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断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
109/206

109GF 槍の雨



 余裕の笑みを浮かべていた雷風は、最初に攻撃が当たると予測した風月の斬撃を、ギリギリ当たらないくらいの高さまで跳んで避けた。



 (これで雫の放った光線を綺麗に上と下に分断してくれる。そして、この高さならギリギリ当たらないはず)



 雷風の予測通り、雫の放った光線は見事に上に向かうものと下に向かうものに分断され、下に向かった光線は地面を抉り、上に向かった光線は慧彼の生成した大量の槍の約80%を消失させた。

 ダルタニャンは、雷風が起こした1つの行動だけであの窮地を脱したことに驚いていた。



 (囲まれていたあの状況を、一瞬にも満たない短時間で全て予測して行動に移すとは……。これは大きな戦力になるな……)


 「これが真祖の……。いや、鬼頭 雷風の実力か……」



 着地した雷風は、顔を動かさずに目だけで雫のいた方向を見た。どうやら雫は既に移動しており、風月は当たる寸前で斬撃を消したらしい。雷風は前を向くと、盾羽が生成した盾がもう目の前にあった。それを容易く全て薙ぎ払うと、恐らく上から降ってくる槍を避けるのと同時に、霞と距離を詰めるために後ろへ跳んだ。



 (もし、後ろから攻撃されても避けることは容易い。だが、見えてない分反撃はできない。だから倒す術も必然的に減る。……いいこと思いついた)



 盾羽と距離を取りながら、霞と距離を詰める。霞はそれを好機だと思ったのか、雷風との直線距離に水の滑走路を生成し、自身に滑走路を素早く滑走するための水の翼を生やした。右手には水で生成した剣を持っており、狙いは雷風の(コア)を1発で貫くことであった。

 盾羽は全力疾走し、雷風の元へもう少しでたどり着くところだった。盾羽は少し上へ跳び、突きのような体勢で雷風を捉えた。狙いは雷風の頭頂部から刺し、地面まで刺すことで一瞬でも雷風を動けなくすることであった。



 (やれる!!)


 (やれる!!)



 雷風が着地すると同時に、霞と盾羽は雷風の元にたどり着いた。2人が攻撃を仕掛けようとしたその瞬間、雷風は不敵な笑みを浮かべると共に、かなり低い前傾姿勢になった。



 (抜け道は見つけたぞ)



 雷風は盾羽の下を走り、包囲網を完全に脱出することに成功した。それに2人は気づく間もなく、雷風がいたところに剣を振り、薙刀を刺していた。そして2人は、共通のことで錯覚していた。



 (消えた!?)



 そう思った瞬間、雷風は盾羽の背後から物凄い勢いで飛び蹴りを放ち、霞を巻き込んで壁へ叩きつけた。



 (さて、2人はリタイアか。後3人、面倒くさそうなのが残ったな。とりあえず、この状況下で1番めんどくさいのは姉さんだな)



 雷風はそう思うと、風月の眼を一瞬で捉えた。それは狂気に染まった目であり、風月は少しその目を怖がっていた。雷風の目が狂気に染ってることは、風月以外も認識していることであり、また、雷風に向けている感情は同じであった。

 一方、雷風は姉さんの眼を捉えると、危機を察知したのか一瞬でかなり後ろの方へ下がった。



 (気づかれたか……)



 慧彼は既に、第2の攻撃を開始していた。大量の槍は雷風の周囲に満遍なく降り注いでおり、雷風はそれを避けようと壁まで逃げていた。槍はかなり緻密に降り注いでおり、完全には防ぎ切れないほどであった。

 壁にへばりつくことで槍の被害から逃れることができた雷風は、上を見てあることに気がついた。



 (降り注いでいるのは俺の周囲だけ……。ってことは、あいつらは自由に行動できる。俺に攻撃し放題ってことかよ。このままだったら袋の鼠だな……)



 そう思い、雷風は一気に駆け抜けることを選択した。



 (実際、アナイアレーションを使わずにこの状況を脱することはできる。だが、それはあまりにも力技すぎる。かといって、それを躊躇ってたらこの状況を脱することはできなさそうだな……)



 雷風はそう思い、走っても自身に槍が当たらないように刀を先に円を描くように高速で回転させた。そしてそのまま、地面を強く蹴り出して走った。目標は、風月だけである。

 風月は雷風が地面を強く蹴った時、物凄い殺気を感じた。そのため、風月は雷風のいる方向に向けて大量の斬撃を飛ばした。



 (槍の雨を抜けてそのまま私に攻撃するつもりだと思うけど、足止めくらいはさせてもらうよ。本当なら絶対にしたくないことだけど、殺す気でやらないとね。……どんな形になったとしても、殺す)



 風月は確固たる決意を持ち、雷風に斬撃を放ち続けた。

 槍の雨を瞬く間に抜けた雷風は、襲いかかってくる大量の斬撃を全て弾いて無力化させていた。そしてそのまま、速度を保って走っていた。



 (もう……、知らん!!)



 風月は化け物じみた雷風のスペックを知り、半ば諦めていた。だが、一矢報いようとする心はあった。

 雷風が風月に近づこうと走っていた時、逆に風月が雷風に向かって走ってきていたのだ。死ぬ気か? と思ったが、どうやらその気らしい。正直、心から尊敬していた姉を殺すことは到底できない。だが、向こうが俺を殺す気なら俺はそれを許容する。だが、これは訓練である。それを無力化するのが、俺の役目なのだ。

 風月は居合の体勢を取りながら走り、雷風の元へたどり着いた時に刀を抜いた。それに対抗するかのように、剣先を下に向けて刀を持ってそれを止めた。



 「殺す気で行ってるよ」


 「死ぬ気で来てるっていう覚悟はよくわかるよ、姉さん」



 雷風は刀を90°回転させ、一気に振り上げることで風月の体ごと高く押し上げた。それによって風月は体勢を崩し、咄嗟にバク宙をして着地した。



 「けど、死んでほしくない」



 着地したところに、雷風は首に刀を当てた。風月は負けを確信したのか、一歩下がって観客席へと戻った。



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