霞は、新しい疑問が生まれた。



 「だが、人間から人造人間に変える場合は肉体と、能力の元となる物体が必要なはず……。何を元にした?」


 「じゃあさ、逆に質問をするよ? 天下五剣ってわかる?」



 風月がその質問をした時、慧彼と白夜はわからないと答えた。



 「え? なにそれ……」


 「聞いたことない……」


 「なるほど……。じゃあ説明するね」



 天下五剣とは、鬼丸国綱(おにまるくにつな)童子切安綱(どうじきりやすつな)三日月宗近(みかづきむねちか)大典太光世(おおてんたみつよ)数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)の5本の剣であり、鬼丸国綱、童子切安綱、三日月宗近、大典太光世の4本は国宝、数珠丸恒次は重要指定文化財に指定されている重要な剣である。



 「その内のどれかってことか……」



 霞がそう呟くと、それに反応した盾羽が説明を始めた。



 「待ってください。前に記録で見たことがあります。天下五剣の内、4本の剣が肉体との合成に失敗し、残りの1本、三日月宗近のみ成功したという記録が存在しています。それが風月さんと言うのなら……」


 「そう、私は三日月宗近と合成された存在。だから私は、三日月宗近を使う人造人間なんだよ」


 「けどさ、何でそれで雷風が泣いてたの?」



 白夜は、自身にとって一番謎であったことを質問した。何故雷風は泣いていたのか。何故雷風に会えなかったのか。



 「長くなるけどいいの?」


 「うん」



 そう白夜は返事をすると、他の断罪者も了承した。



 「聞けるなら聞きますよ」


 「色々知っておいた方がいいしね」


 「あと、雷風には世話になってるからな」


 「じゃあ話そうか。この状態に至るまで何が起こったのか。私の記憶内での全てを」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 風月が当時2歳の頃、まだ1歳だった子供を引き取った。



 「ねぇ、そこの君」


 「?」


 「君に親はいないの?」



 風月はそう聞くと、子どもは頭を上下に1回振った。



 「そうなんだ……。じゃあさ! 私の家来ない? 楽しいよ?」



 そう風月は言うと、子供はまた頭を上下に1回振った。



 「ここが私の家だよ!」



 自分の部屋に入った風月がそう言うと、子供は顔を上下に1回振った。



 「じゃあね、君の名前は今日から『雷風』ね!」


 「らい……、ふう?」



 当時1歳の雷風は、自身の名前が雷風だという自覚がなかった。



 「そう! 鬼頭 雷風! それが雷風の名前!」


 「らい……、ふう……。らいふう!」


 「そうそう!」



 その後も、風月は雷風の面倒を常に見ていた。ご飯を食べる時も、一緒に遊ぶ時も、風呂に入る時も、寝る時も。



 だが、その平穏な日常はずっと続くわけではなかった。



 「僕、暗殺業するよ」



 風月が4歳、つまり雷風は3歳の頃、雷風はそう言った。その言葉には風月も驚き、理由を聞いてしまった。



 「え? どうして?」


 「社会にはまだまだ悪人が多いと思うんだ。それを粛正するためだよ」


 「……いい夢だと思うよ」



 その時、風月は自身から雷風が離れていくような気がした。だが、雷風は仕事から帰ってくると、すぐ風月を抱きついてきていた。それは、雷風がどんなに疲れても忘れることはなく、笑顔で来てくれていたのだ。その事が続き、風月は離れていくような気がすることはどんどん無くなっていった。



 それが続いて2年、雷風の暗殺の腕はどんどん上がっていく姿を見ていた風月は、「何か自分にもできることはないだろうか」と思っていた。



 (雷風を手伝える方法は無いかな……)



 ずっと考えていた。テレビを見ている時も、ご飯を食べている時も、風呂に入っている時も、寝る前も。

 そしてたどり着いた結論は……。



 (そうだ……。直接手助けしたらいいんだ……)



 そう思った当時6歳の風月は、雷風に内緒で『人体実験プロジェクト・五』に参加した。



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