1GF 暗殺者
鬼頭 雷風。それは、世界を闇から操り、世界に平和をもたらしている組織である『マネジメント』に所属する断罪者の一員であり、マネジメントの幹部である。
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そしてその者は今、とある高校で寮生活をしていた。
雷風は、スマートフォンで設定していた6時30分のアラームで起きた。
「んぁぁぁあああ、眠っ」
雷風はベッドから降りてキッチンへ向かった。雷風は冷蔵庫を開け、昨日スーパーで買った朝食用の食材を取り出す。
「んじゃ、今日は和食にでもするかな」
朝食を手際よく作り、喉につまらない程度で早く食べた雷風は、すぐに着替えて学校に向かった。
(今日は特に仕事は無かったな……。んじゃ今日はバイトがあるのか……。まあ、一番憂鬱なのは学校なのかもしれんが……)
そう考えている内に教室の目の前に着いた雷風は、扉をスライドさせて教室の中へ入った。すると、教室に入った瞬間にチャイムが鳴った。
(今日も体内時計はジャストだな)
「お前、またチャイムピッタリか」
先生が雷風に話しかけてきた。
「はい」
雷風は当たり前のように返答すると、先生は呆れたような顔をして言った。
「まあいい、座れ」
「わかりました」
雷風はこの異質な行動を、高校に入って1ヶ月間常にしている。その意味は、雷風の体内時計が合っているかをそのチャイムで確認するためである。学校が無い日でも、雷風はその時間丁度にアラームを入れることで常に体内時計を管理している。
(今日もまた必要ないホームルームか)
雷風が席に座ると、先生は朝のホームルームを始めた。それはとてもくだらないものであり、「最近起こったすべらない話」を全員に話させたり、「『無人島になんでも1つ、持っていくとしたら?』という質問に対しての黄金回答」という者を叩き込まれたりする。これをホームルームというのか? と思う雷風なのだが、今回は話題がいつもと違った。
「今日は転入生が来ている」
高校に転入生はそう多くない。わざわざ編入することが面倒だからである。だが、家庭の事情や前の学校でのトラブルで編入する者はいる。
しかし、今回だけは状況が違った。いつも早く学校に来て、どこから入ってくるか全くわからない情報を仕入れてくる者も驚いていたからである。そういう情報は少し漏れてしまうものだが、今回に関しては全く情報が漏れなかったある。と雷風は考えている。情報戦で学校は生徒に勝ったのである。
「嘘だろ……? そんな情報知らないぞ!!」
情報通の生徒が混乱していたが、先生はお構いなしに転入生を教室に誘導した。
「入ってこい」
「はい」
転入生が教室に入ると、クラス内はざわつき始めた。だがそんなざわつきの中、転入生は話し始めた。
「どうも」
その一言でクラス内のざわつきは一瞬にして消え、教室には静寂の一言でしか表せないほど静かになった。アンバーの瞳と黒髪ロング、インナーカラーにオレンジが少し入っているその美女に、多くの生徒が心を奪われた。
「裁断 慧彼です。好きなものは……、うーん……。人の笑ってるところかな?」
慧彼は微笑んだ。その行動から、クラスのほぼ全員は慧彼の存在を良く思っていた。だが、雷風だけは慧彼に対して不信感を覚えていた。
(こいつ……、ちょっと怪しいな……)
時は流れていく内に、慧彼はクラス内の生徒達と仲が良くなっていった。
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放課後、雷風は校長室に呼び出されていた。
「失礼します」
「入れ」
雷風が校長室に入ると、雷風は校長室にあったフカフカのソファにどっさりと座り、態度が急変した。
「何の用だ? 校長先生?」
「お前に言われた通り、新しい部活を作っておいた。前に言われた要望通り、帰宅部という名前で通しておいた。」
「お。サンキュー」
校長先生は雷風に気になったことがあったため、質問をする。
「質問だ」
「どーした」
「帰宅部した方がいい理由とかあったのか?」
「え? ……強いて言うなら、考えんのめんどくせぇから」
「お前らしいな」
「まあ、俺だからな」
「なにかと都合がいいんだろう……? 深くは関わるつもりはない」
校長はゴホンと1回咳払いをすることで話を元に戻す。
「とりあえずだ。お前今日から顧問な」
「……わかった。だが、あの約束は忘れるなよ?」
「わかったわかった。俺が断罪者をこの部活に全員入れたらお前がマネジメントのトップになるって話だろ?」
「覚えているならいい。明日から速攻集めろ」
「無茶言うな」
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帰り道、雷風は考えていた。
(裁断 慧彼……、か……。あいつが断罪者ってわかるまでは視野を広く見た方がいいか。……いや待てよ? あいつに判別方法を決めさせればいいのか)
雷風は校長先生にメールを送信した。その内容は、「至急。断罪者の判別方法をお前に任せる。お前の言った言葉を参考に返す。明日までに速攻作れ」というものだった。
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そして翌日の放課後、雷風は校長室に慧彼を連れてきた。
「ここが校長室な」
「はぁ……」
「まあとりあえずこの中入れ」