10GF 救出者
「早く行くぞ~、慧彼~」
「ちょっと待って!!」
「まあ、まだ1分ですから……」
雷風と盾羽は、玄関で慧彼を待っていた。慧彼は、仕事があることをを忘れて体育祭の後片付けをしていたため、帰ってくるのが遅くなっていた。
「雷風さ、急かすのやめて?」
慧彼が玄関に来たとき、雷風に向けてそう言った。
「なんかすまん」
「人の心無い?」
「無いかもな。……お前らも無いんじゃね?」
「どこからそんな思考できるの?」
「さあな。んじゃ行くか」
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仕事先へ向かっている雷風達は、無言であった。その中、雷風は慧彼と盾羽に話しかけた。
「うし。んじゃ、今のうちに仕事の内容確認するか」
「そうだね」
今回の仕事、銀座でとある者がいるとされる。その者は人体実験として利用されており、その研究を破綻させるために今回雷風達は派遣された。
そして仕事場についた時に、雷風はとあるものを見ていた。それは、ビルの屋上から道路を見ている光景だった。それは朧気な風景であったが、雷風の記憶に強く刷り込まれているものであり、「いつ見たか」、「いつ感じたか」、「いつ思ったか」、「いつ動いたか」は鮮明に覚えていた。
「ここ……、まさか……」
「どうしたの?」
「前に来たことがあんだよ。丁度この場所、角度から。確か……」
11年前だ。
「11年前?」
「ああ。確か11年前だった気がする。まあ、とりあえず救出しに行くぞ」
「OK」
「わかりました」
雷風達はビルから飛び降りた。降下している途中に、地面から飛んでくる人造人間を、雷風達は次々と八つ裂きにした。そして雷風達はバラバラに着地すると、雷風の方には巨大な人造人間が大量にいた。
「やっぱり大きい人造人間は強いんだろうか……」
雷風は巨大な人造人間達を、体の中にある核を的確に斬った。
「やっぱり強くはないよな」
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盾羽は盾を具現化し、それを自由に操ることができる。その盾は形を変えることも可能である。盾羽はその能力を使い、先が鋭利になっている盾を複数具現化した。それを人造人間の中にある核の部分へと飛ばし、人造人間の胴体を切断したと同時に灰へと変えた。その灰は無へと消えた。
「人造人間……。どういった原理で……、この世界に存在してるのでしょう……?」
盾羽は足元に、地面から突き上げるような形で具現化した。その具現化する勢いで空中に飛んだ盾羽は、空中に盾を具現化することで滞空した。そして、下向きに向けてさっきの盾を大量に具現化した盾羽は、一気に地面に向けて放った。
(無慈悲かもしれませんが、すみません……。これが人類にとって安寧をもたらす行為だと信じているので……)
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慧彼は、全体的な評価をした時に慧彼より弱いと判定した者を無条件で処刑する能力を持っている。それは、視認した者にだけ発動し、視界の範囲内であればその範囲の条件を達した者を全て殺すのだ。一番近いビルへと登った慧彼は、その能力を使い、視界内にいる人造人間を全て処刑した。それは、核ごと体を上から貫くから殺せるのだ。
(心が辛い……。慣れはしたけど人造人間って……、全員断末魔をあげてから死ぬからなぁ……)
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そして、人体実験が行われている建物の周辺にいた人造人間を全て殺した雷風達は、合流した後にその建物の中に入った。
「この組織の人造人間……、結構多いな……」
「確かにいつもより多いね」
「最近こういう任務が増えてきましたけど……、これはいったいどういうことなんでしょうか……」
「こういう組織が増えてきた。それか、こういう組織を優先して潰さなければいけない理由がある。こういうことだろ」
「なるほど……」
「ねぇ、あれがその子なんじゃない?」
雷風と盾羽が話している時に、慧彼は指を指して言った。雷風と盾羽がそれを見ると、そこには機械のケースがあり、その中に1人の女性がいた。その女性は、黄緑の瞳をしており、金髪のロングヘアーだった。その前には当たり前のように人造人間が軍を成して警護していた。
「あいつら潰さねぇと先には進めなさそうだな」
「確かにね」
その人造人間達は、建物外にいた人造人間とは明らかに強さが違うように見えた。体からはオーラが溢れており、核が剥き出しになっていた。
「慧彼。あいつら殺れるか?」
「うん」
(お前らには使えて俺には使えないその異能。その真実を知る時は必ず来る。その時、こいつらはなんてリアクションするんだろうな……)
慧彼はその人造人間達を、能力を使って殲滅した。
「終わったよ」
「おう、ありがと。……んじゃ、救出するか」
そして雷風達は機械のケースに近づき、中に幽閉されている女性を確認した。
(……)
雷風の心に一番深く刻まれていたもの。それは、この女性であった。
雷風は目から涙を溢し、膝から崩れ落ちていた。
「嘘だろ……?」
「え? どうしたの?」
「この女の人に見覚えがあるんですか?」
慧彼と盾羽は雷風にそう聞いた。すると、雷風は少し弱い声で話した。
「ああ……。脳裏に焼き付いてる……。心に深く刻まれてる……。忘れることはできない……」
「そうですか……。解放しますよ?」
「ああ、早く解放してやってくれ……」
盾羽は能力を使ってケースを壊し、中にいた女性を救出した。盾羽は自分の背丈の10倍程ある大きさの盾を形成し、盾の上に乗った。その上に女性を寝かせて、雷風と慧彼も乗り、寮へ帰った。
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「ねぇ慧彼。あの人誰?」
「任務で保護した人。けど雷風には何かあるみたい」
「なるほど……、訳ありか……」
女性はリビングのソファで寝ていたが、目を開けた。だが、その目は何故か深い目をしており、周りを見渡していた。
「ここは……?」
「寮だよ、姉さん」
雷風の頬には一粒の涙があった。
「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
雷風の発した言葉に、断罪者全員が驚いた。
「久しぶりだね。雷風」
「本当に会えて嬉しいよ。姉さん」




