表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪せし暗殺者  作者: ひょうすい
第6章 仏独戦争
100/206

100GF 邂逅で始まる陣営



 雷風達は、盾羽の能力で作った盾の上に乗ってフランスに向かっていた。現在はアフリカ大陸の高度1000mを飛行中であり、日本から出て20分程度であった。盾羽は能力の制御をして、慧彼と白夜、霞、風月、雫の5人はポーカーを楽しんで、雷風は精神統一をするために座禅の体勢を取っていた。



 (心を無にし、外界とありとあらゆる神経をシャットアウトする……)



 自分の世界に入り、戦闘シミュレーションを行っている雷風は、戦争に対する意気込みが違った。今回の戦争は2つの目的がある。1つはフランスを勝利に導き、人類を存続させること。そしてもう1つ、楓を救い出すこと。

 戦争というものは、世界の色々なことを動かすために行われるという一面もある。他には、自分の国の考えや力を誇示するために戦争を起こしたり、領土や資源を自分のものにするために戦争を起こしたり、というものがある。雷風が戦争を行う理由はかなり稀であった。援助という意味では、結果は自分に返ってくるため自分のためとなるのだが、敵国の者を救うために戦争を行うなど、普通はありえない。雷風の立場は何も変わらず、社会情勢が大きく変わるわけでもない。もし大きく変わったとしても、雷風にとってプラスになることは少ない。雷風は1つの約束と、1つの使命のために、この戦争に参加している。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 フランスのパリに存在するエッフェル塔。盾羽はそれを確認すると、全員に声をかけた。



 「もうそろそろパリに着きますよ」


 「OK。じゃ、最後やりますか」



 慧彼は返事すると、慧彼達はまたポーカーを始めた。そして、雷風は声をかけた瞬間に目を開けた。



 「もうそろそろか」


 「はい、エッフェル塔が見えました」


 「じゃあもうフランス入ってんだな」


 「はい」



 雷風達全員は、仏独戦争のことについて考えていた。



 (あいつの解放のために……。俺はドイツ軍をぶっ潰す……)


 (戦争か……。いつもは裏から見てる立場だったからなぁ……。学校ではダメなことって教わってきてるけど、実際はどうなんだろう……)


 (仏独戦争……。敵はかなりの強敵なはず……。勝てますかね……)


 (戦争……。殺せる……? 節度は持たないといけないけど、ぶっ殺せるんだったら大満足だね)


 (戦争か……。まあ、面倒だが雷風のすることだ……。奴にも奴なりに何か理由があるんだろう……)


 (雷風がやりたいことなら、理由がなんであろうと付き合う覚悟はできてる……)


 (命の恩人だから……。私は彼のためなら死ぬ覚悟はできてる。けど、火天には会いたいなぁ……)



 各々の思いは共有されることなく、日本時間で午前8時6分、フランス時間で午前1時6分にフランスのパリへ上陸した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ホテルに泊まり、午前7時30分にチェックアウトを済ませた。そして今、エッフェル塔のあるシャン・ド・マルス公園の北西部にいた。



 「デカッ!!」



 慧彼はエッフェル塔を見上げると、思わず大声で言ってしまった。それもそのはず、エッフェル塔は300mの展望塔電波塔であり、1889年にフランス革命100周年を記念してパリで万国博覧会が開かれ、そのためにわざわざ作られた建物だからだ。



 「雷風、この公園なんて言うの?」



 白夜は芝生の方を向いて雷風に質問した。雷風は白哉の無知さに呆れながらも、質問にはちゃんと答えた。



 「シャン・ド・マルス公園だ。ここはその北西部に位置する。これでいいか?」


 「うん。ありがと」



 まだ休戦中だからだろうか、外にはたくさんの人がいる。これが2日後になれば全く人がいなくなり、もしかすると戦場になる可能性すらあるのだ。それを考えると、雫は覚悟を決めた目をしていた。



 (今はフランスに住む人たちを救うため、そして人類を滅ぼそうとしている人造人間の殲滅……)



 天城の手紙と、それの見解を示している雷風の文が雷風から送られていた。そのため、ドイツ軍が何をしようとしているのかがわかっていた。改めてフランスの今を知ると、こう思うのは当然であった。



 「雫、大丈夫?」



 風月は後ろから、優しく雫の頭を撫でた。それで少し安心したのか、雫は後ろにいた風月にしか聞こえない声で感謝した。



 「ありがとう」


 「ならよかった」



 白夜は景色を見ていて思った。義勇軍として戦争に参加しに来たのなら、フランス軍本部に向かわなくていいのだろうかと。ちょうど白夜の横に歩いてきた霞に聞いてみた。



 「ねぇ、霞」


 「ん? どした?」



 霞は何気なく質問に答えることにした。いつもの霞なら、全ての質問に対して曖昧に答えて反応を楽しむのだが、今日は元々気分が高いため質問に答えてくれる。霞はフランスに着くと同時に、戦争が楽しみになっていた。



 「義勇軍として戦争しに来たんだったらさ、フランス軍の本部的なところ行かなくていいのかな?」


 「基本的には行く必要がある。雷風はその事を知っているはずだ。その上でここまで余裕をかましてるんだろう」


 「かますって……」



 白夜は普段、全然聞かない言葉である「かます」を当たり前のように使っていた霞に、表情には出さなかったが少し引いていた。それを使うのは当たり前だと思っている霞は、気づくことなくアドバイスをした。



 「とりあえず聞いてみたらいいんじゃないか?」


 「なるほどね。ありがと」



 白夜は霞のアドバイスを信用し、雷風のところまで行って同じことを聞いてみた。



 「雷風、質問いい?」


 「なんだ? 言ってみろ」



 雷風は不思議そうに白夜の方を向き、質問に答えることにした。



 「義勇軍として戦争しに来たんだったらさ、フランス軍の本部的なところ行かなくていいの?」


 「ああ、行く。けど、今はこうやって気を楽にさせておきたいだろ?」



 シャン・ド・マルス公園で休憩しているのは、雷風なりの善意だった。戦争の過酷さを知っている雷風だから、気を抜く時間というものが何よりも大切だと理解している。そのため、気を抜く時間を作っているのだ。



 「なるほどね。じゃあさ、いつぐらいに出発するの?」


 「だいたい9時だな。それまでは自由に行動しててくれ」


 「わかった」



 雷風は白夜に伝えたことを、他の全員にも同じようにメールで伝えた。集合場所は、エッフェル塔の真下。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 午前9時、雷風達はエッフェル塔の真下にいた。どうやら、気を抜く時間を有意義に使えたみたいだ。



 「よし、全員いるな?」


 「います」



 雷風がかなり真面目な声で確認すると、盾羽はかなり真面目な声で返事をした。かなり緊張感のある空気であり、それは周囲にも及んでいた。



 「これから、フランス軍の本部に行く。基本的に向こうに合わせることが大切だが、向こうが戦闘したいってなったら、暴れてもいいぞ」


 「え? いいの?」



 白夜は食い気味に質問した。それに、雷風は当たり前だろと言わんばかりの顔で、白夜の顔を見た。



 「ああ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ダルタニャン。本名はシャルル・ド・バツ=カステルモール。三銃士に登場する主人公で、実在した人物。大統領と首相を兼任しており、事実上のフランスを総べている者である。そして、予知夢の能力を所持する人造人間である。

 アトス。三銃士に登場する銃士であり、剣の実力者。両利きであり、剣の腕前は右と左では変わらない。だが、動きは左右反転する。軍人の地位としては大将であり、ダルタニャンの次に高い地位である。そして、太陽の能力を所持する人造人間である。

 アラミス。三銃士に登場する銃士であり、銃の実力者。三銃士本来では男であるが、使った体が女だったために性別は女である。軍人の地位としては大将であり、ダルタニャンの次に高い地位である。そして、閃光の能力を所持する人造人間である。

 ポルトス。三銃士に登場する銃士であり、武道の実力者。怪力をもちあわせており、武道に純粋な力を加えた攻撃は、衝撃で(コア)を破壊する。軍人の地位としては大将であり、ダルタニャンの次に高い地位である。そして、身体能力強化の能力を所持する人造人間である。



 「もうそろそろ来る」



 ダルタニャンは三銃士を招集し、ベルシー・アレナにいた。この現状を理解していない三銃士は、ダルタニャンに状況を聞いた。



 「これはどういうことだ?」



 アトスはダルタニャンに聞いた。続いて、ポルトスがここに呼ぶ意味を聞いた。



 「なぜここなんだ? ダルタニャンよ」


 「少し待て。ひとつひとつ説明していく」



 ダルタニャンは質問を重ねようとしてくる三銃士を鎮め、今起こっていることの説明を始めた。



 「まず、俺の能力は予知夢だ。翌日に自分の周りで起こる出来事を、たったの40文字以内しか教えてくれないカス能力だ。いつもはふざけたような文章しか並ばないが、今日の予知だけは違った」


 「その予知とはいったい……?」



 アラミスは予知について気になったのか、ダルタニャンが話しているところで聞いた。それに反応するようにダルタニャンは話の続きをした。



 「それは、「真祖と真祖の連れが、義勇軍として仏独戦争に参加する。そして、真祖は三銃士と戦う」というものだった」


 「ギリギリですね……」



 ダルタニャンの能力は、句読点をカウントしない。そのため、36文字とかなりギリギリの文字数となっている。アラミスは文字数の方の感想を言っていたが、内容について心の中で考えていた。



 (天城の時は予知に出なかったのに、今回は出た……。それほど私たちに大きな影響があるということなんでしょうか……?)



 ダルタニャンに深く関わりがあるということは、三銃士たちにもそれなりに関わりがあるということ。しかも、真祖という強大な存在ということもあり、アラミスは大きな期待をしていた。だが、ひとつ引っかかったところがあった。



 (……ん? 戦う?)



 そう、戦うというところに違和感を感じた。真祖は人造人間の中で頂点に君臨する存在であるため、全ての人造人間は真祖より弱いことを認知しているはずとアラミスは仮定している。すると、仕掛けるのはアトスかポルトス。この2人のどちらかということになる。



 「……何故俺を見ているんだ? アラミス……」



 アラミスはポルトスの顔をじっと見て、戦いを仕掛けるなよと言わんばかりにアイコンタクトをした。だが、ポルトスは頭で考えることが苦手なため、アイコンタクトを察することが出来なかった。そのため、困惑していた。



 (あ……、これはダメだ……)



 アラミスは諦めた。



 「とりあえず、もうそろそろ来るはずだ」



 ベルシー・アレナに7人の来客が現れた。ダルタニャンは全てを知っていたかのように、ニヤリと笑った。そして、7人の来客に向けて話しかけた。



 「待ったぞ。真祖」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ