ラン・シーファ
6話 ラン・シーファ
「おまえ、留守番してるはずだろ」
「すみません。退屈だったので、つい」
「カイ・フーさん、あの子は?」
「わたしは、カイ・フー師匠の一番弟子。ラン・シーファ」
「あんな子が、弟子」
この子が一番弟子って子供よね。まだ、弟子がいるのかしら?
「師匠、その女が持ってるのって、ラオ・シンさんの。まさかラオ・シンサンを」
「この人は、おまえが思ってるような人ではない。このリンさんとラオ・シンとはいろいろ事情があってな」
「え、ラオ・シンさんの愛人ですか? 今、情事と」
「事情と言ったのだ、まったく子供のくせに」
「浮気相手と思ったのあたしを。何考えてるのあんた」
「これから、ラオ・シンさんのとこに?」
「そうだ、線香あげに行く。おまえもこい」
「線香って、ラオ・サンは」
「まちな」
ナニ、こいつら山賊?
「何者だ。見たところ山賊には見えないが」
山賊じゃない。そーいえば服装は町のゴロツキってかんじね。じゃナニ?
「なんだって、いーじやねーか、とにかく足止めさせてもらうぜ」
いきなり現れたゴロツキどもは蛮刀を出して襲ってきた。はじめに来た男をひらりと前に出たランが素手で、相手の手足に突きを入れ動きが止めた。
「点穴を突いた。動けまい」
指を立てて形を決めた。凄い。だいの大人を一瞬で。
「まだ、甘いなラン、動きが見え見えだ。素人でなければ突けん。にぃしぃろうやあと。十人か。ラン、リンさんと先に行け」
「師匠、こんな奴らわたしが」
「体を動かしたい気分なんだ。行け!」
ランがあたしの手を取り、河原の方に。
「ガキどもを逃がすな!」
三人が、カイ・フーの脇から河原に行こうとしたのを、素早く移動したカイ・フーが三人を川の中に。
「凄い、動いたのはわかったけどなにをしたのか見えなかった」
「横に動いて脚を引っ掛けたんだ。見えなかったんですか?」
「うん」
「本当にラオ・シンさんを……」
「わぁスゴいわ」
カイ・フーは扇子を裏にまわし。手は腰に。そのまま相手の中に入り肩と脚でかるく移動して刃物を持った連中を倒す。
「師匠の朱雀飛翔足からの朱雀猛脚行。見事ですね。久々に見た。行きますよ」
ランはあたしの手を取ったまま、河原の石を跳ね進む。あたしもなれてるからついて行けるが、普通なら川にドボンだ。この子、あたしを試してるのかしら?
ラオの家の柵が見えてきた、家の前に奥さんが縛られていた。
「早かったな。役立たずの連中だ。まあ相手が悪かったか」
家から出てきたのは片目のオヤジ、ローだ。
「なんだ、カイ・フーの子分も来てたのか」
「子分じゃなあわ一番弟子よ」
「あーそうかい。おまえにはようはねぇ。小娘、その玄武扇は俺の物だ渡しな」
「なんで、あんたのなのよ」
「ラオ・シンは俺が倒した。だからそいつは俺のだ」
「はぁ何よそれ、あんたが倒したたって意味わかんないんだけど」
「わからないのは、わたしもだ。どんな事情か知らないが、なんで玄武扇をあんたが持ってんの?」
うーんこの子には、言いたくない。あいつも。
「よこしな! テッ」
手にしてた玄武扇が、落ちローの手の甲へ。そのはずみでまたあたしの手に。
「このぉあまぁ」
ローは背のギザギザ付きの槍棒を取り。
「俺と勝負だ!」
勝負って、素人のあたしとぉ。あ、なにやってんのラン。助けてよ。勝負なんて出来ないわ。
つづく